地震と宇宙線の強度に顕著な相関関係があると判明、地震発生の予測に応用できる可能性も
地震は時として大きな人的被害や経済損失をもたらします。そのため、地震の発生時期や場所を予測する技術が日々研究されています。ポーランド科学アカデミー核物理学研究所(IFJ PAN)が、宇宙線と地震に相関関係があり、宇宙線の強度を観測することで地震を予測できる可能性を示しました。
Observation of large scale precursor correlations between cosmic rays and earthquakes with a periodicity similar to the solar cycle - ScienceDirect
https://doi.org/10.1016/j.jastp.2023.106068
Intriguing correlation between earthquakes an | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/992637
IFJ PANの科学者でCREDOプロジェクトのコーディネーターであるPiotr Homola博士は、「太陽や深宇宙から届く宇宙線と地震に関連性があるという考え方は、一見すると奇妙に思えるかもしれません。しかし、その物理的な基礎は完全に合理的なものです」とコメントしています。
Homola博士の率いる研究チームによれば、液体金属で構成された地球の外核内で起こる渦電流が地球の磁場生成に関与しているとのこと。つまり、地震と関連のある地球の内部の動きが地球の磁場を変化させ、その磁場の変化が宇宙線に影響を与えると研究チームは主張しているわけです。
IFJ PANが2016年から進めていたCREDO(宇宙線超分散観測所)プロジェクトは、高度な科学検出器だけではなく、スマートフォンに搭載されているCMOSセンサーのような小型検出器からのデータも収集し、宇宙線の変化をチェックするというものです。このプロジェクトで収集したデータを分析したところ、宇宙線の強度の変化とマグニチュード4以上の地震の規模に明確な相関関係があることが判明したとのこと。宇宙線の変動は地震の発生時に対して約15日前に観測されたそうで、このことからIFJ PANの研究チームは宇宙線の観測データから地震を予測できる可能性を指摘しています。
Homola博士は「科学の世界では、裏付けとなるデータの統計的信頼度として標準偏差が5に達したとき、発見したと言えるとされています。今回の宇宙線と地震の相関関係は標準偏差が6を超えており、この相関関係が偶然の産物である可能性は10億分の1以下といえます。したがって、私たちは宇宙線と地震に相関関係があると主張する統計的根拠を得たのです」と述べています。
ただし、予想できるのはあくまでも地震が発生するタイミングであり、どこで地震が起こるのかは予測できません。また、予測できるのは宇宙線が発生した時に限られ、地震の規模が地球全体に影響を及ぼす場合であるということに注意が必要です。
また、宇宙線のデータと地震のデータの相関関係には10~11年単位の周期性が見られたとのこと。この周期性は太陽活動の周期と同様です。さらに地球の恒星日である23時間56分4秒に相当する周期で、地震活動や宇宙線の強度が変化していることもわかりました。このことから、宇宙と地震の相関関係は地球内部の問題だけではなく、地球外から届く何らかの要因によって引き起こされている可能性も考えられます。ただし、どういった物理現象でこのような周期性が発生しているのかは記事作成時点では不明です。
Homola博士は「観測された周期性の原因が何であれ、現段階で最も重要なことは、地球上で記録された宇宙線と地震活動との関連性を実証したことです。私たちが確信できることがあるとすれば、今回の観測がまったく新しいエキサイティングな研究機会を指し示すということです」とコメントしました。
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