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カルトかどうか見分けるための10個の基準


宗教・団体・組織が実はカルトなのではないか?という疑いを持った時に使える10項目の「危険性の判断基準」というものがあります。

1「精神の不安定化」
2「法外な金銭的要求」
3「生まれ育った環境からの誘導的断絶」
4「健康な肉体への危害」
5「子供の強制的な入信」
6「大小にかかわらず、社会に敵対する説教」
7「公共の秩序を乱す行い」
8「多くの訴訟問題」
9「通常の経済流通からの逸脱」
10「国家権力への浸透の企て」


まず大前提として、そのカルトっぽいのではないか?と疑っている集団が「宗教であるかどうか」というのは問題ではありません。問題なのは「集団の行為」です。何をしていて、結果的にどのような社会的問題を巻き起こしているのかという点にのみ、注目します。「外形的な行為の弊害」、つまりどのような害を与えているのか、どのような害を成しているのか、その点のみを問題にすることで、信教の自由に触れること無く、カルトの危険性のみを問題にできるわけです。

この10の基準は以下に書いてあるものとなり、かつてフランスで定義されたものです。

ヨーロッパの〈セクト(カルト)宗教〉について
http://www.relnet.co.jp/kokusyu/brief/kkouen1.htm

また、上記の記事ではこの10の基準が成立していった過程として問題となった「政教分離」について、以下のように書かれています。宗教かどうかを問うのでは無く、具体的かつ外形的な害のみを取り上げることで、どの集団が危険なのかを特定していくことを可能にし、結果的に、「具体的な教団名を出す」ことに成功しています。

ヨーロッパ、ことにフランスの場合は「絶対分離主義」といわれるように、政教分離の原則でも、非常にきびしい国の筆頭だとされるわけですね。公的機関が宗教にかかわっていくのは、非常に慎重で非常にむつかしい。ですから「宗教を問うのでない」として、そういう政教分離の原則をうまくかわしていっている。そういうやり方ですよね。その上で、具体的な外的な弊害の問題を数えていくというか、取り上げていくことによって、どの集団が問題集団なのかを特定していく。この辺は断固としています。しかも教団名は実際に名前を出して報告している。


この10項目の基準にもとづいて厳密に適用していった結果、「お金で動いている教団」を追い出すことに成功した、ということで以下のように書かれています。

とにかく宗教を問うのでないということで刑法とかの現行法を厳格に適用することで、セクト集団を排除していくという、こうした強い姿勢が共通して見られるわけだが、これはフランスでの話だが、法を厳密に適用して、いくつかのセクト宗教を追い出したというんですね。現行法を厳密に適応していけば、例えば統一教会の場合でも、追徴金を課すと、お金で動いている教団というのは、逃げ出した、と言っておりました。税法を適応するだけで出ていき、ヨーロッパでの統一教会の活動はいまや下火だと言うのです。


実際にどのような宗教・団体・組織が、「カルトかどうか見分けるための10個の基準」に引っかかったのかは以下で確認できます。

【PDFファイル】フランス公法と反セクト法
http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/hermes/ir/re/8799/hogaku0010303450.pdf

1995年の国民議会調査委員会の報告書には、フランスに於いて活動するセクトとして172の団体名が挙げられているがそのうち有名なものをいくつかあげると、まず、高額な研修費やお布施を要求する事でその経済的な体質が問題になったサイエントロジー教会 (Eglise de Scientologie)、 あるいは統一教会(Moon ou association du Saint-Esprit pour1’Unification mondiale)。同様のものとして、エロヒム星からの使者であると称する教祖を戴き、住居以外の私有財産を寄進させたラエリアン運動 (Mouvement Raelien)。原理的に聖書を信奉し1999年の終末論を喧伝したエホヴァの証人(T6moins de J6hovah)。手かざしで病を治すとして日本人の留学生を中心に大きく成長した崇教真光(Ma・hikari-SOkyo,Mahikari)。あるいは組織的にフランスに進出した創価学会(S6ka-Gakkai intemational)。考古学や南米古代文化のセミナーで人を集め、極右的儀式への参加を強制する新アクロポリス (Nouvelle acropole)。そして、フランス人を最も震え上がらせたのは、1995年の集団目殺事件で16人を焼死せしめた太陽寺院(1’Ordre de Temple solaire)である。この事件は1997年にかけてスイスやカナダでも連鎖的に集団自殺を誘発し、約70人が命を落とした。


そして、この「カルトかどうか見分けるための10個の基準」が設定された経緯も説明されており、1995年の国民議会調査委員会の報告書、いわゆるギュイヤール報告書によって、帰納的方法で識別するための設定基準として以下のように明示されています。

精神的不安定化
法外な金銭要求
元の生活からの意図的な引き離し
身体の完全性への加害
児童の加入強要
何らかの反社会的な言質
公序への侵害
多大な司法的闘争
通常の経済流通経路からの逸脱
公権力への浸透の企て


さらに、このような危険な宗教・団体・組織とはどのようなものか?ということについて「法的形態若しくは目的がなんであれ、その活動に参加する人の精神的又は身体的依存を作り出し、維持し、利用することを目的又は効果とする活動を行うあらゆる法人」と定義しています。

