政治的スタンスを理由にした女性へのサイバー虐待がミャンマーで激化している
ミャンマーでは2021年2月1日のクーデターにより、軍が政権を握りました。それから約2年の間に、政治的動機による女性に対する「サイバー虐待(ネットを利用した虐待)」が大幅に増加していたことが、人権団体・Myanmar Witnessの調べにより明らかになりました。
DIGITAL BATTLEGROUNDS: POLITICALLY MOTIVATED ABUSE OF MYANMAR WOMEN ONLINE
https://www.myanmarwitness.org/reports/digital-battlegrounds
How Myanmar women are being abused online by supporters of the military - CNN
https://edition.cnn.com/2023/02/07/asia/myanmar-military-sexual-images-doxxing-telegram-as-equals-intl-cmd/index.html
Myanmar Witnessはメッセージングサービス・Telegramの160万件の投稿を定量的に分析し、2021年のクーデター後の数週間と、2022年末の比較を行いました。すると、政治的動機によって行われる、女性に対するサイバー虐待の件数が以前は1日平均5件未満だったものが、平均40件以上と8倍にまで増えていたとのこと。
こうしたサイバー虐待のうち90%は、ミャンマー軍の設立した国家最高指導機関である国家統治評議会(SAC)を支持するアカウントによって作成・共有されており、70%は男性のアカウントによるものでした。また、83%の投稿が攻撃対象にしていたのは、軍に対して民主派勢力が合法的政府と主張する国民統一政府(NUG)や民主派の正規軍・人民防衛軍(PDF)を支持する女性でした。
攻撃的な投稿の少なくとも50%は「doxxing(ドキシング)」と呼ばれる晒し行為で、政治的なプロフィールや知名度が同等でも、男性より女性の方がドキシングを受けている傾向がありました。標的になった女性たちは、決して「知名度が高い活動家」というわけではなく、NUGやPDFを支持する投稿に対して好意的なコメントをしただけという人も多いようです。また、投稿の28%で、標的の女性がオフラインでも処罰されるべきであると主張し、ミャンマー軍に対して女性の逮捕や財産没収を求めていたとのこと。
少数民族や宗教的少数派、イスラム教少数派に寛大な姿勢を見せた女性に対しては、「イスラム教の男性と関係を持った」などの性的偽情報が流される事例も確認されています。
以下はMyanmar Witnessが示した、SNSでの攻撃的投稿の一例。左は女性活動家(Pencilo)をふしだらな女(Pharcilo)と言い換える言葉遊びをした上で「革命は成功する。妊娠中に」と書かれていて、右は「彼女はKNU(カレン民族同盟)の支配地域で妊娠し、いまだに父親もわからないらしい。このことは警告したはずだ、ジャングルで妊娠したら薬もないのに」とあざける内容です。
なお、分析はTelegramのほかTwitter、Facebookも対象に行われましたが、ミャンマーで特に広く利用されているFacebookはMetaのデータアクセスポリシーによって大規模分析を行うことができなかったため、正確な状況把握は難しい状態だとのことです。
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