遅刻しがちな人のメカニズムとは?
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人との待ち合わせや時間の決まった予約などにやむをえず遅刻してしまうことは誰しもありますが、それとは別に「いつも遅刻しがちな人」というのもいます。ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの認知神経科学教授であるヒューゴ・スピアーズ氏によると、遅刻しがちな人は脳に「遅刻のメカニズム」を持っていると考えられるそうです。その他、遅刻しがちな人のメカニズムに関する複数の研究について、Live Scienceがまとめています。
Why are some people always late? | Live Science
https://www.livescience.com/why-are-some-people-always-late
脳の記憶や空間学習能力をつかさどる領域として知られる海馬は、何かをするタイミングや時間を記憶するなど、時間に関するいくつかの側面を処理する領域でもあるとスピアーズ氏は指摘しています。Nature Reviews Neuroscience誌に掲載された論文によると、海馬には「時間細胞」として働くニューロンがあり、そのニューロンが私たちの経験した出来事の認識と記憶に寄与していることが示されています。したがって、海馬の「時間を把握する機能」が遅刻を生み出している可能性が高いと考えられますが、なぜ一部の人々が時間をうまく把握できず重要なものではないと過小評価してしまうのか、その理由は不明となっています。
「海馬が時間を過小評価してしまう原因」として、スピアーズ氏は2017年に行った研究で「空間への慣れ」を挙げています。スピアーズ氏は、新しくロンドンに引っ越してきた20人の学生に以下の画像左のように大学地区の地図をスケッチしてもらい、それを実際の地図と照らし合わせて「把握しているエリア」を明確にした上で、それぞれの学生にさまざまな目的地への移動時間を推定してもらいました。学生たちは地域をよく知っていれば空間の認識が広がってより正しい地図を描くことができましたが、その一方で地域をよく知っているほど、移動時間の推定は短くなっていったそうです。また同様に、同じ学生でも知っている地域では知らない地域よりも到着時間が短く推定されました。スピアーズ氏はこれを、「ある空間にとても慣れている場合、その空間にかかる手間の想定を軽視し始めます」と結論付けています。
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また、よく遅刻する人は朝の身支度など移動時間とは直接に関係のないタスクをこなす時間を十分に考慮しない、ということも頻繁に遅刻する原因として考えられます。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究チームが2007年に学術誌Memory & Cognition誌に掲載した論文によると、私たちは通常「過去にタスクにかかったと思う時間」に基づいて時間の見積もりを行いますが、記憶や認識は常に正確とは限らないため、想定と実際にかかる時間とに差が発生してしまうとのこと。
同様に、キャンベル大学の非常勤教授であるエミリー・ウォルダム氏は、「タスクを行った経験が豊富な場合、そのタスクにかかる時間を過小評価する傾向があります」と述べています。ウォルダム氏は自身の研究で、一般的な知識を問う課題を行う際に、バックグラウンドで流れている曲の数に基づいて課題の長さを見積もる実験を行うことで、「音楽などの環境要因が時間の感覚を歪ませる」ということを発見しています。この研究によると、2曲の長い曲よりも4曲の短い曲を聞いた方が、時間の見積もりが大きくなる傾向がありました。なお、音楽による時間の見積もりがズレるのは、若い人のみに見られた傾向で、高齢者の時間認識には影響がなかったとのこと。
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その他の遅刻の原因としては「混雑」があります。これは渋滞によるやむを得ない遅れということではなく、混雑している場合に時間感覚がズレる可能性が考えられており、2022年に発表された研究では、混雑している場合と混雑していない場合の地下鉄通勤の長さを推定するよう求められた参加者が、混雑した通勤時間を10%長く感じた上で、それが不快な体験であることを回答しました。
また、ウォルダム氏は、良心的な感情の低下などの性格特性によって前もって計画していたタスクを忘れてしまう人や、マルチタスクを行う傾向があるかどうかも、遅刻に影響する要因のひとつだと指摘しています。Advances in Cognitive Psychology誌に掲載された研究によると、一度に複数のタスクをこなす人は、タスクを処理する負荷によって将来の適切な状況を想定することができず、スケジュールの遅れを忘れてしまう可能性が高いことが分かっています。ウォルダム氏は「せっかく細かく計画しても、それを成功させるだけの注意力が残っていないために、失敗してしまうことがあります」と説明しています。同じ理由で、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の人は、時間の経過を処理したり見積もったりするのが難しいことが過去の研究で指摘されています。
時間に関するビジネスコンサルタントで「Late!: A Timebender’s Guide to Why We Are Late and How We Can Change(なぜ遅刻するのか、どうすれば変われるのかの手引き)」の著者であるグレース・ペイシー氏は、「タスクの難しさを怖がって先延ばしにしてしまうこともありますが、そのような先延ばしと遅刻の大きな違いは、先延ばしは多くの場合が自身の負担になる一方で、遅刻はしばしば他人との関係に影響を与えます」と述べ、「いつも遅刻する人だと認識されてしまうことを避ける」ことが大事だとしています。パーシーは著書の中でアラームやリマインダー、締切を細かく設定するなどの戦術を提案しています。
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