宇宙で最も明るい天体の1つとされる「クエーサー」とは?
銀河の中心に存在し、物質を勢いよく吹き出しながら1兆個の恒星に匹敵するパワーで明るく輝く天体が「クエーサー」です。時に銀河を破壊するほどの驚くべきパワーを秘めるクエーサーについて、科学系YouTubeチャンネルのKurzgesagtがアニメーションで解説しています。
The Black Hole That Kills Galaxies - YouTube
クエーサーは比較的小さな天体ですが、基本的に銀河の中央に存在しており1兆個分の恒星に匹敵する明るさで輝き、物質を噴き出している天体です。
またクエーサーは現存する最も明るくて強力な天体として知られており、周囲の宇宙を完全に作り替えてしまう可能性が示唆されています。
そんなクエーサーの発見は、1950年代に、宇宙のあちこちから謎の強力な電波が発生していることに天文学者が気づいたことから始まります。電波の発生源は、天体望遠鏡では内部構造が確認できず、電波望遠鏡を用いることで初めて観測が可能な天体であることが判明しました。
この天体は光源が恒星のように点に見える天体であったことから「準恒星状電波源(quasi-stellar radio source)」と名付けられました。
また、「quasi-stellar radio source」という英語を略して「クエーサー(Quasar)」とも呼ばれます。
クエーサーには、点滅する天体や電波を放出する天体、X線や可視光線を放射している天体が存在していることが知られています。
クエーサーのスペクトルは強い赤方偏移を持つことから、宇宙の膨張に伴って光速の30%以上というとてつもないスピードで地球から離れるように見える遠方の天体であることが判明しました。
地球から何十億光年も離れているにもかかわらず、明るくかつ大きく見えるということは、クエーサーの実際の明るさは天の川銀河が放つ明るさの数千倍であるとされています。
天文学者はこれまでに合計100万個以上のクエーサーを発見しており、すべて地球から遠方にあることが判明しました。
また、クエーサーの多くが遠方にあることから、ビッグバンから30億年後という宇宙形成の初期に数のピークを迎えていたと推定されています。
ビッグバンから30億年後という、未成熟な宇宙初期の段階でクエーサーが激しく輝くエネルギーを生み出すことができる要因は「超巨大ブラックホール」にあります。
どの銀河の中心にも存在すると考えられている超巨大ブラックホールに周囲のガスやちりが吸い込まれる際に、これらのガスやちりはブラックホールの周囲を回りながら、円盤を形成します。この円盤は「降着円盤(Accretion Disk)」と呼ばれています。
ブラックホールに吸い込まれる物質は事象の地平面を超える前に光速に近い速度で移動し、とてつもない運動エネルギーとともにブラックホールに吸収されます。ブラックホールに吸い込まれる物質が放出するエネルギーは、核融合で発生するエネルギーの約60倍にも上ると考えられています。
降着円盤内では物質同士の摩擦によって、温度がセ氏数十万度以上に上昇し、物質がプラズマ化します。そのため、降着円盤からはX線や可視光線、電波などのさまざまな電磁波が猛烈な勢いで放出されます。
このように活発に活動する銀河の中心部分は「活動銀河核」と呼ばれ、クエーサーはこの活動銀河核の1種だと考えられています。
現在の宇宙の大きさの約3分の1とされる宇宙の初期では、ガスやちりが現在よりも激しくぶつかり合い、強い摩擦熱が生じていました。そのため、活発なクエーサーが多く形成されていたと考えられています。
特に活発なクエーサーは「ジェット」と呼ばれる数十万光年の大きさにまで成長する巨大な物質のビームを放出することが知られています。
しかし激しいジェットは星の形成に必要なガスを過剰に加熱してしまい、星の形成が停止します。
それだけでなくジェットがガスを銀河の外に押し出すと、クエーサーだけでなく銀河も飢餓状態になり、新しい星の原料を失うことになります。
一方で発生した衝撃波やクエーサーからのジェットによってガスが圧縮され、短期間は新しい星を形成することが可能です。また、ジェットによって押し出されたガスは、また銀河系に入ってくるガスと混ざってリサイクルされます。
しかし一度飢餓状態に陥ったクエーサーは超巨大ブラックホールだけを残し消滅すると考えられています。
またこれまで地球が属する天の川銀河にかつてクエーサーが存在していたかについては明らかにされていません。
しかし銀河の中心に存在する「いて座A*」が太陽の400万倍もの質量に成長していることから、かつてクエーサーがあった可能性が示唆されています。
数十億年後、天の川銀河とアンドロメダ銀河が衝突した際には、中心部のブラックホール同士が合体して、さらなる超巨大ブラックホールが形成されるとともに新たなクエーサーが誕生する可能性が考えられています。
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