サイエンス

量子コンピューターを使って情報が通過可能な「理論上のワームホール」作成に成功


何万光年もの距離を一瞬で移動可能だという「ワームホール」に相当するものを、量子コンピューターを用いて研究者らが作ることに成功したことが報告されました。

Traversable wormhole dynamics on a quantum processor | Nature
https://doi.org/10.1038/s41586-022-05424-3


Google Researchers Create Traversable Holographic Wormhole Using Quantum Computer In New Study
https://www.vice.com/en/article/bvmaaw/google-researchers-create-traversable-holographic-wormhole-using-quantum-computer-in-new-study

Physicists Create Theoretical Wormhole Using Quantum Computer
https://scitechdaily.com/physicists-create-theoretical-wormhole-using-quantum-computer/

「ワームホール」の概念は1928年に物理学者ヘルマン・ワイルが提唱。名前は1957年、物理学者のジョン・ホイーラーによって名付けられました。このときホイーラーは空間と空間を結ぶチューブの図を示しており、SF作品では「ワームホールを利用して遠く離れた地点まで一瞬で移動する」という描写が登場することがあります。


GoogleやMIT、カリフォルニア工科大学、ハーバード大学の科学者チームは、量子コンピューターを用いて理論上のワームホールの振る舞いを研究する量子実験を行い、ワームホールと量子物理学との関連性を調査しました。

この調査において研究チームは、量子コンピューターの間に量子もつれ状態を作って、そこを通るようにメッセージを送信しました。メッセージはシステムに入るときはスクランブル状態でしたが、反対側ではエンタングルメントによってスクランブル解除状態でした。つまり、複数の量子ビットのもつれが、物理的なワームホールの代用品になったということで、研究チームは「情報が通過できるホログラフィック・ワームホールの作成に成功した」と報告しています。

研究内容そのものは革新的な発見ではなく、「古典的なコンピューターでも同様のことができる」とのことですが、「量子コンピューターを用いれば、量子重力のような複雑なアイデアを探求できる」ということを証明した点が重要だとのこと。研究に携わったマリア・スピロプロ教授は、現代の量子コンピューターが課題にまだ対応できていなくても、今後開発を継続することで、将来の発見で大きな役割を果たすことができると語りました。

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in サイエンス, Posted by logc_nt

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