ハードウェア

Intelが12量子ビットの量子コンピューターチップ「Tunnel Fall」を発表


Intelが2023年6月15日に量子コンピューター研究用チップ「Tunnel Fall」を発表しました。Tunnel Fallを用いることで、研究者は大規模な実験設備を用意せずとも量子コンピューターの研究に取り組むことができます。

Intel’s New Chip to Advance Silicon Spin Qubit Research for Quantum Computing
https://www.intel.com/content/www/us/en/newsroom/news/quantum-computing-chip-to-advance-research.html#gs.0rodgr

Intel Introduces Tunnel Falls Silicon Qubit Research Chip - YouTube


量子コンピューターは現行のコンピューターの性能を大きく上回る性能を発揮できると期待されており、世界中で実用化に向けた研究開発が進んでいます。しかし、量子コンピューターの研究には大規模な実験設備が必要であり、予算の少ない研究機関やチームの参入が難しいという問題も存在しています。そこで、Intelは大規模な設備がなくとも量子コンピューターの研究に取り組めるチップとしてTunnel Fallを開発しました。


Tunnel Fallは12量子ビット(キュービット)の量子コンピューターチップで、IntelがCPUの生産で培ってきた極端紫外線リソグラフィ(EUV)などの技術を用いて生産されているとのこと。また、Tunnel Fallの製造ラインには既存のCPU製造ラインと類似したものを用いており、シリコンウェハー全体で95%という高い歩留まり率を実現しています。


Intelはアメリカ陸軍研究所が主導する量子コンピューター研究支援プログラム「Qubits for Computing Foundry (QCF)」の一環としてTunnel Fallを複数の研究機関に提供しています。記事作成時点では、サンディア国立研究所やロチェスター大学、ウィスコンシン大学マディソン校にTunnel Fallを提供しており、今後も提供範囲を拡大予定とのこと。サンディア国立研究所のドワイト・ルーマン博士は「Tunnel Fallは異なる量子ビット符号化の比較や新しい量子ビット動作モードの開発を可能とする柔軟なプラットフォームです」「Tunnel Fallの信頼性により、サンディア国立研究所は量子コンピューターの開発に携わる人員を新たに迎え入れ、迅速に訓練できるようになります」と述べ、Tunnel Fallの導入を歓迎しています。

なお、IntelはTunnel Fallに続く次世代量子コンピューターチップの開発を進めており、2024年中に次世代チップをリリース予定とのこと。また、Intelは将来的に商用量子コンピューティングシステムを構築する予定としています。

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in ハードウェア, Posted by log1o_hf

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