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血管から脳インプラントを挿入し身体の不自由な人がカーソルやデバイスを使用できるようにするスタートアップ「Synchron」とは?


脳に埋め込むインプラントから脳の電気信号を読み取り、体を動かさなくてもPCやスマートフォンを操作できるようにするブレインコンピューターインターフェース(BCI)の研究が日夜行なわれており、BCIを実用化するためのスタートアップも登場しています。BCI開発を行なうスタートアップ「Synchron」はアメリカで初めてBCIの臨床試験を認可され、すでに7人の患者が埋め込み手術を受けています。

Synchron backed by Bezos and Gates tests brain-computer interface
https://www.cnbc.com/2023/02/18/synchron-backed-by-bezos-and-gates-tests-brain-computer-interface.html

Synchronは2012年に設立された企業で、脳信号を解読してコンピューターで読み取れるように変換するBCIを開発するスタートアップです。同じ業種では、テスラやSpaceXのイーロン・マスクCEOが設立したNeuralinkが有名です。

脳に電極を埋め込み直接スマホを操作する「Neuralink」の詳細をイーロン・マスクが発表 - GIGAZINE


Synchlonは、2022年12月にビル・ゲイツ氏の投資企業であるGates Frontierやジェフ・ベゾス氏の投資企業であるBezos Expeditions、他にもARCH Venture PartnersやReliance Digital Health Limitedなどの企業から総額7500万ドル(約10億円)の資金を調達しています。

Synchronは脳に埋め込んで血管の内側から神経系を刺激し、上肢マヒの患者が機能的自立を取り戻すことを目指すBCIの研究を行なっています。2020年8月にアメリカ食品医薬品局(FDA)から治験用の医療機器として適用免除を受け、アメリカで初めて永久埋め込み型BCIの臨床試験を行う企業となりました。

SynchronのBCIの大きな特徴は、従来の脳外科手術よりもはるかに侵襲性が低いこと。これまで脳にチップを埋め込むには、頭がい骨を切開する必要があり、まさに一日がかりの大手術が必要でした。こうした手術は患者への負担も大きくリスクが高いものでしたが、SychronのBCIは首の動脈からカテーテルを挿入すると、血管内でステントのように広がり、脳データを回収します。


Sychronの神経科学担当シニアディレクターであるピーター・ユー氏によれば、Synchronのデバイスは脳組織に直接挿入されないので、脳信号の品質は直接挿入するタイプよりはよくないとのこと。しかし、脳に直接異物を埋め込むより侵襲性が低く、拡張性も高いそうです。

2023年1月には、オーストラリアでの臨床試験から、長期的な安全性の結果が発表され、「SynchronのBCIは12カ月間にわたって信号の品質やパフォーマンスが低下しなかった」ことが明らかになりました。

Synchronの開発するBCIは、2022年7月に初めて人間の患者に埋め込まれました。この患者は筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患っており、体を動かしたり食べ物を食べたり言語を発したりすることができなくなっています。しかし、SynchronのBCIによって、体を動かさなくてもPCを操作できるようになると期待されています。


実際にこのSynchronのBCIを埋め込まれた患者は、Synchronのトム・オクスレーCEOのTwitterアカウントで短いツイートを投稿することに成功しています。

hello, world! Short tweet. Monumental progress.

— Thomas Oxley (@tomoxl)


オクスレーCEOは「テキストメッセージを送信できなくなると、信じられないほど孤独になります。愛する人にテキストメッセージを送る能力が回復するということは、エモーショナルな力の回復を意味します」と述べています。

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in メモ, Posted by log1i_yk

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