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仕事のコミュニケーションを阻害する5つの「認知のゆがみ」とは?


仕事をスムーズに進めて成功へ導くには、同僚や上司、関係者とのコミュニケーションが欠かせません。そんなコミュニケーションを阻害する危険性がある5つの「認知のゆがみ」について、ビジネスや組織のアドバイザー業務を行っているVinita Bansal氏が解説しています。

Want to Communicate Effectively at Work? Eliminate these 5 Cognitive Distortions - TechTello
https://www.techtello.com/avoid-these-cognitive-distortions-to-communicate-effectively/

認知のゆがみとは、極端であったり非合理的であったりする思考パターンを指す言葉で、合理的に考える能力を損なって意思決定やコミュニケーションに悪影響を及ぼします。Bansal氏が仕事に関するコミュニケーションを阻害すると主張する5つの認知のゆがみは以下の通り。

◆1:天の報酬の誤り
人々は自分の勤勉さや努力が評価され、いつか報われる日が来てほしいと願っていますが、必ずしも仕事で努力したからといって報われるわけではありません。外部からの報酬や承認をモチベーションに仕事をしている人は、それが報われなかった時に怒りや失望を強く感じてしまうほか、「努力すればいつか報われる」という信念に従って、自分の身を犠牲にしてまで仕事に打ち込んでしまうこともあります。

たとえば、仕事で任された大きなプロジェクトに家族や余暇を犠牲にして打ち込み、成功目前まで到達したとします。しかし、プロジェクトがあと少しで終わるという段階で社内の再編があり、プロジェクトの優先度が下げられて立ち消えになってしまうこともあり得ます。「自分の努力や犠牲は必ず報われる」と信じている人ほど、この時の怒りや失望は大きなものとなるとBansal氏は指摘。

この認知のゆがみに対処する方法として、Bansal氏は「自分の努力を、達成した具体的な成果で測るべきではありません。そうではなく、自分がどのように学んで成長し、向上したのかという観点で考えてみてください」と述べています。価値の尺度を外部からの報酬や評価ではなく内部にあるものに再定義し、努力や犠牲などの「入力」とその結果である「出力」を切り離すことで、認知のゆがみを正すことができるとのことです。


◆2:知識の呪い
この認知のゆがみは、特定の分野における専門家が「他の人々も自分と同程度の知識を持っているだろう」と見誤ってしまうというものです。他人が持っている知識量や理解度を見誤ると、重要な情報を共有するのを忘れてしまったり、コミュニケーションに食い違いが生じたりします。

たとえば、ベテランエンジニアが同じチームに配属された新人エンジニアを指導する際、うっかりチーム内で共有されている文脈や知識を伝え損ねたり、外部からはわかりにくい仕事の手順をスキップしてしまったりすることがあります。当然、新人エンジニアはベテランの言うことが理解できずに仕事がはかどりませんが、ベテランエンジニアは「なんでこんな簡単なこともできないんだ」と不満を持つ悪循環に陥る可能性があるとのこと。

Bansal氏はこの認知のゆがみを回避する方法として、「5歳の子どもと話しているつもりでコミュニケーションを取る」ことを推奨しています。初心者に対しては複雑な専門用語を用いることなく、基本的な概念や簡単な言葉を使って説明することで、知識の呪いにとらわれるのを避けられるとBansal氏は述べました。


◆3:根本的な帰属の誤り
根本的な帰属の誤りとは、行動に寄与する状況要因をしっかり分析することなく、「この人はそういう人だから」といったイメージや偏見を重視して判断してしまうことを指します。あまりよく知らない人について考える時、どうしても行動の原因をその人の性格や性質に帰してしまいがちですが、実際の人間はさまざまな制約や状況に応じて判断を下しています。この点を認識していなければ、一緒に働く人間に対して誤ったイメージを持ってしまい、コミュニケーションに断絶が生じる可能性があるとのこと。

たとえば、仕事のチームに新人が加わったというシチュエーションを考えてみます。その新人はチームに加わって最初の日であるにもかかわらず、会議中に何度もスマートフォンをチェックしており、集中できていない様子です。上司は「この新人は使えないやつだ」と判断してしまうかもしれませんが、実際には「母親が重病で入院することになり、病院からの連絡を待っていた」という事情があった可能性もあります。

根本的な帰属の誤りが生じる原因は、脳が余分な思考をショートカットしようとするためであり、このショートカットには有益な面もあります。そのため、根本的な帰属の誤りを完全に排除することは難しいものの、短絡的な結論に至る前に「この人はなぜこんな振る舞いをしたのか?」「自分や他人もこうした行動を取る可能性があるだろうか?あるならそれはどんな状況で?」「何らかの要因でこの人がそう振る舞った可能性はあるか?」といった観点から考えることで、影響を軽減することが可能です。


◆4:変化の誤り
この認知のゆがみは、「自分たちの幸せや成功は周囲の人間に左右されるものであり、周囲の人間が変われば幸せや成功が手に入る」と考えてしまうものです。しかし、この思考は幸福が外面的なものではなく内面的であるという点を見落としています。また、この認知のゆがみを持っている人は、実際にはコントロールできない他人の変化を望むため、他者との摩擦が生じたり失望したりする可能性が高まってしまいます。

具体的には、「上司が細かい点まで管理してくるのをやめてくれれば仕事で幸せになれるのに」「同僚が口うるさく意見を言わず、自分が言うことにただ耳を傾けてくれれば仕事が有意義になる」といった思考がこれに当てはまります。

変化の誤りに対処するには、「どうすれば自分の声を聞かせられるのか」という発想から、「どうすれば自分の声に価値が生まれるか」という発想への転換が有効だとのこと。Bansal氏は、アイデアの伝達方法やチームと自分の間にあるギャップについて考えたり、他人としっかり話し合ったりと、自分でコントロールできる行動に焦点を当てることを推奨しました。


◆5:自転車置き場のコンセプト(パーキンソンの凡俗法則)
パーキンソンの凡俗法則とは、「重要な問題は放置されがちな一方、細かくてどうでもいいような事柄に対して不釣り合いなほど時間を費やす」という認知のゆがみです。これは、大きくて複雑な問題に取り組むには多くのタスクや認知リソースが必要となる一方、ささいな問題は少ないリソースで議論できることが原因だとのこと。人々は簡単なタスクを優先的に消化して「たくさん仕事をした」と満足する一方で、本当に重要なタスクは後回しにしがちだとBansal氏は指摘しています。

「自転車置き場のコンセプト」という名称は、ある委員会が「原子力発電所の建設計画」と「自転車置き場の建設」という議題に取り組む場合、多くの人々が複雑で巨大すぎる原子力発電所についての議論は低調なのに対し、小規模で理解しやすい自転車置き場については活発な議論が巻き起こるというたとえ話に基づいたものです。同様の事態はいくつも考えられ、Bansal氏は「ソフトウェア開発において、簡単なタスクにはすぐ手をつけて時間を費やすのに対し、複雑で核心的なタスクは後回しにされがち」という事例を挙げています。

会議においてこの問題を避けるには、すべての議題について明確な目的を設定し、脱線しそうになったら誰かが指摘するという方法が有効です。個人のタスクについてであれば、まずは自分がパーキンソンの凡俗法則にとらわれている可能性を自覚し、簡単なタスクよりも重要なタスクを優先する意識を持つことが重要だとBansal氏は主張しました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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