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マンガの著作権侵害・ポルノ・詐欺・偽情報のネットワークがGoogleからの広告費で収益を上げている実態が暴露される


多種多様な広告ビジネスを展開するGoogleですが、Googleがサポートする広告の中には著作権を侵害するサイトに掲載されるものや、フィッシング詐欺やポルノサイトに掲載されるものがあります。不適切なサイトがGoogleからの広告費で収益を上げている実態について、世界的なFacebook広告詐欺を暴露した実績のあるクレイグ・シルバーマン氏らが解説しました。

Inside Google’s Ad Display Network Black Box: Porn, Piracy, Fraud — ProPublica
https://www.propublica.org/article/google-display-ads-piracy-porn-fraud

2021年末、右翼系サイトの「Conservative Beaver」が、FBIが新型コロナウイルスワクチンを開発したファイザーのCEOを詐欺容疑で逮捕したとする虚偽の記事を掲載しました。このサイトがフェイクニュースを掲載したのは初めてのことではありませんが、Conservative Beaverが活動を続けている間、Googleはこのサイトに広告を掲載し続けていました。


後にファイザーがConservative Beaverを名誉毀損(きそん)で訴えると主張し、調査によってGoogleが広告をサポートしていることが明らかになったため、世間からの圧力を受けてGoogleは同サイトから広告を削除しました。それから間もなくConservative Beaverは閉鎖されることになります。

一連の騒動の中でConservative Beaverの運営者はカナダ人のマーク・スラピンスキー氏であることが判明していたのですが、サイトの閉鎖からおよそ1年が経過してもなお、スラピンスキー氏はGoogleのツールを使用して広告収入を得ています。スラピンスキー氏は新たに保守系の政治サイト「Toronto 99」を運営し、お金を稼いでいるのです。

ウェブ広告において、ウェブサイトなどの広告表示スペースを管理する人は「売り手」、広告を出稿する人は「買い手」と呼ばれます。透明性の高い広告業者は提携している売り手の情報を公開している所も多いですが、Googleは売り手に固有のIDを割り当てるだけで情報をほとんど非公開にしています。調査によると、売り手約130万件のIDのうち75%以上が「機密」とされ、2022年秋の時点で個人名や会社名が記載されているのは23%、所属組織のドメインも記載されているのはわずか11%でした。一方でGoogleの競合他社は、ほとんどの場合すべてのアカウントIDを関係する個人名や企業名、関連するドメイン名などの情報とともに公表しているとのこと。


専門家がGoogleの広告システムを調査したところ、Googleが提携しているすべての企業と広告主の資金の行き先を明らかにすることは不可能と言えるほど大規模で秘密主義の、不可解なほど複雑なシステムが構築されていたとのこと。売り手の中には評判の良い出版社や人気のあるゲーム、オンラインツールの他に、これまで報告されていなかった海賊版コンテンツやポルノ、フェイクニュースサイトなどがあり、Googleの緩い監視を利用して収益をあげている業者が多数あることが分かったそうです。

ある例では、毎月10億人近くが訪れる海賊版サイトがGoogleの広告から収益を得ていたとのこと。Googleは自社のデータから売り手が大量の著作権侵害に関与していることを知り得たにもかかわらず、提携を続けていたことは問題だとシルバーマン氏らは記しています。

広告業界の監視団体であるCheck My Ads Instituteは「Googleは毎日何十億ドル(数千億円)もの広告費を世界中の未知の個人に送るという、他に類を見ない状況を作り出しました。これは事実上、世界最大の闇資金の移動の一つであり、その資金は私たちの広告キャンペーンによって賄われているのです」と主張し、Googleに対して匿名化された売り手リストを完全に公開するよう要求しています。

しかしながらGoogleの対応は遅々として進まず、2020年から2022年にかけて公開項目総数を5%から11%に増やしたのみでした。Googleは「IDに関連する個人または企業の開示を求めることは、プライバシーおよびセキュリティ上のリスクがあります。Googleは独自のパブリッシャーベースを有しており、業界の透明性とパブリッシャーの機密性・選択の両方のバランスを確実に取りたいと考えています」と述べていますが、今日の時点では、Googleの広告ネットワークに新規登録する売り手はデフォルトで機密扱いのままです。


メディアリサーチ会社Ebiquityの最高製品責任者ルーベン・シュルース氏は、売り手の情報を公開しないGoogleについて「ほとんどの広告主が取引したいとは思わない不適切なサイトやアプリで埋め尽くされているため、秘密にしておくことはGoogleのビジネス上の利益になるのです」と指摘します。

Googleは広告を掲載しているサイトやアプリのリストを公開していないため、買い手は広告を表示する不適切なサイトやアプリを事前にブロックすることはできますが、すべて排除することはできないそうです。

シルバーマン氏らは「500兆円規模になるともいうデジタル広告業界ではGoogleがルールを決めており、さらにGoogleの異様なまでに高い機密性と低い透明性により、顧客に関連する情報がブラックボックスのようになっています。広告があるべきでない場所に掲載され、売り手に不正なお金が流れます。ブラックボックスに他に何が潜んでいるかは、Googleだけが知っているのです」と述べ、Googleの広告ネットワークの不透明性に懸念を示しました。

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in ネットサービス, Posted by log1p_kr

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