サイエンス

ジャンクフードやお菓子などの「超加工食品」は認知機能の低下に関与しているのか?


超加工食品」とは塩分や糖分、脂肪分、添加物などが多く含まれている工業的に生産された食品を指す言葉で、ソフトドリンクやスナック、ジャンクフード、レトルト食品などが該当します。そんな超加工食品の摂取と認知機能の低下の関連を示唆する研究結果が複数報告されているとのことで、フロリダ大学で神経科学の准教授を務めるサラ・バーク氏が解説しています。

Association Between Consumption of Ultraprocessed Foods and Cognitive Decline | Dementia and Cognitive Impairment | JAMA Neurology | JAMA Network
https://doi.org/10.1001/jamaneurol.2022.4397

Association of Ultraprocessed Food Consumption With Risk of Dementia | Neurology
https://doi.org/10.1212/WNL.0000000000200871

Ultra-processed foods – like cookies, chips, frozen meals and fast food – may contribute to cognitive decline
https://theconversation.com/ultra-processed-foods-like-cookies-chips-frozen-meals-and-fast-food-may-contribute-to-cognitive-decline-196560

バーク氏は、超加工食品は未加工または加工の少ない食品と比較して栄養素と食物繊維が少なく、糖分・塩分・脂肪分などが多い傾向にあると指摘。超加工食品の例としては市販されているソーダ・スナック菓子・冷凍食品・アルコール飲料・ファストフードなどがあるほか、一見すると健康に良さそうな「全粒粉パン」といったものでも、工場で加工・包装されたものは添加物や防腐剤が多く含まれており超加工食品と見なされるとのこと。

特定の食品が超加工食品なのかどうかを見分けるには、「原材料名に記載されている原料すべてが一般家庭の台所で手に入るかどうか」を考えるといいとバーク氏は述べています。たとえば、防腐剤や香料、人工甘味料といったものはほとんどの一般家庭に存在しておらず、これらを含む食品は大抵が超加工食品と見なせます。一方、缶詰の野菜・乾燥パスタ・冷凍フルーツなどの食品は確かに人間の手で加工されているものの、自然食品の特徴も多く残っているため超加工食品とは呼ばれません。


2022年12月に発表された研究では、ブラジルに住む1万人以上の被験者に「過去12カ月間でどのような食事をとったか」を報告してもらい、その後8年間にわたり認知機能を評価しました。その結果、研究開始時点でより多くの超加工食品を食べると回答した人々は、超加工食品をあまり摂取しない人々と比較して、わずかに認知機能が低下していることが示されました。しかし、この差は実験群の間におけるわずかなものであり、超加工食品の大量消費が個人レベルでどの程度の差をもたらすのかは明らかでないとのこと。

また、2022年7月に発表された別の研究では、イギリスに住む7万2000人を対象に超加工食品を食べることと認知症との関連性を調査しました。超加工食品を多く食べるグループでは、10年間の調査期間中に120人中1人の割合で認知症と診断された一方で、超加工食品をほとんどまたはまったく食べないグループは170人中1人の割合でした。


これらの研究結果は超加工食品の摂取が認知機能に悪影響を与える可能性を示唆していますが、あくまで相関関係を見つけただけという点に注意が必要です。また、食品加工の種類と程度に基づいて超加工食品かどうかを判定するNOVA分類についても、一部の栄養学者は「食品加工の明確な定義が不足している」と批判しているとのこと。

さらに問題となるのが、超加工食品は一般的に食物繊維やその他の栄養素が不足しており、糖分・塩分・脂肪分が多い傾向があるため、潜在的な健康リスクを及ぼすのは加工の有無ではなく栄養成分である可能性も残されている点です。個々の食品が人体に及ぼす影響を明らかにするにはさらなる研究が必要であり、ラットを標的にした実験などに期待が集まっているとバーク氏は述べています。


超加工食品と認知機能の関係については不明な点もありますが、地中海式ダイエットケトジェニックダイエットなどのより健康的な食事に切り替えることで、脳機能を維持できるという研究結果も報告されています。地中海式ダイエットは植物ベースの食品やナッツ類などが豊富で、糖質の摂取を控えるケトジェニックダイエットも主な食物繊維は野菜であり、いずれも砂糖の摂取量が少ない点が特徴です。

バーク氏は、これらの食生活は有害な炎症を減らすことにより、認知機能を改善させるために役立つ可能性があると主張しています。炎症はケガや病原菌の感染に対する正常な反応であるものの、慢性的な炎症は脳に有害な影響を及ぼす疑いがあり、過剰な砂糖や脂肪は慢性炎症の一因となる可能性があるとのこと。

また、地中海式ダイエットケトジェニックダイエットは人間の腸内細菌叢(そう)を変化させることも示されており、腸と脳における双方向的な関連(脳腸相関)に影響して認知機能の改善をもたらす可能性もあるとのことです。

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in サイエンス,   , Posted by log1h_ik

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