真っ二つにすると余計に増殖する恐るべき外来種「ハンマーヘッドワーム」による被害がアメリカで拡大中
by budak
コブハクチョウやビワハゴロモなどの外来種の流入が進んでいるアメリカでは、テキサス州においてプラナリアの一種であるコウガイビル、通称ハンマーヘッドワームの生息域が拡大しています。コウガイビルは作物の生育を促進する役割を持つミミズを捕食することなどから有害な外来種として捉えられています。
Meet Your New Nightmare, the Hammerhead Worm
https://www.texasmonthly.com/travel/meet-nightmare-hammerhead-worm/
頭の形状がハンマーに似ていることから「ハンマーヘッドワーム」と呼ばれることもあるコウガイビルは本来東南アジアに生息しており、1900年代初頭に植物の輸入に伴ってアメリカに流入したと考えられています。コウガイビルの大きさは平均6インチ(約15cm)で、最大で1フィート(約30cm)にまで成長するとされています。また、テキサス州外来種研究所のアシュリー・モーガン・オルベラ氏は「コウガイビルは最初にテキサス州東部に流入し、その後乾燥した地域を除くテキサス州全土に広がっています」と報告しています。
by gailhampshire
テキサス州のコウガイビルは「Bipalium kewense」と「Bipalium vagum」の2種が生息していることが知られています。「Bipalium vagum」は「Bipalium kewense」と比較すると小さく、最大で約2インチ(約5cm)までしか成長しないとされています。
一方で「Bipalium kewense」は、土壌を豊かな環境に保つのに重要な役割を果たすミミズを捕食するため、危険な外来種と捉えられています。オルベラ氏は「ミミズが土壌からいなくなると、植物は成長に必要な栄養素を得ることができません」と述べ、「コウガイビルは庭や畑での作物の生育に大きな悪影響を与える可能性があります」と報告しています。
また、コウガイビルはクサフグなどの生物が持つ神経毒のテトロドトキシンを分泌する唯一の陸生無脊椎動物であることが知られており、人間が素手でコウガイビルに触れた場合、手のしびれなどの症状を引き起こす危険性が指摘されています。
また、オルベラ氏によると、犬や猫などのペットが誤ってコウガイビルを食べてしまった場合、死ぬことはないものの、数日にわたる体調不良に陥る可能性があるとのこと。
コウガイビルを発見した場合、ただちに殺処分することが重要ですが、シャベルなどでコウガイビルをたたき切ることは推奨されません。プラナリアの一種であるコウガイビルは再生能力に非常に優れており、1匹のコウガイビルを2つに切断した場合、2匹のコウガイビルに増殖してしまいます。そのため、最適な処理方法としてオルベラ氏は「ナプキンや手袋を装着して手の防護を行った上で、ジップロックなどの密閉性の高い袋にコウガイビルを入れ、酢や塩をかけて殺し、そのまま袋ごと処分する方法が最適です」と述べています。
by Martin LaBar
湿度が高い場所を好むコウガイビルは雨が降った後に地表に現れる傾向が高く、テキサス州においては特に湿度が高かった2023年春の発見情報がこれまでよりも増加しています。また、オルベラ氏は「植木鉢などの輸送を行った際にコウガイビルが隠れている可能性があるので、新しい植物を自宅に持ち込む際には特に注意が必要です」と警告しています。
テキサス州外来種研究所は州内でのコウガイビルの生息範囲を把握するために、住民から随時コウガイビルの目撃情報を募集しています。
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