アニメ配信サイト「Crunchyroll」はさらなる成長を目指してインドを狙っている
かつて海賊版動画を配信するサイトだった「Crunchyroll(クランチロール)」は、いまやソニーグループの動画配信サイトとして「ワンピース」や「鬼滅の刃」といったヒット作を配信しています。今後のCrunchyrollのビジネスについて、ニュースサイト・Bloombergが情報をまとめています。
Crunchyroll Eyes India as Japanese Anime Becomes $20 Billion Industry - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-07-13/crunchyroll-eyes-india-for-growth-as-japanese-anime-becomes-20-billion-industry
Crunchyrollは2006年、カリフォルニア大学バークレー校の卒業生であるクン・ガオ氏が同級生らとともに創業しました。本格的にビジネスに乗り出したのは2008年のことで、どのようにビジネスモデルを成立させていったのかについてはクン・ガオCEOと日本法人のビンセント・ショーティノ社長が東京国際アニメフェア2012で語ったことがあります。
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その後、映像プロデューサーのピーター・チャーニン氏などのベンチャーキャピタリストから投資を受けたり、AT&T傘下を経たりして、2020年からはソニー傘下となっています。ソニーによる買収額は12億ドル(約1670億円)です。
かつて、日本のアニメを配信するビジネスは「ニッチな産業」だと捉えられていたそうですが、いまや200億ドル(約2兆7800億円)規模のビジネスとなっています。
Crunchyrollのユーザー登録数は1億人以上で、そのうち1100万人が有料会員だとのこと。この数字は2020年の新型コロナウイルスのパンデミックにより急増しましたが、それでも欧米市場の成長には鈍化が見られるため、Crunchyrollは成長市場としてインドに目を向けているそうです。
インドに注目が集まる理由の1つは、同じく巨大市場である中国が閉鎖的な市場だという事情もあります。このため、Crunchyroll以外にAmazonやNetflixもインドに目を向けており、今後激しい戦いが繰り広げられることになるとみられます。
すでに、Crunchyrollはインドでの料金をアメリカのミドルレンジ価格の10分の1である、月額約1ドル(約139円)に下げて勝負に出ています。インドでの最大のライバルは皮肉なことに海賊版サイトだとのことで、Crunchyrollのラフール・プリーニCEOは「私たちが正しく仕事をすれば、ファンを公式サイトに引き込むことができます。また一方で、ソニー・ピクチャーズやその他のパートナーと協力して、合法的な手段を駆使してファンと話し合い、海賊版に対処していくことです」と述べています。
Crunchyrollの未来について、ゴールドマン・サックスのアナリストは「映像事業でCrunchyrollが占める割合は2023年3月期は1%だが、5年後には36%に増す」と試算。日本のアニメの成長が海外で続いており、北米以外でも需要が伸びることを想定すると、Crunchyrollの有料会員数は増加するはずだと予想しています。
また、調査会社・Omdiaも映画と配信の両方で世界のアニメ視聴率は増加すると予測。「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」が好調で、アナリストは「日本のアニメは日本国内より国外での方が価値が高く、この成長は今後も続く」と予測しています。
Bloombergによれば、北米でのアニメ映画の興行収入はここ数年、大きく数字を伸ばしているとのこと。
なお、プリーニCEOはNetflixやAmazon、Disneyといったライバルの存在について、「アニメ視聴者数の底上げになる」と歓迎する姿勢を見せています。
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