サイエンス

ワームホールを創り出す方法が考案される

By KELLEPICS

何百光年もの離れた距離を一瞬で移動するという空想上の技術「ワームホール」を現実に創り出す方法が新たに考案されました。発表された手法によると、必要な材料は「ブラックホール数個と、無限に長い宇宙ひも数本」だけとのことです。

[1908.03273] Traversable Asymptotically Flat Wormholes with Short Transit Times
https://arxiv.org/abs/1908.03273

Physicists Just Released Step-by-Step Instructions for Building a Wormhole | Live Science
https://www.livescience.com/building-a-wormhole-with-cosmic-strings.html

「ワームホール」は、何でも呑み込む「ブラックホール」と何でも吐き出す「ホワイトホール」を対にした空想上の存在です。ブラックホールは現実の存在ですが、ホワイトホールはアインシュタイン方程式の解の1つとして考えられている理論上の存在で、「そもそもホワイトホールがあるのか」や「ホワイトホールが存在したとしてブラックホールと対になりえるのか」はいまだ議論の対象です。

SF作品によく登場する「ワームホール」とは一体どういうものなのか? - GIGAZINE


研究グループは「ホワイトホールは存在しない」として、「電荷を持ち得る」というブラックホールの特性を利用したワームホールの作成法を考案。電荷を帯びたブラックホールは、点であるはずの特異点が引き延ばされてゆがみ、反対の電荷に帯電したブラックホールと対になってつながって、ワームホールが出来上がるとのこと。

しかし、この手法にも問題点が2つ残されています。1つ目の問題点は、正と負に帯電したブラックホールがお互いに引き寄せられて合体すると、正味の電荷量がゼロになったワームホールとして機能しないブラックホールが完成してしまうということ。したがって、ブラックホールの合体を阻止するためには、帯電したブラックホールを遠く離れた空間上に固定する必要があります。

そのため、研究チームは「宇宙ひも」を使ってブラックホールの合体を阻止する方法を編み出しました。宇宙ひもには「ちぎれない」という特性があると考えられているため、無限に長い宇宙ひもの一端をブラックホールに呑み込ませて、もう片方の端を無限に伸ばすと宇宙ひもの張力によって帯電したブラックホール同士が綱引きのような関係になり、相対位置が固定されるとのこと。宇宙ひもは存在が確認されていない理論上の存在だという問題が残されますが、無限に長い宇宙ひもを使えばブラックホール同士の合体は阻止できるわけです。

By DanzelScarleth

もう1つの問題とは、「ワームホールは不安定」というもので、ワームホールは光子1個を通過させただけでも崩壊するほど不安定だそう。しかし、研究チームによると、この問題も宇宙ひもが解決してくれるとのこと。ブラックホールを固定している宇宙ひもとは別の宇宙ひもをワームホールに通して「輪」を作ります。

輪になった宇宙ひもは小刻みに揺れ、時空の構造をかき混ぜて輪の周囲に負のエネルギーを与えるとのこと。この負のエネルギーは負の質量を持った物質と同じ働きをするため、ワームホールを安定化させる作用があるそうです。

Live Scienceで今回のワームホールの作成法について解説したオハイオ州立大学の天体物理学者のポール・サッター氏は「今回の論文で示された『ワームホールの作り方』は少し込み入っているように思えますが、ワームホールを段階的に組み上げる方法についてまとめ上げたものです。ワームホールを安定化させるような宇宙ひもの固有振動数の発見や、時間の経過とともにワームホールが最終的に崩壊してしまうなどの問題点は残されていますが、実際にこの方法で作成されたワームホールは物質を転送できる可能性があります」と述べた後、「しかしまあ、まずは宇宙ひもの発見からですね」とコメントしました。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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