インドの「カースト差別」を明示的に禁止する法案がアメリカ・カリフォルニア州で提出される
生まれによって職分や階級が定められるヒンドゥー教の身分制度が「カースト」です。カーストに基づく差別はインドだけでなくアメリカなどの海外でも広がっていましたが、アメリカ・カリフォルニア州はカーストに基づく差別を禁止するための法律に取り組んでいます。
Why California is taking on caste-based discrimination | California | The Guardian
https://www.theguardian.com/us-news/2023/apr/16/california-bill-aims-to-ban-caste-based-discrimination
カースト制度において「身分階級外」とされる最下層の被差別階級は「ダリット」と呼ばれています。ダリットに属する人々は屠畜業や下水清掃などの「穢れ」に関係する職業に就くことが一般的とされています。
ヒンドゥー教が多数を占めるインドでは、カースト制度を基にした差別である「カースト差別」が常態化しています。このカースト差別は海を越えたアメリカ・シリコンバレーのインド系技術者にまで広がっており、訴訟にまで発展していることが長らく問題視されてきました。
インドの「カースト差別」がアメリカのシリコンバレーで定着している - GIGAZINE
アメリカを拠点とするダリットの組織であるエクイティラボが2018年に行った(PDFファイル)調査では、アメリカの職場で働く労働者の3人に2人がカースト差別の被害に遭っていることが報告されています。
カーストに基づく差別の是正のために、ハーバード大学、カリフォルニア州立大学などの教育機関のほか、Appleなどの大手企業がカースト差別を明示的に禁止しています。しかし、州単位での取り組みは依然として行われていませんでした。
2023年3月にカリフォルニア州の上院議員のアイシャ・ワハブ氏は、カリフォルニア州においてカーストに基づく差別を禁止する最初の州にするための法律「SB 403」を提出しました。SB 403では、カリフォルニア州の差別禁止法における保護カテゴリーとしてカースト制度を追加するとのこと。
ワハブ氏は「人種や宗教など、多様化するアメリカでは、カーストに基づく差別を禁止して、差別への理解を広げることが不可欠です」と述べています。ワハブ氏に対する支持の声もある一方で、一部のコミュニティからは反対意見も上がっており、法案に対する抗議を行う組織も形成されています。
そんなワハブ氏にニュースメディア・The Guardianがインタビューを行っています。
◆Q1:
カーストに基づく差別があることを知ったのはいつですか?
A1:
私は学校での教育を通じてカースト制度について学びました。カースト制度は3000年以上前から存在するため、カーストに基づく差別は多くの人々に深く根付いています。カーストに基づく差別は人々が考え、認識しているよりもはるかに多く発生しています。
◆Q2:カーストに基づく差別を禁止するこの法案を作成して導入したきっかけは何ですか?
A2:
カリフォルニア州にはヒンドゥー教徒が非常に多く、これまでにシスコシステムズやカリフォルニア州立大学イーストベイなどでカーストに基づく差別が問題視されています。私は人々を保護するためにこの法案を通してこの問題に対処しようとしています。
◆Q3:カーストに基づく差別がなぜ今アメリカで問題になっているのですか?
A3:
多様化が進むアメリカでは、差別の種類が増加しており、カーストに基づく差別だけでなく様々な差別が急増しています。私たちは政策立案者として積極的に行動し、出身地や経歴などに関係なく、全ての人々が保護されるようにしたいと考えています。
◆Q4:シリコンバレーではインド系技術者が増加していますが、現地のコミュニティにおいて、カースト制度が政治的な問題としてどのくらい話されてきましたか?
A4:
シリコンバレーでは、カースト制度について全く知識のないコミュニティもあります。一方で、住宅や仕事においてカーストに基づく差別を行っているコミュニティも存在しています。しかしカーストに関する議論は少々タブー視されているようです。アメリカでは多くの人がカースト制度から目をそらし、誰もが幸せに生きていると考えているようですが、実際にはアメリカの法律の下で保護されている場合にのみ、幸せに生きることができます。
◆Q5:この法案の制定にあたって、被差別階級の人々のコミュニティからどのような支援を受けましたか?
A5:
私は毎日この法案について何百件もの電話やメールを受け取ります。さまざまな民族のコミュニティや宗教的背景を持つ人々が私に手を差し伸べ、支援を提供してくれました。この法案が、ほんの一握りの人でも自由に生きる権利を与えることができれば、私は本当に幸せです。
◆Q6:法案に反対するグループから脅迫を受けていることに対して、どう思いますか?
A6:
一部の人々は宗教の自由をカーストに基づく差別の禁止と混同しているようです。この法案では人々を差別から守ろうとしています。またこの法案に反対するグループには、差別を受ける側のグループも存在しており、非常に興味深いです。
◆Q7:この法案はカーストに基づく差別を禁止する法案であると同時に公民権法案、労働者法案、女性の権利法案、人権法案であると主張しました。これについて説明してください。
A7:
この法案では、人々がどのカーストに属しているかだけでなく、家族や祖先を判断されることなく、人々が自由に自分たちの生活を送ることを可能にします。この法案では、これまでの差別禁止法を拡大し、多様な人々を保護することが可能です。
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