サイエンス

「運動習慣がある人は痛みへの耐性が高い」という研究結果、慢性的な痛みの軽減に運動が効果的な可能性も


運動をすることが心身にさまざまな利点をもたらすことは広く知られていますが、運動が痛みの耐性に与える影響についてはそれほど研究されていません。1万人以上の成人を対象にした新たな研究では、「定期的な運動習慣がある人は、そうでない人より痛みの耐性が強い」ことが明らかになりました。

Longitudinal relationships between habitual physical activity and pain tolerance in the general population | PLOS ONE
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0285041


Regular Exercise Could Increase Your Tolerance For Pain : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/regular-exercise-could-increase-your-tolerance-for-pain

Exercise May Help You Improve Pain Tolerance | Time
https://time.com/6283513/exercise-improves-pain-tolerance/

ノルウェーの研究チームは運動習慣が痛みの耐性に及ぼす影響を調べるため、ノルウェー北部の都市・トロムソで行われている大規模な縦断研究で収集された、痛みへの耐性を調査した1万732人分の実験データを取得しました。

この実験は「氷水の入った容器に手を浸してもらい、どれほどの時間痛みに耐えられるのかを測定する」というコールドプレッサーテストであり、7~8年の間隔を空けて2回実施されました。また、被験者はそれぞれの実験時に運動習慣などに関するアンケートにも回答しており、研究チームはこれらのデータを照合して分析を実施したとのこと。


分析の結果、より活動的な人は活動的でない人と比較して、氷水の痛みを我慢できる時間もより長いことが判明。また、1回目と比較して2回目の時点で活動レベルが増えていた人は、1回目より2回目の方が痛みへの耐性が強くなっていたことも示されました。

具体的には、軽いレベルの定期的な運動習慣があると報告した人は、まったく運動しなかった人よりも平均6.7秒長く氷水に手を浸すことができました。定期的に激しい運動をしている人は平均16.3秒まで氷水に手を浸せる時間が増え、2回の測定時にいずれも激しい運動を行う習慣があった人は、平均が20.4秒まで長くなったとのことです。

研究チームは、「普段体を動かさない人よりも、活動的な人、あるいは活動量を増加させた人の方が、高い痛み耐性とより強く関連していました」「痛みへの耐性は総活動量が多いほど増加し、7~8年の間に活動量が増加した人ほど高くなりました。身体活動は経時的な痛みへの耐性を有意に変化させませんでしたが、これはおそらく、加齢が原因で痛み耐性が年々低下していたものと推定されます」と述べています。


今回の研究では、運動レベルはあくまで被験者の自己申告に基づいたものでしたが、実際に被験者が有酸素トレーニングを行った小規模な研究でも同様の結果が示されています。

また、運動習慣が向上させるのは一時的な痛みへの耐性だけでなく、痛みが数カ月~数年間にわたり持続する慢性疼痛(とうつう)の発症リスクを運動が軽減する可能性もあるとのこと。研究チームは、「これらの研究結果から、活動量を増加させることで、薬に頼らずに慢性疼痛を軽減または予防できる可能性があることが分かりました」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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