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ロシアの研究チームが「宇宙広告」を発表、小型の人工衛星で宇宙から地上に広告を表示


ロシアのモスクワにあるスコルコボ研究所モスクワ物理技術研究所(MIPT)による共同研究チームが、太陽光を反射して都市の上空にコマーシャルを表示するために衛星を軌道に打ち上げる「宇宙広告ミッション」を発表しました。これについて提唱した論文では、衛星の燃料消費量、対象となる都市の人口、各地の広告費などの要因を考慮し、暫定的な見積もりとともに「宇宙広告が技術的に可能」だけではなく「経済的に実行可能」である可能性を示しています。

Aerospace | Free Full-Text | Satellite Formation Flying for Space Advertising: From Technically Feasible to Economically Viable | HTML
https://www.mdpi.com/2226-4310/9/8/419/htm

Skoltech | Ad-block this: Space advertisers ready to display commercials in the sky
https://www.skoltech.ru/en/2022/10/ad-block-this-space-advertisers-ready-to-display-commercials-in-the-sky/

Who is ready for a fleet of cubesats flying over cities, displaying ads? | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2022/10/russian-space-scientists-have-the-worst-idea-ever-space-based-advertising/

スコルコボ研究所は2022年10月5日に「これをアドブロックしてみてください。宇宙広告主、空にCMを表示する準備完了」と題したリリースを発表しました。リリースは航空学および宇宙航空学のオープンアクセスジャーナル「Aerospace」に掲載された論文が根拠になっています。論文では、宇宙空間で人工衛星を編隊飛行させ、太陽光を反射させて都市上空にコマーシャルを表示することの技術的実現可能性を評価すると同時に、人工衛星が十分な時間、さまざまな都市の上空をさまざまな編成で飛行し、開発・打ち上げ費用を広告で回収できるかどうかを、経済的な観点で検討しています。研究の筆頭著者であり、スコルコボ研究所の研究インターンであるシャミル・ビクティミロ氏は「私たちは、宇宙広告のより技術的な側面をしばらく研究してきました。今回は経済的な側面に注目し、宇宙広告が経済的に実行可能であることを示しています」と述べています。


研究チームは以前の研究で、CubeSatと呼ばれる小型衛星の編隊を使用した宇宙広告ミッションの概念を提案し、それらをどの軌道に配置するか、空に表示される画像を変更するためにどのように編隊を再構築するのが最善か、といった技術的な内容を検討しました。追加の研究では、研究者たちは適切な機器のサイズを再検討し、人工衛星の燃料消費量を含むミッションの寿命と収益性を評価しています。収益の見積もりは、宇宙広告のコストに加えて、都市の人口および宇宙広告に気づく人々の要因を、天気が曇りになる割合や、人々を外にとどめておく温度や気候から導き出されています。

人工衛星のグループが「人口密度の高い大都市上空を周回し、1分間広告を表示した後、次の都市に移動する」方法を採用すると、1日の「宇宙広告収入」が約200万ドル(約2億9000万円)に達すると研究者たちは計算しています。この場合、1回の打ち上げごとに91.5日稼働すれば、経費を差し引いても1億1160万ドル(約161億円)の純益が得られる試算になるとのこと。以下の画像は世界のデモ価格チャート分布となっており、濃い赤色のドットが表示されている地域は収益性が高いと評価されています。


論文の末尾で研究者たちは、「宇宙広告は非現実的なアイデアに思えるかもしれませんが、商業的にも見込みのある、可能性を秘めていることが判明しました」と結論付けています。また、宇宙広告に対する主な批判意見に対して、「日中にのみ機能するデモンストレーションのため、夜間に光害を発生させません。また、宇宙広告の実現可能性は大都市のみが対象となるため、その点でも宇宙広告による光が有害であるとは見なされません」と主張しています。

一方で、技術系ニュースサイトのArs Technicaは宇宙広告の研究に対し、「宇宙広告のような構想は、対衛星兵器の実験を禁止しようとするアメリカの努力に、非常に現実的な挑戦を突きつけることになります。宇宙広告はスペースデブリの拡散や人工衛星の光害の懸念など、さまざまな問題が考えられますが、おそらく最も重要なことは、宇宙広告は人々が直感的に嫌がるものであるという点です」と述べ、技術的・経済的には実現可能でも実際には実施が難しい旨を主張しています。

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in メモ, Posted by log1e_dh

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