なぜアルコールのない人生はつまらないと感じるのか?
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以前は「適度な飲酒は健康にいい」といわれることがありましたが、その後の研究により飲酒は適量であっても脳を萎縮させ、心臓の健康を害することなどが明らかになっており、アルコール製品にがんに関する警告表示を義務づけるべきとの声も上がっています。「そんなことを言われても、飲み会や晩酌がないと生活が退屈になってしまう」と言い返したくなる人もいるかもしれませんが、専門家が「そう感じるのは脳が生み出した錯覚」と一刀両断し、その理由を解説していました。
Why Life Can Seem Joyless Without Booze | Psychology Today
https://www.psychologytoday.com/us/blog/sober-curiosity/202307/why-life-can-seem-joyless-without-booze
アメリカ・サンフランシスコを拠点とする依存症のセラピストで、自分自身も以前はアルコールが手放せない生活を送っていたというジャネット・フー氏は、「私のクライアントの多くは、『でもお酒ほど楽しいものは他にないじゃないですか』とよく不満を口にします。かくいう私も、飲酒をしていた時はお酒も飲まずに長生きして何が面白いんだろうとよく考えていました」と過去の自分を振り返ります。
しかし、思い切って断酒に成功したフー氏は、「お酒をやめて数年がたった今、人生には他にも喜びが数え切れないほどあることに気がつきました。かつての私が想像していたアルコールのないつまらない人生は、習慣、欲望、そして視野の狭さの副産物として私の脳が作り出した幻想にすぎなかったのです」と述べました。
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◆飲酒の習慣
1日の終わりや週末に無意識にお酒に手が伸びる場合、それは飲酒が習慣化してしまっていることを意味しますが、習慣そのものは悪いことではありません。毎朝起き抜けに歯を磨いたり、褒められたときに反射的にお礼を言ったりと、人間は日常生活の中でいくつもの習慣を実行しており、こうした習慣には思考を簡略化させて、脳のエネルギーを節約する機能があるからです。
フー氏によると、習慣は「きっかけ」「ルーチン」「報酬」の3つの段階から成り立っているとのこと。このうち、最終目標である「報酬」は脳が記憶しておくべきだと認識した望ましい結果であり、「ルーチン」はその結果を生み出す一連の行動であり、「きっかけ」はそのルーチンのトリガーとなる刺激のことを指します。
この3つの要素がループして行動様式が習慣化すると、脳は日常的な行動の際にいちいちものを考える必要がなくなります。もし仮に習慣がなければ、人は日常生活をこなすだけでも多くの精神エネルギーが必要になり、消耗してしまいます。
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◆アルコールを飲みたいという欲求
3つの段階の他に、習慣には「欲望」という要素も絡んでいます。欲望にはきっかけと報酬を結びつけて習慣化を促進させる効果がありますが、その働きは報酬の大きさ、つまり期待の強さによって左右されるため、欲望が果たせなかった時の不快感は軽いイライラで終わることもあれば、激しい欲求不満に発展する可能性もあります。
フー氏は、欲望と習慣の関係を説明するため、マサチューセッツ工科大学(MIT)が1990年代に行ったサルの実験を例に挙げました。その実験とは、サルにコンピューター画面の図形を見せてから、サルの大好物であるブラックベリージュースを与えるというものです。
コンピューター画面を見て甘いブラックベリージュースを飲むのがサルの習慣になった後、研究者はブラックベリージュースを出すのを遅くしたり、ジュースを水で薄めたりしてサルの反応を見ました。すると、サルは目に見えて落ち込んだり、いら立ったりするようになったとのこと。この結果についてフー氏は、「期待した報酬が得られなかったことで、期待と喜びが渇望と欲求不満に変わったということです」と指摘しました。
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◆アルコールがもたらす視野狭窄(きょうさく)
アルコールの心地よさという報酬と、金曜日の夜といったきっかけが結びついたお酒好きの人の脳内では、前述の実験と同じことが起きています。つまり、「酒を飲む時間」というきっかけが目に入ると、飲みたいという欲望が活性化し、それが得られない渇望と欲求不満で心が支配されます。そして、強い欲望に突き動かされた習慣は人の視界を狭め、やがて他の報酬が目に入らなくなります。
前述のサルの実験では、トレーニングが習慣化したグループのサルはコンピューター画面に釘付けになり、部屋の反対側に置かれたブラックベリージュースに気づかなくなったり、外で遊ぶといった別の報酬に反応しなくなったりしました。一方、習慣づけが浅いグループのサルは喜んで別の報酬に飛びつき、ブラックベリージュースには見向きもしなくなったとのことです。
サルの実験や自分の実体験から得られた教訓について、フー氏は「喜びのある人生には、お酒に酔って騒ぐことよりもはるかに多くの価値があります。アルコールだけが価値あるものだという脳の主張にだまされてはいけません。強烈な欲求があったとしても、時間がたつにつれて渇望は弱まり、最終的に収まります」と話しました。
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in サイエンス, 食, Posted by log1l_ks
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