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Instagramで大物ミュージシャンになりきって認証バッジを不正にゲットする大胆な手口とは?


有名人や芸能人のInstagramアカウントについている青色の「認証バッジ」は、単なる本人確認にとどまらず、インスタグラマーたちにとってのステータスシンボルでもあります。そんな認証バッジを取得するため、音楽家でもなんでもないクライアントを一流ミュージシャンに仕立て上げるビジネスがInstagramで横行しているとの問題を、非営利・独立系の報道機関であるProPublicaが暴露しました。

Inside a Million-Dollar Instagram Verification Scheme — ProPublica
https://www.propublica.org/article/instagram-spotify-verified-fake-musicians

ProPublicaは2022年8月31日に、仮想通貨ビジネスの起業家やリアリティ番組の出演者など少なくとも数百人が、2021年以降にInstagramでミュージシャンとして不正に認証バッジを取得していたことが分かったとの記事を公開しました。


ProPublicaが認証バッジ取得ビジネスのクライアントであるとしている人物の1人に、一時は15万人のフォロワーを誇っていた医師のマーティン・ユーゲンバーグ氏がいます。伝えられるところによると、トロントの整形外科医であるユーゲンバーグ氏は、主に女性のお腹を引き締める美容整形やフェイスリフトなどについての画像や映像を投稿するインスタグラマーでしたが、豊胸手術の相談をしたある女性とのやりとりを本人の同意なく公開したことで、2021年に医師免許を6カ月間停止されていました。

そして、そんなユーゲンバーグ氏のもう1つの顔がミュージシャンの「DJ Dr. 6ix」です。


DJ Dr. 6ixことユーゲンバーグ氏は、Spotifyなどの音楽プラットフォームに5曲の楽曲を提供しており、そのうちの1曲は6万回近く再生されたことになっていますが、曲には「gbfred gtfrde」と自動生成された文字列のような奇妙な作曲者名がクレジットされていたとのこと。

また、Spotifyに掲載されているDJ Dr. 6ixの自己紹介の欄には、EDM.com・Billboard・The Sourceで取り上げられたと記載されていましたが、EDM.comやBillboardには該当する記事が存在していませんでした。また、The Sourceにはそれらしい有料記事がありましたが、そこにはDJ Dr. 6ixが「『Umbrella』で最も有名なミュージシャンの1人として確固たる地位を築いた、ロサンゼルスを拠点とするアーティスト」と紹介されていました。前述の通り、ユーゲンバーグ氏はカナダの医師なので、The Sourceの紹介は虚偽ということになります。

ProPublicaはさらなる調査により、DJ Dr. 6ixについて取り上げたThe Sourceの記事と酷似した記事が9件あることを突き止めます。それらの記事は文面がまったく同じで、アーティスト名と曲名が入れ替えられただけだったとのこと。

以下は、DJ Dr. 6ixの代表曲である「Umbrella」です。ProPublicaはSpotifyで配信されていたこれらの曲について、「オーディオサンプルの単調なループか、ひどい場合は長時間無音のトラックでした」と指摘しています。


また、ProPublicaは似たようなプロフィールを持つ別のミュージシャンの楽曲である「Jungle」が「Umbrella」と酷似していることも指摘しました。これらの曲も、作曲者名が「wehkuudhs wehdgjg」「trudbkds prosbhkdfs」というような文字列になっていたとのこと。

「Jungle」は以下から再生できます。


これらの疑惑についてProPublicaから連絡を受けたSpotifyは、DJ Dr. 6ixのプロフィールを削除しました。また、MetaはProPublicaからの調査結果の報告を受けて、300以上のInstagramアカウントから認証バッジを削除しています。


こうした点からProPublicaは、ミュージシャンとしての経歴をでっちあげてSNSの認証バッジを取得する大規模なスキームがあると指摘しています。このビジネスでは、まずクライアント用にSpotifyやApple Musicのアカウントを作成し、そこにアルバムアートと曲をアップロードしてから再生数を稼がせます。そして、その楽曲のヒットを取り上げた記事を乱造して有名ミュージシャンに仕立て上げ、そのプロフィールをInstagramに掲載してからMetaに認証バッジの申請を提出します。

もちろん、Metaも認証バッジを付与する際に審査を行いますが、クライアントは既にGoogleのナレッジパネルにミュージシャンとして掲載される大物アーティストになっているため、難なく審査を突破してしまうというわけです。


ProPublicaによると、このようなミュージシャンとしての経歴のでっちあげを手引きしたのは、マイアミ在住でDJ志望、かつ仮想通貨ビジネスの起業家志望であるDillon Shamoun氏という人物とのこと。Shamoun氏は取材に対し、Instagramにおける認証バッジ取得ビジネスへの関与を否定しましたが、ProPublicaの通報を受けたMetaにより追放処分を受けてしまいました。

Metaの広報担当者は「不正なサービスを販売している詐欺師は、当社を含むオンラインプラットフォームをターゲットに活動を続けており、業界による検知に適応して常に戦術を変化させています。私たちは、ユーザーの皆さんに認証バッジのためにお金を払うようなことをせず、詐欺師への警戒を怠らないよう強く推奨します。また、私たちもこのようなスキームを見つけ次第、対処していきます」とコメントしました。

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in ネットサービス, Posted by log1l_ks

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