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Microsoftが発見したパンデミック後の働き方の「新たな指標」とは?


パンデミックを契機に多くの企業がリモートワークや職場と自宅のハイブリッドで仕事をするようになっており、Microsoftは「新型コロナウイルスは働き方や学び方を永久に変えてしまった」としています。Microsoftは2022年6月24日に発表した新たなレポートの中で、パンデミック後における職場の運営の成功を測定する新しい指標として「employee thriving(従業員スライヴィング)」を提唱しました。

Why Microsoft Measures Employee Thriving, Not Engagement
https://hbr.org/2022/06/why-microsoft-measures-employee-thriving-not-engagement

Microsoftはこれまで、「Employee Engagement(従業員エンゲージメント)」という指標を重視してきたとのこと。「婚約」や「歯車のかみ合い」という意味を持つエンゲージメントという言葉が使われている通り、従業員エンゲージメントとは従業員が会社に対してどのくらい強い愛着や結びつきを感じているかを表しており、従業員のモチベーションや生産性を推し量る上で欠かせない概念だとされています。


しかし、毎年数カ月かけて従業員エンゲージメントの調査を実施してきたMicrosoftの人材分析チームは、従業員エンゲージメントのスコアが良好でも、アンケートの回答をよく分析してみると従業員が苦悩していることが明らかになるなど、従業員エンゲージメントの測定結果と実情との間に隔たりがあることに気がつきました。

そこでMicrosoftのDawn Klinghoffer氏とElizabeth McCune氏らは、従業員エンゲージメント測定サービスを手がけるGlintと協力し、調査スパンを1年から半年に短縮して的を絞った短い従業員アンケートを実施しました。その結果、Klinghoffer氏らは従業員の声をより身近に感じ、明確で迅速な対応ができるようになったとのこと。

また、ミシガン大学ロススクールオブビジネスのGretchen Spreitzer氏らが行った「仕事による繁栄(THRIVING AT WORK)」に関する研究などからも着想を得て、Klinghoffer氏らは最終的に「従業員の繁栄」を意味する「従業員スライヴィング(employee thriving)」という新しい指標にたどり着きました。

Klinghoffer氏らは従業員スライヴィングを「有意義な仕事をするために活力を与えられ、力を発揮できること」と定義しており、また「全ての従業員が目的意識を追求していることを実感できるように、日々自分自身を追い込むためのもの」と位置づけています。


従業員スライヴィングは、新型コロナウイルス感染症による労働環境の変化を契機に作られたものですが、パンデミックの影響からの回復や、パンデミック以前のセンチメントスコアとの比較だけを意味するものではなく、総体的によりよい結果を出すことを目指したものだとのことです。

Klinghoffer氏らが実際に従業員スライヴィングの調査を実施したところ、Microsoftの従業員らは同社における「繁栄(スライヴィング)」の度合いを100点満点中77点だと評価しているとの結果が出ました。この結果についてKlinghoffer氏らは、「力強いと言える数値ですが、まだまだ努力が必要なことを意味する値でもあります」と述べています。また、「スライヴィング」の度合いを3つの要素に分解すると、「やる気(73点)」に比べて「仕事の有意義さ(79点)」と「活力(79点)」の方が高いことも分かりました。


さらに、この結果の理由を掘り下げるために自由形式のアンケートを実施したところ、3つのテーマが浮かび上がってきました。

◆1:企業文化は重要
アンケートによると、「スライヴィング」している従業員もしていない従業員も、どちらも文化について言及していましたが、その内容は大きく異なっていました。まず「スライヴィング」している従業員は、同僚との協力的な環境やチームワーク、自律性と柔軟性を備えたインクルーシブな文化、手厚い福利厚生などに言及していました。具体的には、難しい話題について率直かつ偏見のない会話が可能なことや、解決策を見いだすことを重視していることなどが評価されていました。

一方、「スライヴィング」していない従業員は、縦割り組織や官僚主義、コラボレーションの欠如を経験していると回答しています。これらの意見からは、主体性の欠如や機械の歯車であるという感覚がにじみ出ており、「有意義な仕事をするためにやる気と活力を与えられている」という従業員スライヴィングの理念とは正反対な状況が浮き彫りになっていました。


◆2:マネージャーが重要
Microsoftの従業員は、パンデミックの最中にマネージャーが果たした役割を高く評価していました。アンケートの中での「私のマネージャーは私を尊厳と敬意を持って接してくれます」の項目はほぼ全ての社員が「そう思う」と回答しており、点数にすると93点でした。また、「マネージャーの有効性(87点)」や「マネージャーのキャリア支援(85点)」などの項目も高得点で、このことはマネージャーが会社の成功に貢献しているという強い思いの表れだと、Klinghoffer氏らは指摘しています。

◆3:スライヴィングとワークライフバランスは別物
Klinghoffer氏らは、「従業員スライヴィング」と「ワークライフバランス」を混同しないことが重要だと強調しています。前者は従業員の仕事に関するものなのに対して、後者は従業員の私生活も含めているからです。例えば、役不足だと不満を持っているキャリアが浅い従業員は、勤務時間や仕事量という観点からワークライフバランスは良好でも仕事にやりがいを感じていないかもしれないし、大きなプロジェクトを抱えている人は短期的なワークライフバランスを犠牲に職場で充実感を得ている可能性もあると、Klinghoffer氏らは指摘しています。

Klinghoffer氏らが実際に、「スライヴィング」と「ワークライフバランス」の両方が良好な56%の従業員と、「スライヴィング」はしているが「ワークライフバランス」のスコアはよくなかった16%の従業員を比較した結果、両方のスコアがよかった従業員はそうでない従業員に比べて以下のような特徴があることが分かりました。
・労働時間が短い。
・コラボレーション時間が短い。
・集中時間が長い。
・社内ネットワークの規模が小さい。

この結果からKlinghoffer氏らは「コラボレーションの増加は従業員のワークライフバランスに対する認識にマイナスの影響を与えることが分かりました。コラボレーションは本質的には悪いことではありませんが、強烈すぎるコラボレーションがワークライフバランスにどのような影響を与えるかに留意することは重要であり、マネージャーも部下もそのような状況が24時間365日続くようなことにならないよう気をつけなければなりません」と述べました。


また、Klinghoffer氏らは今回の調査から得られた知見について「これは、私たちの組織における『従業員スライヴィング』について理解するための旅の始まりに過ぎないことを私たちは知っています。例えば、『スライヴィング』していない回答した人に最も多かったのは、『疎外感を感じる』ということでした。そこで、私たちはすべてのチームでインクルージョンが企業文化の一部であると感じられるようにすることに力を入れていきます」と述べました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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