サイエンス

「プラズマ衝撃波」で獲物を無力化するテッポウエビは自身をどうやって保護しているのか?

by budak

エビの仲間であるテッポウエビは、ハサミを勢いよくかち合てプラズマ衝撃波を放つことが可能で、衝撃波で獲物を無力化して捕食しています。そんな超強力な衝撃波からテッポウエビが自身を防御しているメカニズムが新たな研究によって明らかになりました。

Snapping shrimp have helmets that protect their brains by dampening shock waves: Current Biology
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(22)01004-1

Snapping shrimp orbital hood protects against shockwave blasts
https://phys.org/news/2022-07-snapping-shrimp-orbital-hood-shockwave.html

テッポウエビはハサミを勢いよくかち合わせることで「パチンッ」という音を伴う衝撃波を放つことが可能。この衝撃波は、獲物の行動を停止させたり、死に至らしめたりするほど強力であることが知られています。実際にテッポウエビが衝撃波を放つ瞬間は、以下のムービーの3分23秒頃から確認できます。

4000℃を超える衝撃波を放つエビにエサを与えると… - YouTube


上記のように、テッポウエビが放つ衝撃波は非常に強力です。しかし、テッポウエビが放った衝撃波が仲間のテッポウエビに影響を与えたり、衝撃波を放った個体自身に影響を与えている様子は観察されておらず、テッポウエビは何らかの方法で衝撃波の影響を抑えていると考えられていました。サウスカロライナ大学の研究チームは、テッポウエビの衝撃波回避メカニズムを明らかにするべく、60匹のテッポウエビを対象に実験を行いました。

テッポウエビの目の周りには、目を覆うようなヘルメット状の器官が存在しています。研究チームはテッポウエビからヘルメット状の器官を切り取り、行動の変化を観察しました。その結果、エサを捕食する際以外の普段の行動には変化がなかったものの、エサを捕食するために衝撃波を放った際に「グルグル回転する」「動かなくなる」といった特殊な反応が観察されました。加えて、衝撃波を放った後は巣穴に戻る際にフラフラと道に迷うような動きを見せたとのこと。


さらに、ヘルメット状の器官を詳しく分析したところ、器官の内側は外側と比べて水圧が高くなっていることが判明。さらに、ヘルメット状の器官には微小な穴が空いており、衝撃を受けた際に穴から水を排出して衝撃を受け流していることが判明しました。これらの結果から、研究チームは「テッポウエビは目を覆うヘルメット状の器官で衝撃波を受け流している」と結論付けています。

研究チームは今回の研究結果について「衝撃波から頭や目を保護する生物学的装甲システムを発見した最初の研究」と位置付けています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1o_hf

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