サイエンス

自分へのご褒美として「不健康な食事」を取ると脳の認知機能に影響が出るとの研究結果


健康のために普段の食生活に気を配っていても、たまには家族や友人と豪勢な食事に舌鼓を打ったり、週末のレジャーに出かけた先で外食を楽しんだりするという人は多いはず。せっかく健康的な食事をしていても、週末などに一時的に食事の質が落ちると認知機能に影響が出てしまう可能性があることが、ラットでの実験で判明しました。

Obesogenic Diet Cycling Produces Graded Effects on Cognition and Microbiota Composition in Rats - Kendig - Molecular Nutrition & Food Research - Wiley Online Library
https://doi.org/10.1002/mnfr.202200809

Diet cycling impacts spatial memory: rat study | UNSW Newsroom
https://newsroom.unsw.edu.au/news/health/diet-cycling-impacts-spatial-memory-rat-study

Occasional 'Cheat' Meals Could Affect The Way Your Brain Functions : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/occasional-cheat-meals-could-affect-the-way-your-brain-functions

これまでの多くの研究により、糖分や脂肪分が多い食事が体重の増加や脳の認知機能低下をまねくことが確かめられていますが、健康な食事と不健康な食事を交互に摂取することの影響はほとんどわかっていません。


そこで、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のマーガレット・モリス教授らの研究チームは、ラットに健康的な「普通のエサ」と、カフェテリアで提供される食事のような高脂肪かつ高糖分の「カフェ食」を交互に与えて、体重や認知機能テストの成績を比較する実験を行いました。

以下は、12匹ずつグループ分けされたラットの食事メニューのイメージで、緑色が健康的な「普通のエサ」を食べる期間、ピンク色が不健康な「カフェ食」を食べる期間を示しています。実験グループのラットが「カフェ食」を食べる合計日数は同じですが、スケジュールは短期間で交互に食べるグループと、長期間「カフェ食」を食べ続けるグループ、その中間のグループに分けられました。一方、対照グループのラットはずっと「普通のエサ」を食べ続けました。


研究チームが各グループのラットの体重を量った結果、カフェ食を食べたラットは対照グループのラットより体重が増加していました。食べた量も調べたところ、カフェ食を食べたラットは舌が肥えてしまったのか、明らかにその後に食べる健康的なエサの量が減っていましたが、それにもかかわらず体重は増えてしまったとのこと。

さらに、物体の位置を認識して記憶する認知機能テストの結果にも影響が出ました。カフェ食を食べる実験サイクルが始まると、全てのグループで実験開始時よりテストの成績が悪化。16日連続でカフェ食を食べたグループ(下図の16CAF:4CHOW)で最も大きく認知機能が低下していましたが、カフェ食を2日という短いサイクルで食べたグループ(2CAF:4CHOW)でも悪化が認められました。


不健康な食事を食べると、スケジュールにかかわらず体重が増加した一方で、認知機能はスケジュールによって差が見られたということは、体重と認知機能は直接関係していない可能性が高いということを意味しています。

不健康な食事が認知機能を低下させた理由について、研究チームは「腸内細菌叢(そう)」が原因のひとつである可能性が高いと考えています。

研究チームが、各グループのラットのフンを調べたところ、不健康な食事をしたラットは肥満に関連する悪玉菌のレベルが高く、逆に体重のコントロールに関連する善玉菌のレベルは低くなっていました。この影響は、不健康な食事のサイクルが長いラット、つまりカフェ食を連続して食べ続けたラットで特に深刻でした。

モリス教授は「腸と脳は非常に関係が深いことがわかっています。そのため、食事によって変化した腸内細菌叢が私たちの脳や行動に影響を与えているのかもしれません」と話しました。


また、不健康な食事が体内の炎症を助長し、これが認知機能の低下につながった可能性もあります。「人間では、炎症を増加させる食事は脳機能にとって有益ではないおそれがあることが判明しています」とモリス教授は述べています。

不健康な食事が脳に与える影響は、炎症を発生させるだけでなく、脳の構造にまで及ぶかもしれません。2021年に発表された研究によると、高脂肪・高糖分の食事は学習や記憶といった機能に不可欠な部位である海馬を縮小させ、機能も低下させることが示されたとのこと。


今回の研究結果は、あくまでラットを観察した実験によるものであるため、健康な食事と不健康な食事のサイクルがラットの認知機能に影響を与えるメカニズムや、それが人間にどの程度当てはまるのかを確認するには、さらなる研究が必要です。

その上でモリス教授は、重要なのは「微妙な食習慣の変化でさえ、思考力や記憶力に影響を与える可能性があること」だと指摘しています。これはつまり、健康的な食事を規則正しく、できるだけ長く続けることが認知機能を維持するのに大切だということです。

「この研究は、高齢になっても脳の健康を維持するにはどうしたらいいかを考える上で重要になってくると思います。健康的な食事、つまり地中海料理のように果物や野菜、良質なタンパク質が多く、バラエティに富んでいて、飽和脂肪が少ない食事を続けることができれば、認知力を維持できる可能性が高くなります」とモリス教授は結論付けました。

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in サイエンス,   , Posted by log1l_ks

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