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モルモン教の「巨額資産隠し」を内部告発者が暴露、信者から集めた金を貧者救済ではなく「関連会社の救済」に充てていたとの証言


2023年2月、アメリカ証券取引委員会は末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)と、その投資運用部門のエンサイン・ピーク・アドバイザーズが株式投資に関し適切な開示を行わなかったと認定し、500万ドル(約6億8000万円)の罰金支払いを命じました。この事件を契機に教会を後にしたというモルモン教徒の資産運営担当者が、海外メディアのCBS Newsのインタビューに応えて事件の一部始終を語っています。

Mormon blows whistle on church's alleged "clandestine hedge fund" | 60 Minutes - CBS News
https://www.cbsnews.com/news/mormon-whistleblower-ensign-peak-church-investment-fund-allegations-60-minutes-transcript-2023-05-14/

Mormon whistleblower: Church’s investment firm masquerades as charity | 60 Minutes - YouTube


今回CBS Newsの取材に応じたのは、エンサイン・ピークの元マネージャーであるデビッド・ニールセン氏です。もともと熱心なモルモン教徒であったニールセン氏は、以前はアメリカのウォール街で活躍していましたが、2009年に教会の本部にほど近い場所に拠点を構えた教会の関連会社で働かないかとの勧誘を受けました。

ニールセン氏は、金融街を後にした理由について「私は慈善事業のために働くつもりでした。私のスキルがあれば、チャリティーの設立を手伝って善行ができると思ったのです」と振り返っています。


しかし、ニールセン氏の志とは裏腹に、教会に入ってきたお金が慈善事業のために教会から出ていくことはありませんでした。

エンサイン・ピークに入社したニールセン氏は、教会の投資部門が慈善事業を装った帳簿や明細書を作成し、資金を蓄えて教会の会員を欺いている実態を目の当たりしたことで、思い悩むようになります。

ニールセン氏によると、教会の主な収入は会員からの寄付金とのこと。収入の10%を教会に納める「什一(じゅういち)献金」という習慣により、教会は1700万人の会員から年間推定70億ドル(約9500億円)の資金を集めています。


これらの献金はモルモン教の建物を建てたり、光熱費を支払ったり、教会の事業を運営するために使われ、残った約10億ドル(約1360億円)はエンサイン・ピークの積立金として投資に回されます。なお、エンサイン・ピークは非営利団体として登録されているため資産運用はすべて非課税です。

ニールセン氏が働いていた9年の間に、エンサイン・ピークの資産はアメリカの宗教基金としては最大の1000億ドル(約13兆5900億円)に膨れ上がりました。これは、ハーバード大学への寄付金やビル&メリンダ・ゲイツ財団の資産の2倍です。


こうして教会は世界のさまざまな問題を解決できるような潤沢な資金を手にしましたが、やったことと言えば銀行口座を増やしただけでした。

上司から説明された資金の使途について、ニールセン氏は「答えは決まって『再臨』でした。冗談のように聞こえるかもしれませんが、多くの社員が心の底では本当にそうだと信じていたように思います」と話します。

「再臨」とは、昇天したイエス・キリストが、世界の終わりの日に再び地上に降りてくることを指すキリスト教神学の用語です。

教会は積立金について、内部には終末に備えるための資金だと説き、外向きには「万が一のための基金」と説明していました。しかしニールセン氏は、2013年の会議で共有された文書で、教会が所有する土地に建設中のショッピングモールに14億ドル(約1900億円)の資金が使われたり、教会が所有する営利の保険会社であるBeneficial Lifeの救済のために6億ドル(約815億円)が流用されたりしたことを知ります。


さらに、ニールセン氏に追い打ちをかけたのは、2018年に「モルモンリークス」というサイトが暴露した、巨額の資産を保有するダミー会社の存在です。

教会の指導部しか知りませんでしたが、ペーパーカンパニーの名義になっていた何十億ドルもの株式や債券は、実際にはエンサイン・ピークが管理していた資産でした。


暴露サイトの出現を受けて、ニールセン氏の会社は緊急会議を開きました。そして、その場で最高投資責任者は「もしこれらの証券を教会の名義で報告したら、会社が『不当な注目』を集めることになる」と発言しました。

会議が終わった後、「不当な注目とは何のことですか」と詰め寄ったニールセン氏に、最高投資責任者は「税制上の優遇措置を受けられなくなるだろう」と答えました。

その答えを聞いた時の心境を、ニールセン氏は「その瞬間、私は自分が間違った場所にいることを知りました」と吐露しています。


その後、2019年にエンサイン・ピークを後にしたニールセン氏は、非営利団体として税金が免除されている団体が営利企業に資金を移したとの実態について、当局に内部告発を行いました。

そして、調査を進めていたSECは2023年2月に、教会とエンサイン・ピークが有価証券についての正確な報告を怠っていたと発表しました。


SECによると、教会は320億ドル(約4兆3500億円)もの資金を20年近くにわたって隠すために「多大な労力を費やしていた」とのこと。具体的には、13のペーパーカンパニーを設立し、登記上の住所に合った電話番号まで割り振って、規制当局のチェックに備えていました。

教会の財政を監督する3人のビショップのうちの1人であるクリストファー・ワッデル氏は、ニールセン氏の話は「正しくないどころか、完全に間違っています」と主張しています。


ワッデル氏によると、教会にペーパーカンパニーの設立を助言したのは教会の弁護士だったとのこと。

ワッデル氏は、2008年の金融危機により経営難に陥ったBeneficial Life救済に使われた資金は、ほとんど返済されていると話しました。また、ニールセン氏が指摘したショッピングモールへの資金は「救済」ではなく「投資」だったと強調しています。

一方、2022年だけで人道支援に10億ドル以上を費やしたというワッデル氏の主張に対し、ニールセン氏は「私が知る限り、エンサイン・ピークの資金が慈善事業に使われたことは一度もありませんでした」と話しました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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