世界中の10人に4人が魔法や呪いを信じているという研究結果
魔法や呪いはファンタジーやおとぎ話の中だけに存在するものであり、実際にこれらを信じる大人は圧倒的に少数派だと思っている人も多いはず。ところが、世界の95の国と地域に住む14万人以上の人々を含むデータセットを分析したところ、「調査対象者の40%以上が魔法や呪いを信じている」という結果が明らかとなりました。
Witchcraft beliefs around the world: An exploratory analysis | PLOS ONE
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0276872
4 in 10 people worldwide believe in witches | Live Science
https://www.livescience.com/four-in-ten-people-worldwide-believe-in-witches
Massive Global Study Shows Belief in Witchcraft Is More Abundant Than You Might Think : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/massive-global-study-shows-belief-in-witchcraft-is-more-abundant-than-you-might-think
魔法や呪いといった概念は非常に古くから存在しており、パレスチナ自治区では少なくとも3200年前のものと見られる「呪いのお守り」が発見されているほか、古代ギリシャやローマの各地では誰かに呪いを下すよう神々に祈るCurse Tablet(呪いの鉛版)が作られていました。しかし、科学技術が発展した現代では、もはや魔法や呪いといった非科学的な信念は廃れてしまったと考えている人は多いかもしれません。
アメリカン大学の経済学准教授であるBoris Gershman氏は、現代における魔法や呪いへの信念について調査するため、ピュー研究所が調査機関と協力して2008年から2017年にかけて行った6件の大規模調査をデータセットとして分析を行いました。データセットは世界5大陸にある95の国と地域に住む、合計14万人以上の人々を対象としていたとのこと。
研究では宗教的や魔術への信念に関するさまざまな質問が行われましたが、共通して「あなたは邪視や、特定の人々が呪いや魔法をかけて、誰かに悪いことが起きるように仕向けられると信じますか?」という質問が含まれていました。
分析の結果、回答者全体のうち約43%もの人々が、魔術や呪いといった概念を信じていることが明らかになりました。人口データに基づく単純な推定では、調査対象となった95の国や地域で少なくとも10億人近くが魔法や呪いを信じていることになり、世界的に見れば魔法や呪いを信じる人々はかなり多いことが示唆されています。
以下の画像は、調査対象のうち魔法などを信じる人が多い国や地域ほど濃い緑色に塗ったものです。南米やアフリカ、アジア、東ヨーロッパなど、幅広い地域で魔法や呪いが信じられていることがわかります。最も魔法や呪いを信じている人が多かったチュニジアでは90%、最も少ないスウェーデンでも9%の人々が信じていたとのことです。
より高い教育を受け、経済的安定性が強く、世帯の人数が小さい人ほど魔法や呪いへの信念が低下する傾向がみられましたが、それでも多様な教育・社会経済的スペクトル全体で魔法を信じている人々がみられました。他の条件が同じだった場合、経済状態が「非常に良い」という人は「非常に悪い」という人と比べて、魔法を信じる可能性の低下は6~7パーセントポイント程度だったとGershman氏は報告しています。
また、宗教を信じている人々は魔法や呪いを信じる可能性も高いこともわかりましたが、イスラム教やキリスト教など宗教の違いによる差はみられませんでした。Gershman氏は、「宗教と呪術はいずれも超自然的な力が生活に重要な役割を果たすという考えが中心となっており、全体として密接に関係しています」と述べました。
さらに、国家としての制度や社会的信頼のレベルが低く、文化や集団への適応が重視され、身内をひいきする傾向(内集団バイアス)が強い国や地域において、魔法や呪いを信じる人の割合が多いこともわかりました。
Gershman氏は、「今回の研究は、魔法の信念がまだ世界中に広がっていることを文書化しています」「魔法や呪いを信じる割合は、多くの文化的・制度的・心理的・社会経済的特徴と体系的に関連しています」と述べています。
なお、今回のデータセットには多くの人口を抱える中国やインドが含まれていないため、世界全体における魔法への信念をより正確に理解するにはさらなる研究が必要とのことです。
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