雨のエネルギーを発電に利用するためのブレイクスルーが発表される、ソーラーパネルならぬ「レインパネル」が登場か
近年は太陽光や風力といった自然界の再生可能エネルギーを発電に利用する試みが進んでおり、中には「空から降ってくる雨も発電に利用できるのでは?」と考えたことがある人もいるはず。実際、以前から雨を利用した雨滴発電は考案されていたものの、スケールアップが技術的な問題によって妨げられていたとのことですが、新たに中国の研究チームが雨滴発電のブレイクスルーを達成したと発表しました。
Rational TENG arrays as a panel for harvesting large-scale raindrop energy | TUP Journals & Magazine | IEEE Xplore
https://doi.org/10.23919/IEN.2023.0015
Collecting energy from raindrops using solar | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/996074
Forget Solar Panels. Here Come Rain Panels - The Debrief
https://thedebrief.org/forget-solar-panels-here-come-rain-panels/
空から降ってくる雨滴には、高い雲から落下してくることによる運動エネルギーと静電エネルギーが含まれており、これらのエネルギーを利用して発電することが可能です。実際、過去にはポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜という圧電体の膜に雨滴が衝突する振動のエネルギーを利用し、傘を発光させるという試みも実現されています。
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ところが、落下する雨滴からエネルギーを効率的に収集する試みには技術的なハードルがあり、大規模な雨滴発電を実現することはできていないとのこと。近年の研究では、摩擦帯電と静電誘導の組み合わせで力学的エネルギーを電気エネルギーに変換する摩擦帯電型ナノ発電機(TENG)を用いた液滴ベースのTENG(D-TENG)で、少ないながらも測定可能な電力を収集することに成功しています。
ところが、D-TENGは瞬間的な高出力を実現できるものの、メガワットレベルの電子機器に対して1台で継続的に電力供給することは依然として困難だとのこと。また、ソーラーパネルでは多くの太陽電池を1つの回路に組み合わせることで高出力を実現していますが、D-TENGを複数組み合わせるとパネルの上部電極と下部電極の間に意図しない容量性カップリング(容量結合)が生じてしまい、セル間の電力損失が大きくなるために全体の出力が低下してしまうという問題があります。
そこで中国・深圳にある清華大学深圳国際大学院のZong Li教授らの研究チームは、アレイ下部電極とブリッジ環流構造を備え、各発電ユニットを互いに独立させつつ容量結合の影響を排除した、ソーラーパネルのような「ブリッジアレイ発電機」を考案しました。
D-TENGでは雨がパネル表面に落ちると雨滴が正に帯電し、パネルの表面は負に帯電しますが、パネル表面の電荷が徐々に消散することでエネルギー損失につながるとのこと。ブリッジアレイ発電機はこれにアレイ下部電極とブリッジ環流構造を追加することで、雨滴のエネルギーを効率的に収集することを可能にしたとされています。
研究チームがさまざまな構造のブリッジアレイ発電機でテストを行ったところ、ブリッジアレイ発電機のピーク出力は従来の同サイズの雨滴発電パネルと比較して約5倍であり、1m2あたり200Wに達したとのことです。
Li氏は、「液滴TENGは瞬時に高出力を実現できますが、メガワットレベルの電子機器に対して1台で継続的に電力供給することは依然として困難です。従って、複数のD-TENGを同時利用することは非常に重要です」「複数の太陽光発電ユニットを並列接続して電気を供給するソーラーパネルの設計を参考に、私たちは雨滴エネルギー収穫のためのシンプルかつ効果的な方法を提案します」と述べました。
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