藻の一種が火星でも光合成を行えるかもしれないとの研究結果、テラフォーミングへの期待が高まる
太陽系の惑星である火星は、以前から人類の移住先としての期待が高まっていました。NASAは2033年までの火星への有人探査を目的として掲げ、民間企業のSpaceXも火星都市建設を計画しています。火星で人類が生活する上で大きな障壁となるのが「大気」ですが、2021年2月16日、科学者たちが「光合成を行うシアノバクテリアが火星でも成長可能だ」とする研究結果を発表しました。
Frontiers | A Low-Pressure, N2/CO2 Atmosphere Is Suitable for Cyanobacterium-Based Life-Support Systems on Mars | Microbiology
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmicb.2021.611798/full
Biotech fit for the Red Planet | EurekAlert! Science News
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2021-02/f-bff021221.php
火星の大気は95%を二酸化炭素、3%を窒素が占めていますが、シアノバクテリアはその両方を取り込み、炭素固定と窒素固定により活用する事ができます。しかし火星の大気圧は約6hPa~11hPaと地球の100分の1程度であり、このような条件化ではシアノバクテリアの代謝は十分に行われません。地球の大気を火星で再現することも技術的に困難なため、科学者たちは火星でも生育できるシアノバクテリアを探す方向にかじを切りました。
科学者たちは100hPaという低圧を再現できるバイオリアクター「Atmos」を開発。内部にガラスと鋼で作られた9個の容器を置き、内部を窒素と二酸化炭素で満たし、火星の堆積層に存在するとされるリンや硫黄、カルシウムなどの栄養素を含んだ培地を設置しました。
次に、以前の実験で過酷な条件に耐えることが示された「アナベナ属」のシアノバクテリアをAtmosに封入して10日間観察しました。その結果、活発な成長がみられたことを確認しました。
さらに科学者たちは成長したアナベナ属を乾燥させ、大腸菌の基質として利用する事にも成功しています。これにより、シアノバクテリアから得られる糖やアミノ酸が他の細菌に栄養を与えることが可能なことが実証され、科学者たちは火星でも食品や薬が製造可能なことが示されたと述べています。
科学者たちはより火星に近い条件下での実験が必要だと述べており、シアノバクテリアの他の種や、他の栄養条件での研究を継続していくとしています。
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