ネットサービス

サブスクリプション契約の継続を見直さない消費者の不注意がサービスを提供する企業の収益増加につながるという研究結果


Apple MusicNetflixYouTube Premiumなど、商品やサービスの利用料金を継続的に支払わせる契約形態が「サブスクリプション」です。スタンフォード大学の研究チームによる調査によって、顧客がサブスクリプションの料金に注意を向けない場合、サービスを提供する企業の収益は約2倍に増加することが判明しました。

Selling Subscriptions | NBER
(PDFファイル)https://doi.org/10.3386/w31547


Gauging the ‘subscription economy’ boon to companies | Stanford Institute for Economic Policy Research (SIEPR)
https://siepr.stanford.edu/news/gauging-subscription-economy-boon-companies


Stop binge-watching and read your credit-card bills. Subscription services make lots of money when you're not paying attention. | Morningstar
https://www.morningstar.com/news/marketwatch/20230816356/stop-binge-watching-and-read-your-credit-card-bills-subscription-services-make-lots-of-money-when-youre-not-paying-attention

スタンフォード大学の経済学者リラン・アイナフ氏とニール・マホーニー氏らの研究チームは、サービス名が特定できないとの条件で大手決済カードネットワークから入手した取引データを基に、エンターテインメントやセキュリティ、小売商品、新聞などのカテゴリで人気の10個のサブスクリプションサービスの調査を行いました。調査には2017年8月から2021年12月までの決済データが使用され、2300万件のアカウントと、3500万件のサブスクリプション購読に関するデータが分析の対象となりました。


分析の結果、消費者がクレジットカードからデビットカードに交換すると、サブスクリプション契約の解約率が約4倍に上昇したことが報告されています。カードの変更を行うと、サブスクリプションの請求情報を更新する必要があり、その際に消費者はサブスクリプション契約の継続を見直したと考えられています。

以下のグラフは、さまざまなサブスクリプション契約の維持率を示したグラフで、中央の「12カ月」の時点がクレジットカードなどの更新タイミングに相当しています。時間の経過とともに維持率が緩やかに低下し、カードの切り替えが行われた12カ月目の前後でサブスクリプション契約の維持率が急激に低下したことが確認できます。


カードの切り替えに伴って、解約率が急激に上昇することを受けて、研究チームは「消費者の不注意でサブスクリプションが継続されている場合の企業の収益に与える影響」の推定を行いました。調査の結果、サブスクリプションサービスの平均価格である月額12.99ドル(約1900円)のプランでは、消費者が毎月プランの見直しといった積極的な意志決定を行わなかった場合、企業の収益は約85%増加することが推定されました。

アイナフ氏らは「消費者の不注意がなければ、ビジネスとして成り立たなかったであろうサブスクリプションサービスも数多く存在すると考えるのが妥当です」と述べています。

2023年7月にSpotify、8月にDisney+などのサービスが相次いでサブスクリプション料金の値上げを行っています。マホーニー氏は「サブスクリプション料金の値上げに関するニュース報道もサービス解約の決定を促す可能性があります」と述べています。


マホーニー氏は「サブスクリプション料金が値上げされたにもかかわらず、誰もその件についての情報を持っていない場合、解約につながる可能性は低いです。しかし、値上げが新聞やテレビ、SNSで報じられた場合、消費者がプランの変更や解約を検討する可能性が高くなります」と報告しています。

研究チームは近年のサブスクリプションサービスの増加について「電子商取引の成長」と「従量課金制などの手間を省くことで消費者を助ける」ことが要因だと語っています。しかし、研究チームは「サブスクリプション契約の自動更新は、契約の価値を見いだせないにもかかわらず契約を続けている不注意な消費者を利用しています」と指摘。また「たしかにサブスクリプションサービスは消費者に利便性をもたらすかもしれませんが、企業が不注意な契約者を利用することも可能です。このような消費者から得られる収益が、企業が契約モデルを従量課金制からサブスクリプション契約へと移行する動機付けにつながっている可能性があります」と述べています。


さらに研究チームは、月1回から2年に1回まで、さまざまな間隔で消費者に契約の見直しを促すことによる、企業の収益に与える影響の調査を行いました。その結果、6カ月に1回消費者に対して見直しを勧めると、消費者の不注意による企業への追加収益が約50%減少することが判明しました。アイナフ氏らは「私たちの研究は、サブスクリプション経済を上手に規制することで、消費者にとって経済的な利益をもたらすことができると証明しました。消費者と企業にとって、サブスクリプションの問題は非常に重要です」と述べています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
Disney+とHuluが値上げを発表、アカウント共有の取り締まりも - GIGAZINE

サブスクリプションをキャンセルする方法の難度を高めるのは「顧客がうっかり間違ってキャンセルしてしまうのを防ぐユーザー保護のための機能」と業界団体が語る - GIGAZINE

ディズニーやNetflixなどの業界団体がワンクリックでのサブスク解約「Click to Cancel」の義務化に反発、多額の費用を要し言論の自由を侵害すると主張 - GIGAZINE

世界のニュースサイトはサブスクリプション方式でどれぐらい稼いでいるのか - GIGAZINE

「解約は申込と同じくらい簡単にすべき」としてクリック一発でサブスク解約できる「Click to Cancel」の義務化をFTCが目指している、解約を複雑にする企業には罰則も - GIGAZINE

サブスク・定期購入を自動更新にしているとAppleのアプリ開発側で自動値上げが可能に - GIGAZINE

in ネットサービス, Posted by log1r_ut

You can read the machine translated English article here.