サイエンス

サルの脳とコンピューターを接続してロボットアームを動かす実験に成功したと中国人科学者チームが発表


中国の首都医科大学宣武医院の脳神経外科チームが、サルを使った介入型ブレインコンピューターインターフェース(BCI)の実験に成功したと、中国国営メディアが2023年5月5日夜に報じました。チームによれば、サルへの介入型BCIの実験が成功したのは世界で初めてだとのことです。

全球首例非人灵长类动物介入式脑机接口试验取得成功,我国脑机接口技术再获突破!_北京日报网
https://news.bjd.com.cn//2023/05/06/10421575.shtml


China completes world's first interventional BCI experiment on non-human primates - Chinadaily.com.cn
https://www.chinadaily.com.cn/a/202305/06/WS6455aaaaa310b6054fad160c.html


China syncs monkey brain with a computer in a 'world first' experiment
https://interestingengineering.com/science/china-syncs-monkey-brain-with-a-computer


BCIは、脳活動を特殊なチップや機械で読み取ることで、コンピューターを操作可能にします。近年BCIに関する研究は意欲的に進められており、特にイーロン・マスク氏が立ち上げたスタートアップ「Neuralink」は「人間の脳とAIの融合」を目指し、すでに脳にチップを埋め込んだサルが思考だけでゲームを操作する映像を公開しています。

脳にチップを埋め込んだサルが「思考」だけでゲームをする映像が公開される - GIGAZINE


BCI技術には主に侵襲型BCI・非侵襲型BCI・介入型BCIの3種類があります。侵襲型BCIは脳外科手術によって脳に直接チップや機械を埋め込むタイプで、Neuralinkが研究しているチップはこの侵襲型BCIに当たります。非侵襲型BCIは、電極などを貼り付けたり外部装置を頭部に装着したりするなど、外科手術を伴わない非侵襲的な方法で脳波を測定するタイプです。

そして、首都医科大学宣武医院の脳神経外科チームが今回発表したのは、介入型BCIの実験です。介入型BCIは、頭を開いて脳に直接取り付けるのではなく、心臓ステントのような脳波計を低侵襲手術によって脳に配置するという方法です。介入型BCIによる脳波測定の精度は侵襲型BCIよりも落ちますが、被験者に大きな負担をかける開頭手術を行う必要がないというのがメリットです。


首都医科大学宣武医院の脳神経外科チームは、サルの脳血管壁に脳波計を配置し、サルの思考だけでロボットアームを制御することに成功したと報告しています。Ma Yongjie氏は「人類以外の霊長類に対する世界初の介入型BCIの実験に成功しました。この成功は0から1へのブレイクスルーですが、実用するためには1から100にしなければならないので、道のりはまだ長いといえます」と述べ、次の課題は電極の設計を最適化し、動物への長期移植の安全性と信頼性を検証することだとしています。


IT系ニュースサイトのInteresting Engineeringによると、中国とアメリカはBCIの技術競争でしのぎを削っており、NeuralinkをはじめとするBCIスタートアップが多く存在するアメリカは侵襲型BCIの分野で中国に大きく先行しているとのこと。首都医科大学宣武医院の脳神経外科チームは、今回の実験の成功によって中国が介入型BCI技術の最前線に位置づけられたと述べています。

なお、介入型BCIについては、実験段階とはいえすでに体が不自由な人を対象とする脳インプラントを開発しているスタートアップがアメリカに存在しています。

血管から脳インプラントを挿入し身体の不自由な人がカーソルやデバイスを使用できるようにするスタートアップ「Synchron」とは? - GIGAZINE

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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