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「なぜスプラトゥーン3のステージは失敗してしまったのか」をプロゲーマー&アナリストが解説


2022年9月に発売されたスプラトゥーン3は、発売から3日で国内で345万本の販売本数を記録する大ヒットとなりました。しかし、スプラトゥーン3のステージには初代スプラトゥーンやスプラトゥーン2のステージよりも多くの欠陥があると、初代スプラトゥーン時代から競技シーンで活躍しているというプロ選手のCharaさんと、競技シーンのアナリスト兼コーチを務めているというflcさんが解説しています。

Why Splatoon 3's Maps FAIL (And How To Fix Them) - YouTube


スプラトゥーン3の競技シーンにおいて不名誉に有名になってしまった試合があります。ある大会での敗者復活戦で、日本でも最高峰のチームが「ナメロウ金属」というステージでガチホコバトルを行いました。


白熱した試合になるはずが、5分間お互い見合うばかりでガチホコのカウントが「61」より先に進むことはありませんでした。


この試合は「ステージの構造」に注目する大きなきっかけとなったそうです。


というわけで、スプラトゥーンの競技シーンで活躍してきたというCharaさんと、同界隈で有名なアナリストのflcさんが、「なぜステージ構造が機能していないのか?」「ステージ構造によりゲーム体験がどれだけ損なわれているのか?」「問題を解決することはできるのか?」について解説します。


スプラトゥーン3のステージには、「つまらない」「単純だ」「自由度が低い」「テトリスみたい」といった不満の声が多数寄せられています。


スプラトゥーン3のステージの構造問題を理解するには、「チョークポイント」を理解する必要があります。チョークポイントとは、「カウントを進めるためにチーム全員が通過しなければいけない場所」です。このチョークポイントの典型的な例が、海女美術大学の高台へと続く坂道です。


チョークポイントへの対策は2つしかありません。1つは強行突破。大量のスペシャルウェポンなどを使い、防衛側を圧倒するという方法がコレ。


もうひとつはチョークポイントのスキップ、つまりはチョークポイントをスルーするということです。例えば、ステージ中央でキルを取ることで相手チームをリスポーンさせてしまえば、ノーリスクでチョークポイントを通過してしまうことが可能です。チョークポイントをスキップするには素早くスペシャルウェポンを発動し、相手チームに体制を整える時間を与えないことが重要になるとのこと。時間を与えれば与えるほど自チームのスペシャルウェポンの効果は弱まり、逆に相手チームがスペシャルウェポンを発動できるようになってしまいます。


このように、チョークポイントはゲームの進行速度を大きく低下させる場所と言えます。


防衛側は、相手のチームを止めるためのスペシャルウェポンを貯めるために高台からインクを塗るだけでOKとなります。むしろ、それ以外ができないとも言えるかもしれません。


海女美術大学の場合、高台から降りてしまうとチョークポイントを作るために設けられた段差により防衛チーム側も高台側に戻れなくなるので、チョークポイントが防衛チーム側の動きも制限してしまっています。


つまり、チョークポイントによりどちらのチームにとっても能動的に動くための動機がなくなっており、対面をしかけたり動き回って何かを仕掛ける十分な理由が見いだせないようになっている、とflcさんは指摘しています。


これに対して、海女美術大学のガチヤグラの場合はステージ中央から高台へ登るための台がセットされています。これにより、攻撃側はよりフランクに攻撃を仕掛けられるようになっており、防衛側もステージ中央に降りて戦うことを選択することができるようになっています。


ただし、チョークポイントそのものが問題というわけではありません。チョークポイントはゲームの流れに緩急をつける役割を持った構造というだけで、存在そのものが悪いというわけではないとflcさん。それでは何が問題なのかというと、スプラトゥーン3では「マップ全体がチョークポイントになっているステージが多い」とflcさんは指摘しています。


マップ全体がチョークポイントになってしまっている代表例が、「クサヤ温泉」「ナメロウ金属」「マサバ海峡大橋」といった3つのステージ。


これらのステージは一本道になっており、あらゆる場所がチョークポイントになり得るため自由度が非常に低いです。


こういったステージでは進行方向が一方向に固まり、ステージの同じ場所を何度も通過することになるため、ステージの側面を占拠して2つの異なる方向から相手チームに圧力をかけるといったことができません。


