テスラが車両の航続距離について虚偽の宣伝を行っていたとして集団訴訟を提起される

電気自動車(EV)メーカーのテスラが販売する車両は、ソフトウェアが推定して表示する「航続距離」を詐称していることが、ロイターにより指摘されています。これを受け、テスラ車のオーナーが、「テスラは車両の航続距離を詐称している」として集団訴訟を提起しました。

Tesla faces California class action on its EV range claims | Reuters
https://www.reuters.com/legal/tesla-faces-california-class-action-its-ev-range-claims-2023-08-03/

Tesla sued for false advertising after allegedly exaggerating EV ranges
https://www.engadget.com/tesla-sued-for-false-advertising-after-allegedly-exaggerating-ev-ranges-151034923.html

2023年7月末、テスラが航続距離推定ソフトウェアを不正に操作し、車両の航続距離を水増ししていたことがロイターにより報じられました。報道によると、テスラで航続距離推定ソフトウェア関連の不正がまん延していたのは2013年頃で、この不正を指示したのはイーロン・マスクCEOだったとされています。なお、テスラ車の航続距離詐称問題については当局による調査が進められており、2023年には韓国の独占禁止法規制当局が罰金を科し、アメリカの環境保護庁(EPA)もテスラに対して推定航続距離の表示を下方修正するよう要請しています。

テスラが航続距離をごまかして週に2000件もの苦情に対応していた疑い - GIGAZINE

これに続いて、アメリカ・カリフォルニア州在住のテスラ車オーナーの3人が、テスラがEVの航続距離に関する虚偽の宣伝をしたとして、カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所に集団訴訟を提起しました。この集団訴訟では前述のロイターの報道が引用されています。

訴訟を提起した3人は、自身らの所有するテスラ車が表示する航続距離が実際に走行可能な距離を大幅に下回っており、この件についてテスラに苦情を申し立てても取り合ってもらうことができなかったと主張しています。また、原告側は初めから航続距離が短いことがわかっていれば「テスラ車を購入しなかったか、あるいはかなり安い価格での購入を検討しただろう」とも主張しました。

原告側の代理人を務めるミルバーグ・コールマン・ブライソン・フィリップス・グロスマン法律事務所のアダム・A・エドワーズ弁護士は、「端的に言えば、テスラには広告通りに機能する製品を提供する義務があります」と述べました。

原告の1人でModel Yのオーナーでもあるジェームズ・ポーター氏は、「テスラ車での旅行中、わずか92マイル(約148km)しか走行していなかったにもかかわらず、表示される推定航続距離は約182マイル(約293km)分も減少しました」と、航続距離の表示が実際の走行距離と明らかに乖離(かいり)していたと言及。

この訴訟が集団訴訟として認められれば、テスラのModel 3、Model S、Model X、Model Yを購入したカリフォルニア州在住のすべての人が訴訟に参加可能となる模様。なお、テスラはコミュニケーションチームを解散しているため、海外メディアのEngadgetがテスラにコメントを求めていますが、回答は得られていません。

なお、EVが表示する航続距離の推定値が現実の走行可能距離とあまりにかけ離れていると指摘されているのはテスラだけではありません。自動車および航空宇宙関連の標準規格を開発する非営利団体のSAE Internationalが独自に実施した調査によると、EVは宣伝されている航続距離を平均約12.5％も下回る傾向にあることが明らかになっています。ただし、SAE Internationalの公開した調査データでも、テスラのEVは他メーカーのEV以上に航続距離の推定値が正確ではないことが明らかになっています。