「塩味を1.5倍に増強する箸型デバイス」の開発にキリンと明治大学が成功
キリンホールディングスと明治大学の共同研究チームが「電気刺激によって塩味を1.5倍に増強する箸型デバイス」を開発しました。食塩摂取量の削減による生活習慣病リスクの低減に役立つことが期待されています。
世界初!電気刺激の活用で塩味が約1.5倍に増強される効果を確認 | 2022年 | キリンホールディングス
https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2022/0411_01.html
~減塩食をよりおいしく、「健康」課題の解決に向けた大きな一歩~ 世界初※1!電気刺激の活用で 塩味が約1.5倍に増強される効果を確認 —「味を調整できる食器」の開発につながる新技術— | 明治大学
https://www.meiji.ac.jp/koho/press/6t5h7p00003fh8kv.html
世界保健機関(WHO)は健康的な生活のために1日の食塩摂取量を5g以内に抑えるよう推奨しています。しかし、2019年に厚生労働省が発表した(PDFファイル)国民健康・栄養調査結果では1日の平均食塩摂取量が男性10.9g、女性9.3gと報告されており、日本人が食塩を摂取しすぎている現状が浮き彫りとなっています。一方で、食塩使用量を抑えた減塩食は「味が薄い」という声が多く、減塩食を続ける上での阻害要因になっていました。
研究チームは微弱な電気によって塩化ナトリウム(塩味)やグルタミン酸ナトリウム(うま味)といったイオンの働きを調整することで疑似的に食べ物の味の濃さを調節する技術「電気味覚」の研究を2019年から進めていました。この研究の結果、塩味をコントロールして減塩食の味わいを増強する電気刺激波形の開発に成功。さらに、塩味を増強する電気刺激波形を組み込んだ箸型デバイスも開発したとのこと。
40歳~65歳の男女36名を対象に一般食品を模したサンプル(食塩を0.80%含有するゲル)と減塩食を模したサンプル(食塩を0.56%含有するゲル)を試食してもらう実験を行ったところ、箸型デバイスの塩味を増強する電気刺激をオンにした状態では、オフの状態と比べて塩味を1.5濃く感じるという結果が得られました。
今回の発表の中で、研究チームは「本共同研究成果を活用し、おいしさによる精神的な満足感と栄養面から導かれる健康の両方を、減塩の食生活を送る方々に提供することを目指します」と述べています。
なお、今回の箸型デバイスの開発に携わった明治大学の宮下芳明研究室は「味見できるディスプレイ」や「リアルタイム塩味通信システム」といった味覚に関するさまざまな新技術を開発しています。
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