メモ

海賊版対策メッセージの繰り返しの発信が著作権侵害を助長するかもしれない


経済学者らの研究により、大規模に行われる海賊版(著作権侵害)対策キャンペーンが狙いとは裏腹に、保護されたコンテンツの不正利用を増加させる可能性があることが指摘されています。

Doing more with less: Behavioral insights for anti-piracy messages: The Information Society: Vol 0, No 0
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/01972243.2022.2095683


Anti-piracy messaging may just encourage more piracy • The Register
https://www.theregister.com/2022/08/02/antipiracy_messaging_piracy/

フランスでもトップレベルのビジネススクールであるESSCAで経済学を教えるグロロー・ジル博士とリュック・ムニエ博士は行動経済学のレンズを用いて、海賊版対策で繰り返し使用される要素についての分析を行いました。

著作権侵害は間違いなく経済に影響を与えており、たとえばソフトウェア産業の不正対策に取り組んでいるBSAによると、世界のソフトウェアのうち37%は海賊版であり、国際レコード・ビデオ製作者連盟(IFPI)によれば38%の人が音楽を違法に入手しています。


このため海賊版対策として、「著作権侵害の被害者はこんなにも多い」「著作権侵害行為がこんなにも行われている」「著作権侵害は法的にもこんなにも悪い」といった主張により、行動を思いとどまらせるようなメッセージを繰り返し発信するキャンペーンが行われています。

しかし、こうしたメッセージの繰り返しがよくないというのがジル博士とムニエ博士の主張です。

まず2人が指摘するのは、そもそもコンテンツの著作権者と消費者では同じようには物事を見ていないということです。著作権者は海賊行為を窃盗と考えていますが、消費者は窃盗とは思っておらず「デジタル共有」などの言葉を使っています。さらに、過去の研究から、「困難に苦しむ多数の被害者」よりも「具体的に識別可能な被害者」が存在することが行動や支援の意欲を引き出すことがわかっているのですが、海賊版対策キャンペーンは「同情されるようなストーリーのある被害者」よりも「被害者の数が多い」ということに焦点を当てることが多く、受け手の同情を引くことに失敗していると博士らは指摘しています。

また、博士らはメッセージの中身についても苦言を呈しています。「ある行動とは反対の行動を取るように」と指示しつつも、して欲しくない「ある行動」の内容を具体的に示すと、多くの場合、他者の動きに追従する人々を「ある行動」へと促すだけになります。これは実際に、国立公園で「石を持ち帰らないように」という標識を立てるとき、具体的に「石を持ち帰っている人がいます」と書いてしまうと、明らかに持ち帰る率が上がってしまったという研究があるとのこと。つまり、「海賊版がどれだけ普及してしまっているか」という数字を示すと、「なら自分も」と追従する人が出てしまうというわけです。

博士らは、こうした海賊版対策はあまり推奨できず、代わりに、目的の製品を手に入れるために合法的な手段を選択したユーザーに対して、支援に感謝することが効率的かもしれないと結論づけています。

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in メモ, Posted by logc_nt

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