そのため、「まるでステージ全体がジャッジくんのナワバリバトルの勝敗メーターであるかのように感じられる」とflcさん。


こういった自由度の低さにより、プレイし初めたばかりの初心者だろうが競技シーンで活躍するプロの選手であろうが同じように「身動きが取れない」「不自由だ」と感じるようなステージが多くなってしまっているため、このようなステージ構造がプレイヤーの「自分らしいプレイ」や「自分がしたいプレイ」を制限しているとflcさんは指摘しています。


また、スプラトゥーン2ではステージやチーム編成によってプレイスタイルを選び、戦略を変えることができました。しかし、スプラトゥーン3ではステージ全体がチョークポイントとなり、どれだけ自チームの領域を広げられるかだけが勝敗を左右する要因となってしまっているため、「クアッドホッパーを使うなら復活短縮一択」といった具合に、機動力重視のプレイスタイルを選ぶなどのプレイスタイルの幅も狭めてしまっているとのこと。


他のステージでも基本的に相手陣地へ攻め入るためのルートは2つしか存在しないため、射程の長いブキやクイックボムやローラーなどを配置することで、簡単に侵攻を止められるようになっています。これまで存在した、第3のルートがスプラトゥーン3のステージにはことごとく存在しないため、両チームが真正面からぶつかり合い一進一退を繰り広げるような試合展開が起きやすくなっているというわけ。


また、一本道のようなステージが多いせいで、一度退却しようとしても相手も同じルートを通って自陣に攻め入ってくるため、簡単に見つかりキルされてしまうという問題もあります。つまり、スプラトゥーン3のステージではチョークポイントを強行突破あるいはスキップして、敵陣深い位置をキープし続けなければいけず、「攻め切る」か「まったく攻めない」という2択のどちらもできない場合は、ブキ選択を間違えているとしか言いようがない」とflcさんは語っています。


スプラトゥーン3発売前の映像に映っているステージではより多くのルートが残されており、一本道のようなステージにはなっていないそうで、「このようなステージならブキの多様性やスペシャルウェポンの性能がよりステージとかみ合ったのでは?」とflcさんは疑問を呈しています。

現状のステージ構造は前述の通り一本道になっているため、キューインキやサメライドといったスペシャルウェポンが性能を発揮できずにいます。例えばキューインキの場合、集団でインクを発射することで簡単に吸収可能なインク上限を満たし、敵をキルすることが可能。


サメライドの場合、ステージ構造的にサメライドで突撃した先に敵がいるため発動後に簡単に敵にキルされてしまうという問題があります。


スプラトゥーン3で登場したスペシャルウェポンのエナジースタンドは、発表時にプロが口をそろえて「エナジースタンドはヤバい」と発言し、実際、発売後に開催された「PAX Invitational」では競技シーンのトップチームがすべてエナジースタンドをスペシャルウェポンに持つZAPを構成に組み込んできました。


しかし、実際のところはスプラトゥーン3のステージは一本道で2方向から敵を挟み込むようなことはできない、つまりは一方向からぶつかり合う戦闘しか起きないため、エナジースタンドのような機動力を上げるスペシャルウェポンよりも、高火力・高耐久のカニタンクで敵をなぎ倒す方がはるかに簡単なことにプレイヤーが気づいたそうです。


開発陣がこのようなステージ構造に設計した理由は不明ですが、flcさんは「もしかしたらゲームが複雑になり過ぎることを心配したのかも」と言及。どちらにしろ、ゲームデザインとステージ設計が食い違っていて「お互いに悪影響を与えている」と指摘しています。


なお、本動画では上記の問題点を踏まえてどのようにステージ構造を改善すべきかも提案されているので、気になる人は本動画をチェックしてみてください。また、特にバッテラストリートなどは最低限の調整で良いステージに変身する可能性があると指摘されています。加えて、スプラトゥーン3のステージ構造以外は非常にうまくデザインされており、そもそも大好きなゲームであるとして、あくまでスプラトゥーン3をむやみやたらに批判したいわけではなく、大好きなゲームをより良くするための批評であると説明しています。

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in 動画,   ゲーム, Posted by logu_ii

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