サイエンス

乾燥機の中の放射線量が高くなる理由とは?


放射線は目に見えませんが、ガイガーカウンターなどのデバイスを用いることで身の回りの放射線の量を測定できます。物理学関連のQ&Aサイト「Physics Stack Exchange」には「衣類乾燥機の中の線量を測定したら、家の平均的な線量より高かった」という報告が寄せられています。

Why is my dryer radioactive? - Physics Stack Exchange
https://physics.stackexchange.com/questions/764460/


乾燥機内の放射線量の多さについて報告したのはPhysics Stack ExchangeのユーザーであるMarsroverr氏です。Marsroverr氏はガイガーカウンターを入手して自宅で放射線量を測定していました。その結果、自宅の平均的な放射線量は0.09~0.11マイクロシーベルト/時だったのに対して、「衣類を乾かし終わった直後で、まだ衣類が残っている乾燥機の中」は0.16~0.18マイクロシーベルト毎時という高めの放射線量を記録しました。

Marsroverr氏は乾燥機内の放射線量が高い理由について、自然界に広く存在している放射性物質「ラドン」が関係しているのではないかと推測したものの、それ以上は考察を深められなかったとのこと。そこで、Marsroverr氏はPhysics Stack Exchangeに質問を投稿しました。

記事作成時点で最も多くの肯定的評価を集めている回答は、アメリカのロスアラモス中性子科学センターで働いた経験があるというrob氏によるものです。ラドンは花こう岩やコンクリートに含まれているため、一般的な家屋の屋内にはラドンが存在しています。rob氏によると、ラドンは静電気を帯びた物体に引き寄せられる性質があるとのこと。このため、乾燥機の中で静電気を帯びた衣類にラドンが引きつけられ、「乾燥機の中の放射線量が高くなる」という現象が発生したというわけです。


ラドンが静電気に引きつけられるという特徴は科学実験にも活用されており、日本でも大気中のラドンを収集するために静電気を用いた例があります。

静電気捕集法による天然ラドンの核種同定
https://doi.org/10.11484/jaea-technology-2008-052


なお、rob氏はロスアラモス中性子科学センターで働いていた際に「放射線量の基準値をオーバーする」という経験をしたとのこと。基準値オーバーの対応にあたった技術者は「rob氏がプラスチック製の椅子に座って過ごしていた」という点に着目し、「椅子とズボンがこすれてズボンが静電気を帯びた結果、ズボンが放射性物質を引きつけてしまった」と結論付けたとのことです。

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in サイエンス, Posted by log1o_hf

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