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基本無料(F2P)ゲームで課金させる巧妙な収益化戦略が明らかに

By MarcX Photography

PCゲームやスマートフォンのアプリでは「基本無料」と宣伝されているゲームの大半は、ゲーム内で使える一部の便利なアイテムや限定のコレクション品を有料で販売しています。「無料だから……」とゲームを始めたプレイヤーはその時点ではお金を払ってまでゲームをプレイしようとは考えていないはずですが、ゲーム系ニュースサイトGamasutraで論文を掲載しているWargaming Americaの経済学者Ramin Shokrizade氏が、「基本無料(F2P)ゲームの収益化トリック」というブログを投稿しています。

Gamasutra: Ramin Shokrizade's Blog - The Top F2P Monetization Tricks
http://www.gamasutra.com/blogs/RaminShokrizade/20130626/194933/The_Top_F2P_Monetization_Tricks.php


◆強制的な収益化モデル

By The World According To Marty

基本無料(F2P)ゲームの強制的な収益化モデルは、いかに消費者を錯覚させるかというテクニックが使用されています。研究によると「ゲームジェム」と呼ばれるゲーム内プレミアム通貨には、消費者の現実の金銭感覚を失わせる効果があり、実際のお金を支払う「苦痛」を取り除くことができるとのこと。お金のやり取りに関する活動は脳の前頭皮質の前部で行われ、このエリアはおよそ25歳まで発達を続けます。

18歳以下をターゲットにすると集金に失敗する可能性が残るため、クレジットカードを使用できて、成熟しきっていない18~25歳の「法的な大人」のプレイヤーは強制的収益化モデルの格好のターゲットとされています。多くの製品で子ども向けのアニメ・グラフィックが使われているのもターゲットの年齢層を意識したもの。言い換えると、ターゲットの年齢層を広く設定している製品の品質は高くなり、例えばキャンディー・クラッシュ・サガを運営するKing.comのプレイヤー層は80%が女性。年齢別で見ると34%が22歳から30歳、9%が21歳以下で構成されています。

◆プレミアム通貨

By Kana Natsuno

強制的収益化モデルはプレミアム通貨であるゲームジェムが使われることによって最大限に有効化されます。iOSアプリにある「アプリ内課金」ボタンは、ゲーム内に設置できれば理想的とのこと。

また、プレミアム通貨の「割引」を行うことでユーザーは「お金を節約できた」と感じるため、「ゲームジェム15%割引」などの大きなバナーを設置するのは有効的なテクニックとなります。もし実際の銀行口座の残高をアプリ内に表示するとユーザーは購入を控えますが、プレミアム通貨の残高を見せることでユーザーを安心させる効果があります。

◆スキルゲームからマネーゲームへ


「スキルゲーム」は身につけたスキルがゲームの決定や成功を握るゲーム、「マネーゲーム」はお金がゲームの決定や成功を握るゲームのことを指します。ユーザーは誰でもスキルゲームを好みますが、多くの強制的収益化モデルは、スキルゲームに偽装したマネーゲームとなっています。

初期のマップやステージは誰でもお金を支払わずに完成させることができますが、ゲームを進めるにつれて難易度は上昇し、クリアするために必要スキルをブーストするためにプレミアム通貨を使用させることでプレイヤーは依存するようになるとのこと。この切り替わりのタイミングが巧妙であるほどにユーザーは「スキルゲームをプレイしている」と勘違いを起こしやすくなります。キャンディー・クラッシュ・サガはスキルとマネーの要素をバランスよく採用しているアプリの1つ。

◆報酬を与えて除去する

By Thomas Hawk

テクニックのあるユーザーに、レベルアップアイテムなどの非常に魅力的な報酬を与えて限定時間が過ぎると報酬をユーザーから除去する、という方法は強力な強制的収益化モデルのテクニックの1つ。これはパズル&ドラゴンズにもよく使われており、スキルゲームとして楽しんでいるユーザーが現実時間の4時間以上に相当するアイテムを消化して、敗れた場合1ドル(約100円)を支払うか報酬を全て失うかの選択に迫られ、少しずつマネーゲームにシフトしてしまうということです。

◆進展ゲート


「進展ゲート」はユーザーがゲームをさらに進めたい場合にいくらお金が必要かを知らせるもの。Zyngaの建築シミュレーションアプリに多く使用されており、建築可能な町・都市のレベルキャップを設けて除去するためや、建築中のアイテムに表示されるゲージの速度を増加するためにプレミアム通貨が必要であることを表示します。

◆ソフトブーストとハードブースト

By jpellgen

マネーゲームで売り上げを上げるのに効果的なプロモーションには「ソフトブースト」と「ハードブースト」があります。ソフトブーストは1ドル(約100円)ほどを支払うと、キャラクターのステータスを上昇させたり、一定時間無敵になれるもの。ハードブーストとはランダムで貴重なアイテムが当たる「Kompu Gacha(コンプガチャ)」と呼ばれるもの。パズル&ドラゴンズではレアなモンスターが当たるレアガチャが1回5ドル(約500円)となっています。しかし、ガチャは未成年が大金を費やしてしまう問題が起きていることからアジアでは規則化が始まっています。

論文の筆者Shokrizade氏は、上記の「強制的収益化モデル」のテクニックを盛り込んだ最先端のゲームは「パズル&ドラゴンズ」と定義しています。また、強制的収益化モデルを使わずに営利的競争率の高いゲームを作ることは可能なものの、今後数年は強制的収益化モデルの波が継続すると予測。現在の若いユーザーたちが年を重ねて経験を積んでからは、流れが変わってくるのかもしれません。


なお、「基本無料でプレイ可能(Free-to-play)」とうたっているゲームには、ゲーム内のアイテムなどに課金が必要な場合があります。そんなF2Pゲームに対してヨーロッパでは、欧州委員会がゲーム会社に対して「課金が必要なゲーム・アプリは全て、消費者や特に子どもたちのミスリーディングを招くため「基本無料」と宣伝するべきではない」と勧告しています。

"Free-to-play" misleading advertising in Europe | GamesIndustry International
http://www.gamesindustry.biz/articles/2014-02-27-free-to-play-misleading-advertising-in-europe


イギリスではゲームを422ポンド(約7万2000円)分ダウンロードしてしまった13歳の少年が母親にしかられて自殺するという事件も発生しているため、判断能力の乏しい子どもが決済を行える仕組みは厳しく取り締まられていきそうです。

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in メモ,   ゲーム, Posted by darkhorse_log

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