「心臓発作を経験した人はパーキンソン病になるリスクが低い」との研究結果
パーキンソン病は手の震えや動作の緩慢などの運動障害を示す神経変性疾患であり、症状が進むと自力歩行も困難になってしまいます。そんなパーキンソン病について、デンマーク・オーフス大学病院の研究チームが行った調査から、「心臓発作を経験した人はパーキンソン病になるリスクが低い」という関連性が発見されました。
Risk of Parkinson Disease and Secondary Parkinsonism in Myocardial Infarction Survivors | Journal of the American Heart Association
https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/JAHA.121.022768
Heart attack survivors may be less likely to develop Parkinson’s disease Journal of the American Heart Association Report | American Heart Association
https://newsroom.heart.org/news/heart-attack-survivors-may-be-less-likely-to-develop-parkinsons-disease
Study of Over 1 Million People Reveals Heart Attacks Can Reduce Parkinson's Risk
https://www.sciencealert.com/having-a-heart-attack-somehow-lowers-the-risk-of-developing-parkinson-s
日常動作や歩行に問題が生じるパーキンソン病は、行動の変化やうつ病、記憶障害などにも関連しており、記事作成時点では厚生労働省の指定難病にもなっています。これまでの研究では、心臓発作を経験した人において虚血性脳卒中や血管性認知症などのリスクが高まることが知られていましたが、心臓発作の症歴とパーキンソン病のリスクの関連性についてはよくわかっていなかったとのこと。
そこで研究チームはデンマーク国民保健サービスの記録から、1995年~2016年の間に初めて心臓発作を経験した約18万2000人の患者と、年齢や性別などの点で比較対象になり得る90万9000人を対照群として比較し、パーキンソン病や似た症状を指すパーキンソニズム(二次性パーキンソニズム)のリスクを分析しました。
心臓発作が起きてから最大21年間にわたるフォローアップ調査の結果、心臓発作を経験した人がパーキンソン病を発症するリスクは、心臓発作を経験していない人よりも20%低いことが判明。また、二次性パーキンソニズムにおいても、心臓発作経験者のリスクが28%低いことがわかりました。
論文の筆頭著者であるJens Sundbøll博士は、「パーキンソン病のリスクは、一般集団と比較して心臓発作の患者で減少しているようです」「以前には心臓発作の後に虚血性脳卒中や血管性認知症などの神経血管合併症のリスクが著しく増加したことが判明していたので、パーキンソン病のリスクが低いという発見はやや驚きでした」と述べています。
今回の研究は、心臓発作の生存者におけるパーキンソン病リスクを見る最初のものであり、心臓発作の経験者でリスクが下がる理由についての説明はこれからの研究課題です。しかし、心臓発作とパーキンソン病ではそれぞれの発症因子が複雑に絡み合っており、その中のいずれかがパーキンソン病のリスク低下につながっている可能性があるとのこと。
心臓発作とパーキンソン病で共通する因子としては「高齢の男性であること」が挙げられるほか、共通してリスクを低下させる因子には「たくさんコーヒーを飲む」「体をよく動かす」などがあります。一方、心臓発作のリスクを増加させる「喫煙」「高コレステロール」「高血圧」「2型糖尿病」といった因子は、パーキンソン病のリスク低下につながることが知られているそうです。
そのため、心臓発作の患者における喫煙習慣や高コレステロールなどの因子が、パーキンソン病のリスク低下と関連している可能性があるとのこと。なお、Sundbøll氏は確かに喫煙がパーキンソン病のリスクを減らすことを認めたものの、「喫煙はがん・心血管疾患・肺疾患など最も一般的な病気のリスクを高めるため、健康には絶対によくありません」と指摘しています。
Sundbøll氏は、「心臓発作を経験した患者では一般集団と比較してパーキンソン病のリスクが減少しているように見えるため、患者を治療する医師が虚血性脳卒中や血管性認知症、新たな心臓発作、心不全などの心血管疾患を予防するため、心臓リハビリテーションに重点を置くべきことを今回の研究結果は示しています」と述べました。
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