「労働力人口」という観点から人口動態を見た時に最も悪くなる国はどこなのか?
人口の高齢化が世界的に進み、特に出生率の低下と死者数の増加傾向が続く日本は2019年に改正出入国管理法を施行するなどして、移民の支援や外国人労働者の人材獲得などに向けて力を入れています。「高齢化」「移民」などの観点から人口動態がどのようにみえてくるのかというテーマについて、デンマーク財務省の元チーフコンサルタントを務めたミッケル・ローゼンボルト氏が解説しました。
Introducing 'The Problem Index' - Which Countries Have the Worst Demographics? - Steno Research
https://stenoresearch.com/watch-series/introducing-the-problem-index-which-countries-have-the-worst-demographics/
人口動態が悪化し、労働力人口が追いつかなくなると、経済的な消費をしながらも経済的な貢献をしない高齢者層が増え、国家財政に与える負担は大きくなります。
人口の高齢化という問題を論じるときには、15歳から64歳までの「生産年齢人口」に対する65歳以上人口の比率を指す「高齢者扶養率」という切り口で語ることができます。
調査会社のSteno Researchが算出したデータによると、500万人以上の人口を抱える国のうち、高齢者扶養率の高い国と低い国、それぞれ上位10カ国が以下の通りとなっています。唯一50%を超えて他と大きく水をあけている日本は例外として、割合が高い国のほとんどはヨーロッパ諸国です。一方で、出生率・死亡率ともに高いアフリカ諸国が割合が低い国として肩を並べています。
Steno Researchは2033年の予測も打ち立てています。このデータを簡潔に説明すると、世界的に高齢者扶養率が増加傾向にあり、香港と韓国の急上昇が際立っています。
この問題高齢化問題に対処するために各国が何をしているかということに目を向けてみると、1つに移民政策があることが分かります。各国の移民の割合を示したデータが以下のもので、移入民(赤)はヨーロッパやアジアの先進国に多く、移出民(青)はアフリカや中東に多いことが見て取れます。
以上のデータを踏まえた上で、ローゼンボルト氏は「Problem Index(問題指数)」という指標を考案。これは、国が高齢化問題と移民政策にどのように対処しているのかを加重平均した指数であり、高齢者扶養率が低く、純移入数(国に入ってくる人)が多い国には報酬を与え、高齢者扶養率が高く、純移出数(国から出ていく人)が多い国には罰則を与えるものです。0に近い数値は、その国が高齢化問題に対処できていないことを示し、100に近い数値は、その国が高齢者扶養率をうまく管理していることを示します。
そして、指数が高いほど明るく、低いほど暗くして視覚化した世界地図が以下の通りです。日本およびヨーロッパ諸国で高齢化問題が深刻化しているのが分かります。
また、問題指数を基にフィルターをかけると高齢化問題の系統が明らかになるとローゼンボルト氏。2053年の予測データを見てみると、高齢化問題の解決に向けた多様な道筋を描いているのが分かります。下のデータでは、黄色の棒グラフが純移民率がマイナスであること(人々が国外に流出していること)、黒色の棒グラフが人口に対し高齢者の割合が高いこと、赤色の棒グラフが黄色と黒色の両方を満たしていることを意味しています。キューバ、中国、ポーランド、ブルガリア、スイスが、両方の要素を持つ国になると予測されています。
ヨーロッパ諸国がなぜ悪化の一途をたどるのかというと、出生率の低さや移民の少なさにあるそうです。出生率はスペインで1.2人、イタリアで1.3人と世界でも最低水準であり、特に南欧・東欧で際立っているのは、純移民が少なく、セルビア、ブルガリア、ポーランドの場合はマイナスにさえなっていることです。ポーランドでは、国境を越えて入国してくる限られた移民の年齢の中央値が世界で最も高いことも問題視されています。
日本は長い間アジアでも突出した高齢化問題にさいなまれていましたが、今後より多くの東アジア諸国が同じような問題を抱えることになります。韓国は世界で最も低い出生率で、女性1人当たりの平均出生数は0.9人です。香港は平均1.1人、シンガポールも平均1.1人ですが、シンガポールはビザ政策に力を入れて高いスキルを持った移民を呼び込むことに成功しているため、問題指数の観点から見ると悪くはないそうです。
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in Posted by log1p_kr
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