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VALORANTの開発元がゲームからチーターを排除するためにとってきた数々の奇抜な対策とは?

by Christchurch City Libraries

オンラインゲームでは、不正な方法やツールを使って良い成績や貴重なアイテムを手に入れたり、他のプレイヤーに嫌がらせをしたりするような「チーター」が幅を利かせていることがあります。オンラインゲームを運営する企業は他の一般的なプレイヤーの意欲をそいでしまうチーターを撲滅すべく、あの手この手を展開しています。2022年3月20日から25日にかけて開催されたゲーム開発者向けイベント「GDC 2022」で、Riot Gamesの元社員でゲームの不正対策を行う企業・Byfron Technorogiesの共同設立者であるクリント・セレデイ氏とネマンジャ・ムラスマジク氏が行った講演を、IT系ニュースサイトのArs Technicaがまとめています。

Stop treating cheaters in online games as “the enemy” | Ars Technica
https://arstechnica.com/gaming/2022/03/why-do-people-cheat-in-online-games-and-what-can-we-do-about-it/

チーターが存在する理由をたどっていくと、その先にあるのは詰まるところお金だ、とセレデイ氏。チーターが使う不正なツールを開発して販売したり、クラックしたアカウントを転売したりするような、チートをお金もうけの道具とする人々がチーターを助長しているとセレディ氏は指摘。こういった人々はゲームを単なる金もうけの道具としか見ていないので、改心させるのは難しいとのこと。


一方で、セレデイ氏は「多くの場合、チート行為はゲームに対する愛情から生まれるものであり、そういう場合はチーターを追放するよりもチーターを改心させたり思いとどまらせたりする方が効果的です」と主張しています。

金もうけの目的でチートツールを開発するごく一部の不正行為を行う人々への対策の1つが、チートツールの動作を検知する「アンチチートツール」です。例えばRiot Gamesの対戦シューティングゲーム「VALORANT」に搭載されているアンチチートツールの「Vanguard」は、カーネルレベルで動作するアンチチートツールで、常駐しながらPC上を監視し、チートツールの動作を確認するとゲームの起動を停止します。


Vanguardのようなアンチチートツールはゲームからチートを完全に払しょくすることはできませんが、アンチチートツールによってチートツールの開発に時間と費用がかかります。チートツールの開発者は、訴訟を起こされるリスクを抱えながら高いコストをかけてVanguardを出し抜くようなチートツールを開発するよりも、より脆弱(ぜいじゃく)なチートツールを開発することに注力するため、アンチチートツールにも一定の抑止力が期待できます。

しかし、アンチチートツールを強固なものとすることにはリスクが伴います。Vanguardのようにシステム上に常駐してカーネルレベルで動作するアンチチートツールは、ユーザーからは「アンチチートツールに特権を渡したくない」「常駐しているのは気味が悪い」「カーネルレベルでコンピューターにアクセスできるほど信頼できない」「ゲームのパフォーマンスに大きな悪影響を与える」として忌避される傾向にあります。


「金もうけの目的」の他に存在するのが、「圧倒的な力が目的」のプレイヤー。他のプレイヤーをチート行為でぼこぼこにやっつけることで、いわゆる「俺TUEEE」な気分を味わいたいというプレイヤーです。こういう人たちは自分たちが試合に勝ちまくると大声で自慢する可能性が高いため、ゲーム内でのチートツールのまん延を招きやすい存在です。また、チートプレイヤーと対峙してゲームから去ってしまうプレイヤーもいれば、そのまま残って戦い続けるプレイヤーもいますが、ゲームに残って戦い続けるプレイヤーはチートプレイヤーに対抗するため、自らもチートツールを使うようになってしまうケースがよくあるそうです。

俺TUEEEがしたいチートプレイヤーは通報されればすぐに運営からBANされてしまいますが、すぐに新しいアカウントを作ってゲームに復帰します。対策の具体例としては、基本プレイ無料のゲームであっても、新規アカウントの作成に携帯電話番号の登録を求めたり、連続でアカウントを作成できないように時間制限を設けたりといったものがあります。

また、Riot Gamesは非常にユニークな方法で、チートプレイヤーに改心をうながしたことがあります。人気MOBAゲーム「League of Legends(LoL)」で俺TUEEE目的でチート行為に手を染めるプレイヤーに対応するため、Riot Gamesは「LoL10周年記念イベントでRiot Gamesのスタッフと1対1で遊ぼう」というライブ配信企画を立ち上げ、チートプレイヤーを招待しました。

ただし、チートプレイヤーには知らされていませんでしたが、プレイヤーだけではなくスタッフもチートツールを使える状態でした。つまり、チートプレイヤーはいつも自分が他のプレイヤーにやっていることを、今度はスタッフにされる立場となり、ボコボコにやられてしまったというわけです。

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さらにRiot Gamesのスタッフは、このライブ配信を放送している2時間の間、手書きの謝罪文をスタッフに提出すれば、アカウントのBANを1回限り解除するという企画も開催。すると、何十通もの謝罪文が届いたとのこと。もちろん全員が心から謝罪していたわけではなく、そのうちの80%は数カ月後に再びBANになってしまったそうですが、残りの20%はチート行為対策やゲームの内容についてのアドバイスをするなど、Riot Gamesスタッフと良好な関係を築くことができたそうです。

そして、チートプレイヤーの中で最も多いのが「コンテンツのためにチートツールを使う」というプレイヤーで、これはお金を使ったり時間を使ったりせずにゲーム内の実績を解除するため、チートツールで手っ取り早くクリアしようとする人です。セレデイ氏によれば、コンテンツ主導のプレイヤーは比較的簡単に改心するとのこと。

コンテンツ狙いのプレイヤーはとにかくお気に入りのゲームにアクセスし続けたがるケースが多いので、アカウントを一時的に停止すると98%の割合で改心するとのこと。また、「違反を重ねるとアカウントの停止期間が延長される」ことを通知すると、さらに改心率は上がるそうです。そもそもこうしたコンテンツ狙いのチート行為を防ぐためには、ゲームの自動化を難しくしたり、コンテンツの入手難度を下げたりすることが効果的だとセレデイ氏らは述べています。


セレデイ氏とムラスマジク氏は、「チーターは単なる敵ではありません。ゲームにとって最高のプレイヤー、顧客、コレクター、コンテンツクリエイターとなる場合が多くあります」と主張しています。両氏は、チート行為を防ぐためならば、そもそもチート行為の動機が何であるかを考えることが有用だと述べ、ルールを細かく決めて違反には厳しい罰則を与えるゼロ・トレランス方式の運営や画一的なポリシーでチーターを取り締まることはゲームのコミュニティを攻撃することと同じだと論じました。

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in ゲーム, Posted by log1i_yk

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