そして、このように危険な宗教・団体・組織を強制的に解散宣告する条件として、上記のように定義される団体かその指導者が「以下に挙げられる違反の一つ又は数個に付き・刑事上の最終的な有罪判決を複数回宣告された場合」としています。

生命侵害
人の身体的・精神的完全性に対する侵害
人を危険に晒させる行為
無知と脆弱な状態に付け込む不法侵害
略取及び監禁
売春斡旋、人間の尊厳に反する労働
死体に対する侵害、差別
人格に対する侵害
未成年者及び家族に対する侵害
盗取
強要
詐欺
背信
財産の法的状況の詐称
不法な医師・歯科医・助産婦専門行為
不法な薬剤処方
虚偽広告
詐欺、食物・医薬品についての虚偽並びに不法売買


つまり、まずはカルトかどうか見分けるための10個の基準にあてはまるかどうかを見ます。次に「法的形態若しくは目的がなんであれ、その活動に参加する人の精神的又は身体的依存を作り出し、維持し、利用することを目的又は効果とする活動を行うあらゆる法人」かどうかを問うことになります。最後は、有罪判決を何度も何度も受けているのであればアウト、ということです。

ここまでいくと単なる宗教・団体・組織という扱いではなくなり、いわば「社会を混乱に陥れる危険集団」ですから、そもそも信教の自由を問題にする必要は無くなります。国家の宗教的中立性を揺らがせること無く、国家の公序と民主主義の敵として取り締まるだけで済む、というわけです。

このような危険集団を国家が警戒すべき理由について、フランス政府におけるセクト対策の中心組織「Miviludes」は2005年度の報告書で以下のように明記しています。

MIVILUDES2005年度報告書 - Wikisource

国家による警戒の必要性

 最初の理由は、セクト的逸脱行為に対する警戒と対策に関して国家が行っている活動を正当化するためである。子供がセクト主義の影響下にある両親の支配下にあるとき、国家でなければ誰が子供を保護できるだろうか。子供が性的虐待を受けたり、虐待されたり、飢えさせられたりしているとき、司法でなければ誰が子供を救うことができるだろうか。また、子供が、知的に、身体的に、あるいは感情的に欠陥のある教育を受けているとき、その子供が自由な市民となりえることをどうして期待できるだろうか。さらに、どうすれば子供の自律性を守ることができるだろうか。その学習能力、そして子供であることの喜びを守ることができるだろうか。


 明らかに、子供はセクトの指導者たちの関心の中心にある。子供はセクト集団の未来であり、その発展を潜在的に支えるものだ。子供は影響されやすく、無防備であるがゆえに、型にはめ込むことが可能だと考えられている。容易く子供を搾取することも可能だろう。「君たちを幸福な奴隷にしてあげよう」とロン・ハバードは述べている。


なぜ10個の基準の最後に「国家権力への浸透の企て」というのがあるのかという理由がまさにこれです。このことはよりはっきりと、以下の「政府による行動(対策)の主義原則基本」にも書かれています。

首相セクト的逸脱行為対策に関する2005年5月27日の通達 - Wikisource

I. 政府による行動(対策)の主義原則基本

政府の行動は、信徒(会員)に対して肉体的・精神的な束縛を行っている特定のグループの悪しき行為との戦いと、自由の尊重及び政教分離の原則とを、うまく両立させようという配慮に基づいている。国家権力が特定の団体をセクト指定し、そのことだけを根拠として行動するという方法は、前出の両立を保障することも出来ないし、実行する政策が法的に根拠のあるものだということを保障することも出来ないということが、実際の経験として示されているのである。 特定の団体を指さすということではなく、刑事罰の対象となりうる行為もしくは法令に反すると考えられる行為を見極めたり抑止したりすることができるよう、個人の自由に対して危険な影響を及ぼしていると思われる組織に対する監視を行っていくことが決められたのである。 こうした司法的保障についての配慮は、政府の行動を弱いものにするのではなく、むしろその効力を一層保障するものである。 しかしながら、こうした行動が最大限に効果的なものにはなるためには、公務員たちが識見を持って、以下のようなしっかりとした活動を現場で実践しなければならない。

・職場において、セクト的と疑われるあらゆる形態の動きを探したり見極めたりするように努める。セクト団体はその会員たちを、隷属的状態や被支配的状態に置き、依存的状態につけこむからである。
・こうした動きは、非難されるべき行為を警戒しながら見守らなければならない。こうした動きがあった時は、直ちに抑止的措置を実行しなくてはならない。


また、以下のようにして、インターネットにおける活動についても警戒するように促しています。

実際のところ、インターネットによる伝播を利用した、小規模且つ分散的・流動的で識別が容易でない団体が形成されていることを、我々は確認している。 こうした警戒は、全体主義的な概念のもとに形成され、秘密的活動を行い、取り返しのつかない事態を引き起こし得る特定の団体に対し、特に重要となっている。


最後に、イギリスの政治家、エドマンド・バークはこう言いました

「邪悪な勢力が勝利を収めるためには、何も行動を起こさない善良な人々がそれなりにいるだけでよい」

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in メモ,   セキュリティ,   ピックアップ,   コラム, Posted by darkhorse

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