イーロン・マスクのガイド付きでSpaceXのロケット発射台を登るムービー
宇宙関連の情報を発信するYouTubeチャンネルのEveryday Astronautが、SpaceXの創設者であるイーロン・マスク氏と共に、同社の完全再使用型超大型ロケット・Starship用のロケット発射台を登るムービーを公開しました。
Go up SpaceX's Starship-catching robotic launch tower with Elon Musk! - YouTube
Everyday Astronautのレポーターであるティム・ドット氏がやってきたのは、アメリカ・テキサス州ブラウンズビルの東約32kmの位置にあるSpaceXのロケット製造および発射施設である「SpaceX Starbase」です。
マスク氏に連れられてやってきたのは……
「Stage Zero」と呼ばれる、「ロケットの発射」および「ロケットの着地時」に使用される、巨大なロボットアーム付きの発射棟。Stage Zeroに備え付けられた2本のアームは発射時のロケットを保持したり、ロケットが地上に着陸する際にキャッチしたりするために利用されます。マスク氏はStage Zeroを見上げながら、「これに興奮しないようにするのはかなり難しいですね。う~んこれはなんてクレイジーなんだ!」と興奮気味に語りました。
なお、このStage Zeroについてマスク氏は過去に「ロケットの発射および捕獲に必要なすべてであるStage Zeroは、少なくともロケットのブースターや宇宙船を開発するのと同じくらい難しいです」とツイートしています。
Stage Zero, which is everything needed to launch & catch the rocket, is at least as hard as the booster or ship
— Elon Musk (@elonmusk) July 31, 2021
アームが保持するブースターが以下の銀色の円筒状の物体。このブースターは直径9メートルほどあり、重量は約250トンあるそうです。
ブースター上部の赤枠部分には、全体を吊り下げるための金具がある模様。
圧倒的な存在感を示すStage Zero。記事作成時点ではロボットアームでロケットをキャッチする確率は不明で、SpaceXのエンジニアも「0より上」とだけコメントしています。ただし、理論的にはロケットが地上へ帰ってきた際に、速度を落としながらアームの間に入り、アームを閉じてロケットをキャッチすることができるはずだそうです。
実際にどんな風にStage Zeroのロボットアームがロケットを保持するのかは、以下の写真を見ればわかります。再利用可能ロケット・Starshipの1段目ブースターであるSuper Heavy(黒)の先端部分にある凹凸にアームを引っかけるようにして保持する模様。
by Hotel Marmot
続いてStage Zeroの中へと入っていく一行。
エレベーターに乗り込み……
ひたすら上えと登っていきます。
エレベーターで行ける最上部に到達。
そこには絶景が広がっていました。
SpaceXのエンジニアによると、「Stage Zeroの高さが143メートルなので、おそらく地上から138メートルほどの高さ」と説明してくれます。一方、マスク氏は「ここから滑り降りるジップラインを売りものにできるかもね」と、ビジネスマンらしい一言を放ちます。
興奮気味にStage Zeroからの風景を写真に収めるマスク氏。
地上からの映像ではStage ZeroとStarshipの1段目ブースター(黒)と2段目ブースター(銀)のサイズ感はそれほど変わらなく見えましたが、Stage Zero上から眺めるアングルだと発射棟がかなり高いことがわかります。
真下をのぞき込んでも底が見えません。
マスク氏は「人間を複数の惑星にまたがって活動可能な存在にするためのカギは、明らかに再利用可能ロケットです。航空機のように、完全かつ迅速にロケットを再利用できるようにすることが重要です。しかし、完全な再利用性を実現することは非常に困難です。地球の重力場の強さと大気の密度がロケットの再利用性の障害となっています。しかし、火星などの別の惑星ではこの障害が軽くなります」と語り、最も環境的な条件が困難である地球で再利用可能ロケットを実現することで、人類は複数の惑星にまたがり生息する存在により近づくことができると主張しています。
人類が複数の惑星にまたがって活動できるようにする必要性について、マスク氏は「シューメーカー・レヴィ第9彗星が木星に衝突した際」を例として挙げています。シューメーカー・レヴィ第9彗星は木星に地球と同じくらいのサイズの穴を開けたことを挙げ、「これと同じようなことが地球で起きれば、現状のままでは人類は『ゲームオーバー』となってしまいます」とマスク氏。こういった人類滅亡の危機は「常にある」とマスク氏は語り、これに備えて複数の惑星で生息できるように人類が文明を進化させる必要があるとしています。
なお、Everyday AstronautはSpaceX Starbaseを取材した際の様子を別のムービーでも公開する予定で、そちらの動画ではRaptor 2やMerlinといったSpaceXが開発中のロケットエンジンについて触れる内容となっているそうです。
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