サイエンス

「火星の植民地化」に必要な最小人数は22人という研究結果


火星を人が住める環境にするための研究は盛んに行われており、火星を植民地化した後の人類を描くSF作品も珍しいものではありません。そんな火星の植民化について研究した最新の論文によると、これに必要な人員の数は「最小22人」だそうです。

[2308.05916] An Exploration of Mars Colonization with Agent-Based Modeling
https://arxiv.org/abs/2308.05916


Scientists Reveal How Many People You'd Need to Colonize Mars : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/scientists-reveal-how-many-people-youd-need-to-colonize-mars

アメリカの研究者チームが火星を模したモデルを用いて行った火星の植民地化シミュレーションによると、植民地化を成功させるのに最小の初期人口はわずか「22人」だそうです。過去の研究では、火星の植民地化に必要な最小人口は110人であるとされていました。

火星の植民地は非常に孤立した環境であるため、移住者は長時間一緒に働くことになります。そのため、シミュレーションでは「さまざまな性格タイプを適切に組み合わせる必要があり、そうでなければ植民地化そのものが破綻してしまう可能性がある」ということも判明しました。


火星を植民地化するには「火星に住む人」と「火星で暮らす人のための食料」が必要になります。植民地化に必要な最小人口が多くなれば多くなるほど、地球から火星へ運ぶ人口が増加し、同時に火星で暮らす人のための食料を運ぶ量も増加することになります。

さらに「いくつかの基本的な鉱物と水を採掘するだけでなく、火星の水を呼吸用の酸素と燃料用の水素に分解するなど、技術的な手段で必要なものを補給する必要もあります」と論文では言及されています。

研究チームは「技術的・工学的な課題だけでなく、将来の入植者は心理学的・人間行動学的な課題にも直面することとなるでしょう。我々の目標は、エージェント・ベース・モデル(ABM)シミュレーションを用いたアプローチにより、将来の火星入植者の行動と心理的相互作用をより良く理解することです」とも記しています。


ABMは通常、健康や経済の研究で使われる手法であり、システム内で自律的な意思決定を行う「エージェント」の相互作用を研究するために設計されたコンピューターシミュレーションです。通常、この種のシミュレーションでは人間に焦点を当てますが、今回のシミュレーションでは物体・場所・時間の経過などの要素も考慮されています。

研究では人間の性格タイプを以下の4種類に大別し、シミュレーションを実施しました。

・愛想の良いタイプ
競争心が低く、攻撃性が低く、ルーチンワークへの執着が低い。

・社交家タイプ
競争心が中程度で、社会的相互作用において競争的であり社会的相互作用を必要としながら、ルーチンワークへの執着は低い。

・反応タイプ
競争心が中程度で、社会的相互作用において競争的で、ルーチンワークに固執する。

・神経質タイプ
競争心が強く、社交的で攻撃的、日常生活への執着が強く、退屈が苦手。


シミュレーションでは各エージェントにマネジメントもしくはエンジニアリング関連のスキルが割り当てられます。加えて、リソースの有無や対人関係、タスクの組み合わせなども考慮されているそうです。また、研究チームは南極・潜水艦・国際宇宙ステーションなどの高いストレスがかかる閉鎖空間での生活に関する研究データも分析しています。

研究チームは「火星に移住してから28年間をシミュレーションする」という調査を5回にわたり実施。シミュレーションでは空気・水・食料の生産、廃棄物の処理、事故の修復など常に遂行しなければならない4つの重要タスクが設定されています。


さらに、火星への移住者を10~170人まで10人ずつ増やしていき、植民地化に必要な最小人口を分析しました。なお、火星に投入される人口には、初めは4つの性格タイプから同数ずつ人員が投入されています。

分析の結果、火星に移住してから28年が経過したのち10人以上の人口を維持できる最小人口は「22人」だったことが明らかになりました。また、シミュレーションでは移住者の性格タイプが重要な役割を担うことも明らかになっており、研究チームは「すべての期間を通じて生存したのは『愛想の良いタイプ』のみでした」と記しています。


愛想の良いタイプのみが生存した理由を、研究チームは「シミュレーションでは長時間にわたり、すべてのエージェントが一連のストレス相互作用や、宇宙空間や生息地でのアクシデントにさらされます。その中でこの性格タイプだけが生存するのは、これが最も高い対処能力を持つためでしょう」と記しました。

シミュレーションにおいて最も不利なのは神経質タイプで、シミュレーションでは神経質タイプが他の性格タイプよりも圧倒的に高い割合で死亡したそうです。加えて、神経質タイプの人口が十分に低いレベルに達してようやく、他の性格タイプの人口が安定することも明らかになっています。

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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