オンラインカジノが金銭を支払い子育てブロガーに「子どもの世話のストレス解消法」としてオンラインカジノを推奨させていたことが発覚
イギリスの大手オンラインカジノのひとつが、自社サービスへのリンクを貼ったママブロガーに報酬を支払っていたことが明らかになりました。メンタルヘルスや依存症の専門家からは、非難の声が上がっています。
Gambling firm-paid-mothers to its online games | Gambling | The Guardian
https://www.theguardian.com/society/2023/may/14/gambling-firm-allegedly-paid-blogs-to-link-new-mothers-to-its-online-games
問題になっているのはイギリスに拠点を置くオンラインカジノのCoral。Coralは新生児のお世話で溜まるストレスを軽減するためのヒントをまとめるブログを投稿するママブロガーに、ヒントのひとつとして「オンラインカジノ」を推奨させ、記事に同社のサービスへのリンクを埋め込ませるという契約を結びました。
この契約を結んだママブロガーは、自身のブログで離乳食のレシピなどと一緒に「Coralでオンラインビンゴをプレイするには、ここをクリックしてください。オンラインカジノで遊んで一時的に育児から離れることは有益です」と記し、新米ママにオンラインカジノが有益であると主張しています。
別の子育てブログでは、「簡単に習得でき、お得な賞金も得られる豪華な方法」としてオンラインカジノでルーレットに興じることが推奨されているそうです。
さらに別の子育てブログでは、オンラインカジノやビンゴを推奨する項目があったり、Coralへのリンクが含まれていたりするケースも散見されます。
イギリス国内の広告が規則に則っているかを監督する広告基準局(ASA)のガイドラインによると、ギャンブル関連の広告では孤独や憂うつを和らげる方法として賭博を提示することは「社会的に無責任」な行為であるとして、禁止されています。
また、ASAのガイドラインでは賭博を「経済的懸念の解決策」として提示することも禁じられています。つまり、上記の2件の事例はいずれもASAのガイドラインに抵触しているというわけ。
情報筋によると、Coralは自社のオンラインカジノへのリンクを掲載するためにママブロガーに金銭を支払っていた模様。大手ギャンブル企業は近年女性をターゲットとすることで、顧客基盤の拡大を図っています。イギリスメディアのThe Guardianは、女性に対してオンラインカジノの広告を出す理由について、「この種のゲームは通常、スポーツ賭博よりも女性に人気があるため」と報じています。
Coralの運営元であるEntainによると、CoralへのURLを含む記事は、2018年に同社を買収する前の2014年から2016年にかけて掲載されていたものだそうです。なお、EntainはCoralへのリンクを掲載しているブログ記事を可能な限り早く削除すると約束しています。
Entainの広報担当者は、「CoralもEntainのどのブランドも、アフィリエイトマーケティングを通じて若い母親やその他の潜在的に弱い立場にあるグループを積極的にターゲットにすることはありません」「第三者が当社のゲームサイトにリンクすることを防ぐことができませんでした」とThe Guardianにコメントしています。
なお、The GuardianにCoralがママブロガーに金銭を支払っていたとリークした人物は、ブロガーと企業が宣伝契約を結ぶことを仲介する企業に勤めていたそうです。この人物によると、ママブロガーが書いた記事をCoralは掲載前にチェックしていたとも語っています。
Entainは「我々は事例として挙げられたどのママブログにも支払いを行っていません」と言及。ただし、EntainがCoralを買収する以前にそういった契約が結ばれていたか否かについては言及していません。
イギリスの国民保健サービス(NHS)でメンタルヘルス部門の部長を務めるクレア・マードック氏は、「ギャンブル企業がストレスや睡眠不足、特に脆弱な問題に苦しんでいる可能性がある時期に、新米のシングルマザーをターゲットにすることは皮肉なことです」と言及。さらに、マードック氏は今回明らかになったCoralの事例について、「数十億ドル(数千億円)規模の市場を持つギャンブル業界による略奪的な行為の事例のひとつであり、NHSは新米ママへのメンタルヘルス支援にこれまで以上に投資を行っていきます」と言及しています。
NHSがギャンブル障害に対する初の治療施設として立ち上げたイギリス国立ギャンブルクリニックの創設者でありディレクターでもあるヘンリエッタ・ボーデン・ジョーンズ氏は、「離乳食のレシピに関するページにビンゴ広告を埋め込むことで、新米ママを直接ターゲットにする行為は非常に憂慮すべきことであり、非難されるべきことでもあります」と語りました。
ジョーンズ氏は「ギャンブルは心理的苦痛から逃れる方法ではなく、ブログに記載されているオンラインカジノを推奨するメッセージは、これまでに経験したことがないほど長い期間、ひとりで家にいるかもしれない人々の状況を利用した悪質なものです」「これらはすべて白日の下にさらされることがないギャンブル広告のひとつであり、初めてギャンブルに触れる人にとっては『オンラインカジノを奨励するもの』であることがあまり明らかではないかもしれません」とも指摘しています。
記事に含まれるリンクが広告契約によるものであることを明らかにしていたブログはわずか1件のみだったそうです。情報筋によると、Coralの広告戦略は「ブログにCoralのリンクを挿入させることで、Google検索でCoralが上位に表示されるようにすること」にあった模様。なお、Entainは「広告戦略は検索エンジンの表示順に何の影響もおよぼさなかった」とコメントしています。
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