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対話型AIを教育現場のサポート講師として活用する試み


OpenAIが発表した対話型AI「ChatGPT」は、人間からの質問に対して非常に自然に受け答えできることに加え、大学生レベルの試験の自由記述問題に合格するなど高い能力を発揮するため、アメリカのスタンフォード大学の学生のうち17%が課題または試験にChatGPTを使っていると回答した調査報告もあります。ChatGPTを教育現場で禁止するか、正しい使い方を教えて活用するかなど議論が活発にされていますが、インドでマイクロスクールを経営するサイ・ガダム氏は、子ども1人につき1人のAIチューターをサポート講師として付けた学習方針を示しています。

One AI Tutor Per Child: Personalized learning is finally here | by Sai Gaddam | Mar, 2023 | Medium
https://saigaddam.medium.com/one-ai-tutor-per-child-personalized-learning-is-finally-here-e3727d84a2d7

対話型AIは自然な文章で正しい答えを返してくるように見えますが、見栄えは良いが成立していなかったりデタラメな内容を返したりといったケースもあるため、Q&Aサイトでの使用や科学論文を書くための使用が禁止される動きも見られています。また、ニューヨーク市教育局は「ChatGPTは質問に対して迅速かつ簡潔な回答を提供できるかもしれませんが、学業や生涯の成功に不可欠な批判的思考や問題解決のスキルを構築することはできません」として、学校のコンピューターおよびネットワークから高精度チャットAI「ChatGPT」へのアクセスを禁止しました。

生徒と教師によるChatGPTの利用をニューヨーク市が禁止 - GIGAZINE


一方で、ChatGPTのような対話型AIは教育ツールとして役立ったり、心に不安を抱える子どもの相談相手になったりと活用できるため、「全面的に禁止するのではなく、正しく使えるよう指導するべき」と指摘されています。実際に大学や高校の授業でAIに触れる試みは行われており、ペンシルバニア大学ウォートン校のイーサン・モリック教授は「トレーニングなしでは誰もがAIを誤って使ってしまうため、AIを使うことの是非ではなく、AIをどのように使うかに焦点を当てることで学習効果が向上することが期待できます」と述べています。

AIを禁止するのではなく「どのように使いどのように評価するか」を学生教育に取り入れる試み - GIGAZINE


インドのムンバイでマイクロスクールを経営しているサイ・ガダム氏は、「子どもたちに、子ども時代を犠牲にして受動的に教室に座らせ、教師が上から目線で知識を注ぎ込もうとするのは、まったく頭がおかしい」と主張し、子どもたちがより積極的に世界に関わっていける学習を追求しています。マイクロスクールは一般的に、全学年で15~30人程度の少人数制の学校で、テクノロジーを活用することで子ども一人一人に高度な個別の教育を提供しています。ガダム氏のマイクロスクールでは、「生徒に一対一で積極的に関与できる教師」として、ChatGPTを活用しているそうです。

また、暗記させるのではなく実体験で覚えていく実りのある学習のために、ChatGPTを生かしています。例えば、私たちが一般的に使用している「十進法」と「位取り記数法」を用いて数字を書く方法を子どもたちに教えるために、ChatGPTに対し「サイコロと大きな袋などを用いて、大きい数字を実体験できる子ども向けのゲームを教えて」と質問したところ、「サイコロを2つ振って、出た目で2桁の数字を作る」というようなアイデアを提示したとのこと。


他にも、「子どもたちが劇を演じることで数字の使い方を覚えるようなストーリー」を出力させるようなこともできるとガダム氏は示しています。ガダム氏はGiffieというスタートアップでAIと大規模言語モデル(LLM)を用いてパーソナライズされた実体験型英語学習のサービスも行っており、AIを個別指導の教育チューターとして用いる活用法に注目しています。


教育にAIを用いる理由として、ガダム氏は「共鳴学習ループ」の理論を説明しています。人が何かを学ぶ時はいわゆる「模倣学習」を得意としており、「他の人から学ぶ」ことが重要です。そして他の人から学んだことを利用して、次に相手が行うことを学ぶ、というサイクルが実のある学習となります。しかし、この学習には言語的にも教育的にも同じ言語を話す2人の個人が必要で、そこに対話型AIがチューターもしくはアシスタントとして活躍するそうです。ガダム氏はこの理論の妥当性について、プログラミング言語LOGOを開発したことで知られるシーモア・パパートの言葉を引用し、「コンピューターの本質は、その普遍性、シミュレートする力にあります。千の形を取り、千の機能を果たすことができるため、千の好みに訴えることができます」と模倣学習にAIチューターを用いる利点を語っています。

ガダム氏の記事はHacker Newsでも話題になっており、「言語モデルはデタラメな情報を話すことも多く、教育に導入するテクノロジーとしては、私たちのAIへの理解が足りない」というような意見も挙がっています。ガダム氏はこれに対し、AIを学習チューターとして活用するのは、AIを唯一の個別指導者として教育権を引き継ぐというものではなく、AIを用いて学習を強化することにあると反論しています。

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in ネットサービス, Posted by log1e_dh

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