「太陽フレア」が電車を遅らせる可能性
太陽の活動が地球上の機器に与える影響は大きく、特にインターネットや電話回線などの通信系統で不具合が発生する危険性が度々指摘されています。イギリスの王立天文学会が2022年7月11日~15日に開催した全国天文学会議で、太陽嵐が鉄道網を混乱させて電車を遅らせるおそれがあるとの研究が発表されました。
Solar flares could cause delays on the railways
https://www.ianvisits.co.uk/articles/solar-flares-could-cause-delays-on-the-railways-56083/
ランカスター大学の博士課程に在籍するキャメロン・パターソン氏は、発表の中で「多くの人が『信号障害のために列車が遅れています』とのアナウンスを聞いたことがあるはずです。大抵は天候や線路に積もった落ち葉などが原因だと思われますが、太陽も信号の誤作動を引き起こすということを覚えておいた方がいいかもしれません」と話しました。
パターソン氏によると、鉄道網は「ブロック」と呼ばれる1~2kmの区間に分割されており、各ブロックにはそのブロックに電車の車両があるかどうかを示す信号があるとのこと。この信号は、システム内の電流を検知するリレーによって制御されており、「ブロックの中に車両があって電流が流れていなければ赤」「車両がなく電流が流れていれば青」を表示するようになっています。
ところが、信号を制御する電流が太陽嵐によって乱れると、車両がないブロックでも赤信号になってしまうことがあるとのこと。ランカスター大学の研究チームは、イギリスの鉄道網にある2つの区間における太陽嵐の影響をモデル化する研究により、強い太陽嵐により多くの信号が誤作動し、それにより電車の遅延時間が増加することを確認しました。
太陽嵐は電界強度が2V/kmの中程度のものから4V/kmの強いものまで、さまざまな強度のものが技術的な問題を発生させる危険性があります。過去にはスウェーデンの鉄道で7V/kmを超える値が検出されたことがあるほか、極端に強力な太陽嵐は最大で20V/kmもの強度に達するおそれもあるとのこと。
今回のパターソン氏らの研究により、中程度の太陽嵐でも電車の信号を故障させる可能性があることが示されました。
パターソン氏は今後の研究について「現在、どれほどの強さの太陽嵐が発生すると赤信号が青信号になってしまうのかを調べています。これは、青信号が赤信号になるよりはるかに危険なシナリオです」と述べて、太陽嵐が電車の遅れより深刻な大事故を引き起こす可能性を示唆しました。
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