宮崎駿監督の「生命に対する侮辱を感じる」という言葉を引用してギレルモ・デル・トロ監督がAI生成作品を非難
「シェイプ・オブ・ウォーター」や「パシフィック・リム」の監督として知られるギレルモ・デル・トロ氏が、2022年公開のストップモーションアニメ映画「ギレルモ・デル・トロのピノッキオ」に関連するインタビューの中で、「AIアートが流行する中で、骨の折れる手作りのストップモーションアニメを作成した理由」について語っています。デル・トロ氏は「私は人間が作った芸術を消費し、愛しています」と述べた上で、発言の中で「アーティストの許可を得ずに映画制作のプロセスから排除するようなことは、『生命に対する侮辱』だと私は思います」と宮崎駿氏の発言を引用しました。
Guillermo del Toro Says Animated Films Deserve a Shot At Best Picture: “The Craft Is Incredibly Complex” | Decider
https://decider.com/2022/12/09/guillermo-del-toro-interview-pinocchio-ai-art/
Guillermo del Toro Slams AI Animation: Insult to Life Itself - Variety
https://variety.com/2022/film/news/guillermo-del-toro-slams-ai-animation-insult-life-1235463561/
「ギレルモ・デル・トロのピノッキオ」はディズニーによる長編アニメでよく知られる「ピノキオ」を大きく再構成した、ストップモーションアニメーションによるミュージカル作品となっています。デル・トロ氏は制作決定に際して、「『ピノキオ』のアニメーションほど私の人生や仕事に影響を与えたものはないし、ピノキオほど私個人とのつながりが深いキャラクターは歴史上ありません。この一風変わった物語のデル・トロバージョンをすべての観衆に届ける機会をくれた、Netflixの才能あるチームに感謝しています」と作品への思い入れについてコメントしています。
『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』予告編 - Netflix - YouTube
「ギレルモ・デル・トロのピノッキオ」の公開に際して、デル・トロ氏はオンラインコンテンツやポップカルチャーに関連するニュースや作品紹介を掲載するDECIDERのインタビューを受けています。
その中で、アニメ作品はアカデミー賞などの授賞式で「アニメーション部門」に区分けされる傾向がありますが、優れた作品は「作品賞」のノミネートされる日が近いうちに来るとデル・トロ氏は語っています。デル・トロ氏は「スタジオジブリが制作に関わったフランス・ベルギーのアニメ映画『レッドタートル ある島の物語』や、同じくスタジオジブリの『千と千尋の神隠し』でも、素晴らしい映画は『子ども向けの作品』という枠組みをはるかに超えています。『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』も、子どもたちも楽しめる作品でありながら、子ども向けではない作品だと思っています」と答えています。
インタビューの終盤、インタビュアーからデル・トロ氏に「この映画は骨の折れる芸術作品です。一方で現在は、AIアートが注目を集めています。アーティストを映画制作のプロセスから排除することでも知られていますが、あなたはAIアートを使用していますか。また、AIアートについてどのように思っていますか」という質問が投げかけられました。
これに対してデル・トロ氏は、「芸術は魂の表現だと思います。最高のものは、自分のすべてを包み込むもの。ですから、私は人間が作った芸術を消費し、愛しています。私は機械やテクノロジーによって作られたイラストレーションには興味がありません。人間の感情や表情をテクノロジーで再現しようというような会話が映画について交わされたとしたら、私は深く傷つき、宮崎駿監督が言うように、『生命に対する侮辱』だと思います」と宮崎氏の過去の発言を引用して回答しました。
「生命に対する侮辱」は、2016年にNHKスペシャルで放送されたドキュメンタリー「終わらない人 宮崎駿」で宮崎氏から出てきた言葉です。このドキュメンタリー番組は、2013年に記者会見を実施して長編アニメーション制作からの引退を表明したあとの宮崎氏の姿を追ったもので、宮崎氏が短編映画「毛虫のボロ」をCGで作るために悪戦苦闘する姿が克明に記録されています。
スタジオジブリの宮崎駿監督が引退記者会見を実施、ネットでは生中継も - GIGAZINE
「ボロ」制作の合間に、当時ドワンゴ代表だった川上量生氏がCG映像をスタジオジブリに持参して、宮崎氏や鈴木敏夫プロデューサーにプレゼン。「AIで『人間が想像できないような気持ち悪い動き』を学習させることで、ゾンビゲーム等のモーションに用いることができる」と説明を行ったところ、宮崎氏は「これを作る人たちは痛みとか何も考えないでやってるでしょう。極めて不愉快ですよね。極めてなにか生命に対する侮辱を感じます」と意見を述べました。
デル・トロ氏は宮崎氏の発言を引用した上で、「偉大なアーティストであるデイブ・マッキーン氏と話した時に、彼は私に『AIが絵を描けないことが最大の希望』だと言いました。AIは情報を補完することはできますが、描画することはできません。人間の感情や表情、柔らかさを捉えることは決してできません」と述べています。
なお、「生命に対する侮辱」発言の真意について2018年10月に開催された「ドワンゴゲーム会議」の中で、宮崎駿氏への独占インタビューが行われています。宮崎氏は「人工知能というものをいろいろもてはやすと、やっぱりばかげたことが起こるんだなって。その時に、川上さんみたいにアナーキーな人は、歯止めを持ってないなと思ったんですね。やっぱり、ごく普通の地べたで暮らしている人間にとっては、不快なものは不快ですよ。そういうことで僕は反応しただけですよ」と当時のことを説明。その上で「あのウケ狙いがなかったら変なものだなってなるけど、あのくそ真面目な顔したオヤジ顔がくっついていたんですよ、あそこに。あのウケ狙いのオヤジ顔を笑って済ましているっていうのは、やっぱり川上さんの大きな弱点だっていう風に思うけれど、欠陥は俺だっていっぱい持ってるから。なんか面白いことできるかなと思ってやったことでしょ?」と川上氏の意図について理解を示しています。
【宮崎駿映像出演】ドワンゴゲーム会議(仮) - YouTube
ちなみに、宮崎駿氏が監督を務める「君たちはどう生きるか」は2023年7月14日公開予定です。
君たちはどう生きるか - スタジオジブリ|STUDIO GHIBLI
https://www.ghibli.jp/info/013702/
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