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JPEGコーデックライブラリ「Libjpeg-Turbo」の開発プロジェクトが資金不足で続行困難に


JPEGコーデックライブラリ「Libjpeg-Turbo」のバージョン3.0.0が2023年7月3日にリリースされました。しかし、プロジェクトの続行は資金不足のため困難であることを開発者が報告しています。

libjpeg-turbo 3.0.0 has been released, and why there may never be a libjpeg-turbo 3.1
https://groups.google.com/g/libjpeg-turbo-announce/c/YZ2wRgB0zIE/m/UOjrm9quBQAJ


Libjpeg-Turboは、libjpegSIMD命令で高速化したJPEGコーデックライブラリです。2023年2月9日にバージョン2.1.91が「バージョン3.0ベータ2」としてリリースされており、7月3日にリリースされたバージョン3.0.0はバージョン2.1.91にに追加する形で各種修正やサポートが実装されています。

Libjpeg-Turboの開発者であるDRC氏自身は3つのオープンソースプロジェクトを維持しており、そのうちVirtualGLTurboVNCで収入を得ているそうですが、Libjpeg-Turboの開発は完全に無償労働になっているそうです。それどころか、2018年にLibjpeg-Turboのバージョン2.0をリリースした時には借金を抱えていたため、開発は一時停止せざるを得なかったとのDRC氏は述べています。

DRC氏は「私が手がけるオープンソースプロジェクトによって、企業は人件費やITコストを何億円も節約できましたが、私自身が手取りで受け取る収入は新人教師の初任給よりも少ないものです」と述べています。


Libjpeg-Turboはさまざまなブラウザや画像ビューア、エディタに採用されており、常に精査が行われてバグが報告される状態。さらに、DRC氏はこれまで資金を提供してきたスポンサー企業からLibjpeg-Turboのメジャーアップデートの頻度を上げるように迫られていたそうです。

そして、肝心のバージョン3.0.0は予定よりもリリースが遅れてしまったそうですが、その理由は購入したコード署名証明書の販売業者がシステムを変更したことで、証明書を取得する秘密鍵が使えなくなってしまったためだとDRC氏は説明しています。macOSやWindowsでソフトウェアを配布するにはコード署名証明書が不可欠であるため、バージョン3.0.0を2023年6月までにリリースする予定だったのがさらに遅れてしまったそうです。

DRC氏によると、証明書を再発行するコストは、証明書を更新するためのコストの約4~5倍になるとのこと。すでにプロジェクトの予算は2024年5月までに使い果たしてしまう見積もりだったことで、記事作成時点で証明書の再発行は大きな負担になってしまったそうです。


DRC氏は「現状では、Libjpeg-Turboの予算では1月当たり8~10時間分の労働しかできません。バージョン3.0.0のベータ版にあるバグをすべて修正するには、2024年9月までの予算をすべて前借りした上で、さらに無償で70時間以上を費やす必要がありました」と述べており、少なくとも今後15カ月は新しい機能の検討や技術サポートも不可能になってしまうと語っています。

DRC氏は「Libjpeg-Turboのプロジェクトがもっと多くの資金を集められない限り、プロジェクトはメンテナンスのみしか行えなくなり、バージョン3.1のリリースはあり得ません」と宣言しています。なお、Libjpeg-Turboのプロジェクトへの寄付は月額5ドル(約700円)から、以下のGitHubスポンサーのページから行うことができます。

Sponsor @libjpeg-turbo on GitHub Sponsors · GitHub
https://github.com/sponsors/libjpeg-turbo

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in ソフトウェア, Posted by log1i_yk

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