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アニメの海外配信サービスは日本語のロゴをどうやって英語版にデザインし直しているのか?


日本のアニメは今や世界中で楽しまれるコンテンツとなっており、翻訳家が日本語のセリフのニュアンスをくみ取って英語やその他の言語に翻訳を行っています。また、海外展開する際はセリフだけではなく「アニメのロゴ」もデザインし直す必要があるとのことで、日本製アニメの配信サービスを展開するCrunchyroll(クランチロール)が、「アニメを海外に翻訳する際、日本語のロゴを英語版にデザインし直す方法」について解説するムービーを公開しています。


アニメには作品を象徴するロゴが存在しており、海外に向けて翻訳される際はロゴも同時に翻訳されます。たとえば、「彼女、お借りします」の海外版ロゴ(下)はこんな感じで……


蜘蛛ですが、なにか?


群れなせ!シートン学園」など、元となった日本版ロゴの雰囲気を残しつつ、英語版にデザインされていることがわかります。


クランチロールの上級デザイナーであるStephanie Gaddi氏は「蜘蛛ですが、なにか?」のロゴデザインを例にして、「私たちはまず、日本語ロゴを分解します」と話します。


このロゴで注目するべきなのは、漢字をベースにしてクモをイメージした「蜘蛛」の部分と……


ひらがなで記された「ですが、なにか?」の部分に分かれているという点です。


この点を把握した後で、Gaddi氏は「蜘蛛」の漢字らしいイメージを残して英語に直したスケッチを描きました。「蜘蛛」という漢字には箱形の部分が多いことから、「SPIDER」も全体的に四角っぽい字体にデザイン。


さらに「とめ・はね・はらい」などを意識して字体を整えて、漢字っぽく寄せていきます。


この時点でオリジナルの「蜘蛛」と「SPIDER」を比較するとこんな感じ。


日本語のロゴでは、「蜘蛛」の周囲にクモの足をイメージした飾りがあるため……


これを「SPIDER」の方にも移植します。すると、オリジナルのロゴの雰囲気を英語版でも再現することができました。


次に、ひらがなで記された「ですが、なにか?」の部分をデザインします。漢字はメインとなる要素を表し、ひらがなはそれを補足するテキストのイメージです。


すでにコミカライズ版の「蜘蛛ですが、なにか?」が英語に翻訳されているため、このデザインやフォントを元にして「So I'm a」と「So What?」を配置します。


各要素を配置した状態がこれ。このままだと「SPIDER」が読みにくいため……


アルファベットを少し丸めてクモの足をわずかに離すことで、ロゴの可読性をアップ。


完成した英語版ロゴが下。日本語版のロゴ(上)と見比べても、よくオリジナルの雰囲気が残されていることがわかります。


実際にアニメの予告編で使われる場合には、ロゴに色が付くこともあります。


続いて、「彼女、お借りします」の英語版ロゴデザインを手がけたPeter Smith氏が解説。


Smith氏も、まずはオリジナルの日本語版ロゴをよく観察するそうで、この際はオリジナルのロゴを使う時の注意書きにも目を向けるとのこと。なお、「彼女、お借りします」の日本語版ロゴは、「彼女、」と「お借りします」の配置を変えることは許可されていますが、「彼」と「女」の間隔を勝手に離すなど、文字単位で位置を変更することは避けるようにと記されています。


その後、Smith氏はアニメそのものについてのリサーチを行い、アニメのムードやストーリーラインを把握するそうです。


最初のリサーチを終えると、アニメの雰囲気やオリジナルのロゴを元にして、最も適切なフォントを選択します。


Smith氏が選択したのは「Museo Sans」というフォント。


フォント選択を終えると、次は日本語ロゴの要素をより注意深くチェックします。文字のカーブや全体の雰囲気を把握して……


英語版のフォントと見比べます。


この際、ブランディングチームなどとも話し合いを行い、イメージに合わせて調整し……


ロゴの形状が完成。


一番上がオリジナルの日本語版ロゴ、真ん中がフォントを並べただけの英語版ロゴ、一番下がフォントにさまざまな修正を加えた英語版ロゴ。


余計な飾りがなくなっているだけでなく、アルファベットの傾きやカーブの丸みなど、多くの点が日本語版ロゴに寄せられていることがわかります。


色合いをオリジナルに寄せるとこんな感じで……


イラストと合わせるとこうなります。


スペースの都合で2行になっても問題ないように構成されていました。


Smith氏は、「群れなせ!シートン学園」の英語版ロゴデザインも担当しています。この場合も「彼女、お借りします」と同様に、日本語の注意書きをチェック。


アニメの内容についての調査を行って雰囲気を把握し……


フォントを決定しました。今回は「Fredoka One」というフォントです。


まずはフォントをそのまま並べ、ベースとなるロゴを作成。


次に、動物の足型やキツネの耳と尻尾、太陽、雷といったロゴを構成する要素を把握します。


フォントを日本語版ロゴに寄せて……


さまざまな要素と組み合わせるとこんな感じ。日本語版ロゴの雰囲気を残しつつ英語版ロゴをデザインする専門家の、技術や工夫が感じられるムービーとなっていました。

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in 動画,   アニメ,   デザイン, Posted by log1h_ik