サイエンス

「ワームホールは存在するが宇宙旅行に応用するには遅すぎる」という主張

by deselect

普通なら何万年もかかるほど離れた2地点を一瞬で移動できる「ワームホール」について、ハーバード大学の物理学者であるDaniel Jafferis氏が、2019年4月13日にコロラド州で開催されたアメリカ物理学会のApril Meeting 2019で発表を行いました。Jafferis氏は「ワームホールは存在する」と主張しましたが、SFに描かれるような銀河間移動に使えるほど実用的ではないとも述べています。

APS -APS April Meeting 2019 - Event - Traversable wormholes
http://meetings.aps.org/Meeting/APR19/Session/B02.2


Wormhole travel could be real, but would also be really slow - CNET
https://www.cnet.com/news/wormhole-travel-could-be-real-but-would-also-be-really-slow/#comments


ワームホール理論の歴史は古く、ドイツの数学者・物理学者であるヘルマン・ワイルが1928年にその概念を提唱しています。1957年にアメリカの物理学者であるジョン・ホイーラーが、空間と空間を結ぶチューブという図と共に「ワームホール」と命名しました。ワームホールの存在は実証されていないものの、アインシュタインの一般相対性理論に基づいて存在が提唱される「ホワイトホール」はブラックホールとワームホールで結ばれているという説もあります。

by JohnsonMartin

本来であれば何万年もかかってしまうような距離を、文字通り時空を超えて移動できてしまうワームホールはフィクションの世界でもしばしば登場します。例えば、映画「コンタクト」では異星人からのメッセージを元に作り上げた装置でワームホールを通過し、主人公は地球から約25光年離れたベガにたどり着きます。また、アニメ「真ゲッターロボ 世界最後の日」では、高速で放り投げたゲッタートマホークにゲッタービームを照射することでなぜか地球から木星までをつなぐワームホールが開く場面が描かれました。

Jafferis氏の研究内容は宇宙旅行を目的としたものではなく、量子力学に関する理論。Jafferis氏は、量子レベルでつながった2つのブラックホールが光の通過できるワームホールとして機能する可能性を指摘しています。この可能性は、遠く離れた場所からブラックホールを利用して光と情報を取り出せることを意味しています。

by Gerd Altmann

「外から見れば、ワームホールを通過するということは絡み合ったブラックホールを利用した量子テレポーテーションに相当します」とJafferis氏。一方で、Jafferis氏が提唱するものはあくまでも光が通過するワームホールであることから、「私たちがワームホールを通り抜けるには、直接現地に向かうよりも時間がかかってしまうため、宇宙旅行にはあまり役に立ちません」と論じました。

Jafferis氏は「この研究の真の意味はブラックホール情報の問題と重力と量子力学の関係に関連しています」と述べ、ワームホールを構築する方法を研究することが量子重力理論の発展に寄与すると説きました。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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