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基本無料のモバイルゲームやソーシャルゲームは高額課金するプレイヤーを引きつけるためにギャンブル業界の手口を利用しているという指摘


SNSをプラットフォームとするソーシャルゲームや、スマートフォンでプレイできるモバイルゲームには、基本無料で遊べるものが多く存在します。しかし、基本無料でもゲームの進行を有利にするようなアイテムや収集品を手に入れるためにはお金を支払う必要があります。こうした基本無料のゲームを運営する企業は「プレイヤーにいかにお金を使わせるか」を戦略上重視しており、中にはギャンブル業界で使われている手法を取り入れているものもあって規制の対象になりつつあると、イギリス日刊紙のThe Guardianが取り上げています。

‘No way out’: how video games use tricks from gambling to attract big spenders | Gambling | The Guardian
https://www.theguardian.com/society/2023/jul/14/video-games-gambling-big-spenders


2016年にゲーム開発企業・Tribeflameのトルルフ・イェルンストロームCEOはフィンランドで開催されたカンファレンスで「Let's Go Whaling(捕鯨に行こう)」というタイトルの講演を行いました。この講演では、「モバイルゲーム業界がやがて年間1000億ポンド(約18兆円)規模に成長する」という予測のもと、ゲームのプレイヤーからお金を引き出すための手口がいくつか紹介されました。

イェルンストロームCEOは、プレイヤーがゲームに熱中している状態を悪用する、つまりゲームのダイナミクスによって引き起こされる「衝動的な感情」を利用し、現実通貨で購入可能なゲーム内通貨を使ってゲームを進められるような機会を時間制限付きで与えることが効果的だと主張。例えば、「目先の損を回避したがるという人間の性質を利用し、最初にゲーム内アイテムを無料で提供してから、課金しなければそれを取り上げるとプレイヤーに後から迫る」という方法を紹介しました。

ほかにも「他のプレイヤーが使っている金額の詳細を明らかにすることで群集心理を悪用し、お金の使用を促す」という手口を提案したイェルンストロームCEOは、「何をするにしても、大多数のプレイヤーがまったく課金しないことを認めるのは『毒』なのです」と語りました。イェルンストロームCEOは一連の講演内容について、あくまでも業界にモラルを問いかけて率直な議論を促すために挑発する目的があったと述べています。


イェルンストロームCEOの講演が話題になった後、モバイルゲーム市場は萎縮するどころかますます巨大化し、2016年から2018年の間にソーシャルゲームの市場規模は270億ドル(約3兆7600億円)から540億ドル(約7兆5300億円)にまで拡大したとのこと。その後、2019年には一度停滞を見せたものの、新型コロナウイルスのパンデミックをきっかけに再び成長をはじめ、2025年には1000億ドル(約14兆円)の壁を突破すると見られています。

イェルンストロームCEOが語った手口はカジノやブックメーカーが実際に使っているものと同じです。もちろん実際にお金が手に入るギャンブルと異なり、ソーシャルゲームやモバイルゲームでは名声や達成感しか得られませんが、一部のプレイヤーはそこに価値を見出して喜んで課金します。


ソーシャルゲームやモバイルゲームを開発するZyngaのプレイヤーサクセス担当ヴァイスプレジデントであるジェマ・ドイル氏は、高額を課金するプレイヤーを特定して監視する社内モデルが存在することを明らかにしています。ドイル氏によれば、高額を支出するプレイヤーが課金額を突然減らした場合、そのプレイヤーに電話して「なぜ課金額を減らしたのか」を尋ねるとのこと。こうした行為はプレイヤーに圧力をかける行為と見なされ、ギャンブル業界では法的に規制されていますが、ソーシャルゲーム業界では規制されていません。

マルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク校でモバイルゲームについて研究するリース・ファン・ローセル氏は、「ソーシャルゲーム企業が心掛けているのは、利用されているという感覚をプレイヤーに持たせないように、公平であるという感覚を与えることです」と述べています。ローセル氏は人気ゲーム「キャンディークラッシュ」を例に挙げ、「『キャンディークラッシュ』のプレイヤーはカジュアル層が多く、課金しているプレイヤーは全体の10%以下でしょう。しかし、『キャンディークラッシュ』のプレイヤー人数自体が非常に多いので、たった1%が1ユーロ(約156円)多く課金することで、大きな稼ぎになるのです」と述べています。


また、The Guardianはゲームデザイン業界の情報筋からの証言として、「ゲームの結果を左右する乱数ジェネレーターに手を加え、プレイヤーにゲームを体験させる段階では大勝ちさせ、その後は勝つ機会をぐっと減らすことで、ゲームを進めるために課金する理由をプレイヤーに与える」という手口を自慢する企業もあったと伝えています。

また、ゲームでは今や当たり前になったルートボックス(ガチャ)がゲームとギャンブルの境界をあいまいにしているとThe Guardianは指摘しています。ルートボックスは武器や衣装などのゲーム内アイテムをランダムで引き当てるもので、プレイヤーは欲しいアイテムを引き当てるまでルートボックスを買い続けます。ルートボックスはゲームの収益を大きく底上げするので、今やどのソーシャルゲームにも搭載されています。


イギリスではオンラインカジノが普及したことでギャンブル依存に陥る人が急増して社会問題となっており、政府はギャンブル業者に対して厳しい制限を設けたほか、ギャンブルに依存する人が自らオンラインカジノへのアクセスを遮断する「自己規制プログラム」を用意しています。しかし、記事作成時点でソーシャルゲームやモバイルゲームについてはこのようなシステムが用意されていません。

しかし、このルートボックスはもはやギャンブルであると指摘する声は多く、ベルギーでは違法とされ、イギリスでも規制が進められています。

「ルートボックス(ガチャ)はギャンブル」としてイギリスが規制を設けつつある - GIGAZINE


イギリスのゲーム業界団体・Ukieの共同最高責任者であるダニエル・ウッド氏は「ゲーム会社はスクリーンタイムやルートボックスを含むゲーム内購入、オンライン上のやりとり、年齢に応じてコンテンツへのアクセスを管理できるようなわかりやすいペアレンタルコントロールなどのツールを開発しています」と述べています。

なお、The GuardianはZyngaとGoogleにコメントを要請しましたが、返答はなかったそうです。

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in ゲーム, Posted by log1i_yk

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