サイエンス

宇宙の起源の痕跡かもしれない「背景重力波」の証拠を検出か、2023年6月30日に「重要な発表を行う」と研究組織が声明


重力波の検出を行っている天文学者のコンソーシアム・North American Nanohertz Observatory for Gravitational Waves(NANOGrav)が、日本時間の2023年6月30日に重要な発表イベントを開催すると発表しました。15年以上にわたる観測データから、「背景重力波」の痕跡をつかんだとのことです。

[2306.16213] The NANOGrav 15-year Data Set: Evidence for a Gravitational-Wave Background
https://doi.org/10.3847/2041-8213/acdac6


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https://nanograv.org/news/2023Announcement


質量の大きな恒星はその質量があまりにも膨大になった結果、超新星爆発を起こし、中性子星になることがあります。その中性子星に強い磁気がある場合、自転と共に非常に強い電磁波を周期的に放出する「パルサー」と呼ばれる天体となります。パルサーから放出される電磁波は地球でもキャッチすることができ、NANOGravは15年にわたって68個のパルサーから放出される電磁波を観測していました。

パルサーから放出される電磁波は短い間隔で周期的に放出されるのですが、NANOGravの研究チームはその周期に「背景重力波」の痕跡となる乱れを発見したというプレプリントを発表しました。


たとえば、超大質量ブラックホール同士が衝突すると空間自体にゆがみが生じます。この時に重力場全体が波打って発生するのが「背景重力波」です。これまでの重力波検出は、1秒間に数回から数千回周回する大質量ブラックホールから放出される重力波を検出していましたが、今回はブラックホールから直接検出するのではなく、パルサーの周期から超低周波の背景重力波の痕跡を観測できたのがポイント。いうなれば、従来の重力波検出は「船の上に乗っていて、波に揺られた時に波に気付く」というものでしたが、今回のNANOGravの観測結果は「船の上から海全体の波に気付くようなもの」といえます。


背景重力波は大質量ブラックホールの衝突でも起こりますが、初期宇宙が急膨張を引き起こしたという「宇宙のインフレーション」の痕跡である可能性もあります。つまり、背景重力波の痕跡を検出できたということは、1981年に提唱された「宇宙のインフレーション理論」を裏付ける証拠になるかもしれず、そういう意味でも非常に大きな発見であるといえます。

アメリカ航空宇宙局(NASA)は、NANOGravの発見に対して「重力波が宇宙に満ちているという証拠を検出したNANOGravにお祝い申し上げます。宇宙構造における背景重力波は、ブラックホールのような巨大な物体が衝突する前に互いに旋回する時に発生します。この結果から、銀河がどのように進化するかの理解に近づくことができます」とコメントしています。


NANOGravは日本時間の2023年6月30日午前2時から、以下で公開発表イベントを生中継する予定です。この発表イベントでは、これまで15年間で収集したデータセットの分析結果とその結果の解釈が報告されるとのことです。

NANOGrav - 15 Years of Gravitational Wave Research - YouTube

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in サイエンス,   動画, Posted by log1i_yk

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