現役の火星探査機マーズ・エクスプレスが19年ぶりにソフトウェアアップデートを実施
ヨーロッパの宇宙開発組織である欧州宇宙機関(ESA)初の火星探査機であるマーズ・エクスプレスは、2003年の打ち上げ以来19年以上にわたり運用されてきた現役の探査機です。このマーズ・エクスプレスに搭載されている火星の地下および電離はく離層を探査するための高度レーダーであるMARSISが、19年ぶりにソフトウェアアップデートを実施しました。
ESA - Software upgrade for 19-year-old martian water-spotter
https://www.esa.int/Enabling_Support/Operations/Software_upgrade_for_19-year-old_martian_water-spotter
The Mars Express spacecraft is finally getting a Windows 98 upgrade - The Verge
https://www.theverge.com/2022/6/24/23181715/mars-express-marsis-windows-98-upgrade-esa
マーズ・エクスプレスに搭載されているMARSISは、火星の地表で跳ね返る低周波の電波を使用して、地中に水が存在しないかどうかを調査してきたレーダーです。MARSISは130フィート(約39.6メートル)のアンテナを搭載しており、火星の地下約3マイル(約4.8km)を探査することができます。
MARSISは2018年に火星の地下で「液体の水でできた湖」の痕跡を発見したことでも有名です。ただし、この「液体の水でできた湖」は最終的に粘土だったことが判明しています。
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そんなMARSISのソフトウェアアップデートをESAが発表しました。ESAはアップデートについて、「アップデートによりMARSISは火星とその第1衛星であるフォボスの地下をより詳細に観測可能となります」「信号の受信とオンボードデータ処理が強化され、地球に送り返されるデータの品質が向上します」と説明しました。
MARSISのソフトウェアアップデートをサポートしているEnginiumのソフトウェアエンジニアであるカルロ・ネンナ氏は、「MARSISのパフォーマンスを向上させるため、我々は多くの課題に直面しました」「特に大きな課題となったのが、MARSISのソフトウェア開発環境がWindows 98をベースに20年以上前に設計されたものであるという点です」と語っています。
実際にMARSISを運用しているESAおよびイタリア国立天体物理学研究所(INAF)のオペレーターは、「MARSISに大量の高解像度データを保存する」という手法に依存してきましたが、これだと内蔵メモリがすぐにいっぱいになってしまうという問題が生じるそうです。しかし、今回のソフトウェアアップデートにより「不要なデータを破棄できるようになり、MARSISの稼働時間が5倍となり、はるかに広い領域を探査可能となります」とINAFのMARSIS運用マネージャーであるアンドレア・チケッティ氏は説明しています。
チケッティ氏は「新しいソフトウェアは火星を高解像度でより迅速かつ広範囲に調査することを可能とし、火星における『新しい水源が存在するかどうか』の調査に役立ちます。そのため、今回のアップデートはマーズ・エクスプレスの打ち上げから約20年後に新しい探査機器を搭載するようなものです」と、MARSISのアップデートに抱く期待を語っています。
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