太ってしまう意外な原因「塩分」と「水分」について専門家が解説
肥満の原因としてよく言われるのは、糖分や炭水化物、脂肪の摂り過ぎや運動不足です。しかし、太りすぎが増加している意外な原因は、西洋型の食生活に潜む「過剰な塩分」と「水分不足」にあると、肥満の専門家が提唱しました。
Two surprising reasons behind the obesity epidemic: Too much salt, not enough water
https://theconversation.com/two-surprising-reasons-behind-the-obesity-epidemic-too-much-salt-not-enough-water-184128
コロラド大学アンシュッツ・メディカル・キャンパス医学部の教授で、臨床医でもあるリチャード・ジョンソン氏は、20年以上にわたる生活習慣病の研究の中で「肥満と健康にまつわる複雑なパズルには、2つの重要なピースがある」ということに気づいたとのこと。そのピースとは、塩分と水分です。
◆塩分
塩分の過剰摂取が肥満につながるという知見へのヒントは、土中の塩分濃度が高い湿地や砂漠に生息するデブスナネズミの生態にありました。英語でも「Fat sand rat」とストレートな名前が付けられている通り、デブスナネズミは少しずんぐりした見た目ですが、食べ物のほとんどはアッケシソウという植物です。
by orientalizing
アッケシソウは海水に近いほど塩分濃度が高い水分がたっぷり含まれている一方で、栄養価はあまりありません。まだ完全に証明されたわけではありませんが、デブスナネズミが栄養に乏しいアッケシソウばかり食べて生きていけるのは、塩分の多い食事が炭水化物を果糖に変換しやすくしているからである可能性が、最近の研究により分かってきました。
この研究に携わったジョンソン氏によると、果糖には食べ物の摂取を促し、脂肪と炭水化物を貯蔵して動物を飢餓から守る「サバイバルスイッチ」をオンにする働きがあるとのこと。そのため、デブスナネズミに普通のネズミ用のエサと同じ炭水化物が50%のエサを与えると、みるみるうちに肥満症や糖尿病を発症してしまいます。
塩分の過剰摂取が果糖の合成を促し、これが脂肪の蓄積につながることについて、ジョンソン氏は「多くのアメリカ人は知らず知らずのうちに飼育されたデブスナネズミのような行動をとっていることが研究により明らかになってきました。つまり、彼らは常に『サバイバルスイッチ』を入れっぱなしにしているのです」と述べました。
◆水分
さらに、ジョンソン氏が参加した別の研究により、果糖は塩分だけでなく水分不足によっても合成され、これによりますます脂肪の蓄積が促進されることも判明しました。
脂肪にはカロリーの貯蔵庫としての役割があることは有名ですが、実はもう1つあまり知られていない機能があります。それは、水分の供給です。脂肪そのものは水分を含んでいませんが、脂肪が体内で分解される際に大量の水分が発生するとのこと。
脂肪の分解により体内で発生する水分は相当な量で、燃焼した脂肪とほぼ同じ量の水分が出ます。そのため、水を摂取できない時期の水分を体に蓄えた脂肪に頼っている動物もいます。
クジラがその一例で、クジラは海水も飲みますが水分のほとんどをエサから摂取しています。そして、長期にわたって食事ができない時は、代謝した脂肪から水分を補給しています。このことから、水分不足に直面した生き物が体内に脂肪をため込もうとするのは、自然界では理にかなっていることが分かります。
水分不足が肥満の原因だというのはあまりイメージしにくいものですが、ジョンソン氏は「その影響は軽視すべきではありません」と強調しています。なぜなら、塩辛い食べ物を食べると脱水症状になりやすく、塩分の過剰摂取と水分不足のダブルパンチで果糖と脂肪が体内で合成され、これが肥満に直結するからです。
太りやすい食べ物としてフライドポテトがよく挙げられるのも、これが理由です。しかも、フライドポテトは炭水化物が大量に含まれているので、この点も体内で果糖が合成される一因となります。
こうした点から、ジョンソン氏は1日にグラス8杯分程度の水を飲むことを推奨しています。ただし、水を飲み過ぎると水中毒になるリスクがあるため、飲めば飲むほどいいというわけではありません。特に、心臓や腎臓、肝臓に疾患のある人や最近手術を受けた人は水分を摂取しすぎると低ナトリウム血症に陥るリスクが高いため、該当する人はどのくらい水を飲むべきか主治医に相談したほうがいいとのことでした。
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